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金貨1枚で変わる冒険者生活  作者: 天野ハザマ


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それって僕にも真似できるかな

「それって僕にも真似できるかな……」

「こら、ダメよ。今のイストファがやっても失敗の可能性の方が高いんだから」


 真面目に考える様子をみせるイストファを、ステラは軽く怒るような様子を見せながら引き寄せる。

 引き寄せたイストファの頭にアゴをのせ、「ふうー」と息を吐く。


「いい? 罠を甘く見て失敗する冒険者は多いのよ。他の罠もそうだけど確実に殺しにくるのもあるし、その階層のモンスター全部を相手にしてでも勝てるくらいの自信が必要よ?」

「う……」


 3階層で数の多さに苦労したのを思い出し、イストファは小さく声をあげて……ステラは「あら、心当たりあるみたいね」と笑う。


「はい。かなりの数に囲まれた事があるので……」

「うんうん。アラームってのは意図的にそういう状況を作り出されてしまう罠よ。恐ろしさが分かった?」

「はい」

「気にせず開けてる奴に言われてもな……」

「こら、カイル」


 呟くカイルをドーマが抓って、カイルが「ぐあっ」と唸る。相当痛かったらしく仕返しとばかりにドーマを小突くが、全く効いた様子はない。


「さて、と。ここで立ち話していてもいいけど……とりあえず何か食べましょ?」

「あ、はい」

「それもそうだな」


 ステラの提案にイストファ達も周囲に視線を向ける。

 夜でも……というよりも、夜もダンジョン入り口周辺の露店は盛況だ。

 昼とは違う店が大半だが、この時間の冒険者はアイテムよりも飲食の需要が高いので、そちらの店の方が多い。

 肉を刺して焼いた串、野菜を炒めたもの、あるいは新鮮な果物など……ダンジョン内での保存食に飽きた冒険者向けのものが多い。

 当然良い香りが周辺に漂い、誰のものかは追及しないがイストファ達のお腹からもキュウ、という音が鳴る。


「やっぱし肉か……?」

「あっちの野菜のスープも美味しそうですけど」

「じゃあ私とイストファは、あっちの鶏団子のスープにしましょうか」


 イストファの手を引き連れていくステラをカイルが「待てコラ」と服の裾を引っ張り引き留める。


「あら、何?」

「協調性!」

「個人の自由の尊重も大事だと思うのよね。あとほら、師匠と弟子の貴重な時間だし」

「一応お前パーティリーダーだろが!」

「あら、それもそうね」


 クスクスと笑うステラの様子に揶揄われたと悟ったカイルが舌打ちして、イストファが困ったようにオロオロする。


「まあ、冗談はこのくらいにして。君には感謝してるのよ?」

「どうだか」

「これはホントよ? 冒険者稼業で信頼できる仲間を探すってのは難しいもの」


 言いながら、ステラは軽く肩を竦めてみせる。


「私が今まで一人だったのには、そういう理由もあるもの」

「そう、なんですか?」


 ステラのそんな話を今まで聞いたことのなかったイストファは意外そうな顔でステラを見上げる。

 なんでも涼しげな顔でこなしそうなイメージがあっただけに、驚いてしまったのだ。


「ええ、そうよ。エルフを騙して捕えて売る違法奴隷商の手先なんてのもいたかしらね」

「えっ……」


 その言葉にはイストファだけでなくカイルも、そしてダークエルフであるドーマも大きな反応を見せるが、ステラの表情は涼しげなままだ。


「あ、大丈夫よ? 全員2度と同じ事が出来ないようにしてやったから。捕まってたエルフも全員解放済。ちょっとしたゴミ掃除もしたしね」

「ん……?」


 その言葉にカイルが何か引っかかったような顔をするが、それ以上は何も言わずに黙り込む。

 なんか心当たりがあった気がするな……とは言わない。言っても意味のない事だ。


「冒険者稼業ではそういう事をする奴もいるから、信頼できる仲間の見極めは大変なのよね」

「ステラさんでも、なんですか……」

「そう。私でも、よイストファ。逆にここまで強くなっちゃうと、背中を預けられる仲間っていうのは本気で見つからなくなるんだけど」


 だから期待してるわよ、と言われてイストファは「はい!」と答える。

 何処まで強くなればステラに追いつけるのかは分からないが、そうして期待して貰えるのが素直に嬉しかったのだ。


「うんうん、いい子ね。じゃあそろそろ本当にご飯食べましょっか。皆鶏団子スープでいいかしら? 今日は奢るわよ」

「おう、俺は異論はねえ」

「私もです」

「あの、ありがとうございますステラさん」


 代表するように頭を下げたイストファにステラは笑顔で応え、4人は露店で買った木の器入りの鶏団子スープを飲み始める。

 椅子こそ無いが屋台には小さなカウンターテーブルが据え付けられている為、落ち着いて飲む事ができるようになっている。

 煮込んだ材料が出汁にでもなっているのか、中々に良い味のスープを飲みながらイストファは「そういえば」と声をあげる。


「さっきの話からすると、たぶん何か買い揃える必要があるよね?」

「ああ、そうだな。とはいえ着膨れても本末転倒だ。分厚いマントと手袋……あとは雪道用の靴か」


 あのドワーフのおっさんのとこでいいな、と呟きながらスープをカイルが飲み始めたタイミングで、ステラが「あ、そうそう」と声をあげる。


「明日からの第4階層の探索だけど。しばらく私も同行させてもらうわよ」

「えっ」

「ええっ!?」


 その言葉にイストファとドーマは驚きの声をあげて。

 カイルは、飲みかけていたスープを思い切り吹き出したのだった。

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