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金貨1枚で変わる冒険者生活  作者: 天野ハザマ


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多いですね

 そして、イストファがゴーストへと突っ込んでいった直後。

 カイル達はイストファとは逆方向のゴースト達へと武器を向ける。

 あの方向はイストファに任せた。ならば此方の方向は自分達の仕事。

 言われずとも、言わずともそう察したが故の行動であり……そこに一切の迷いはない。

 カイルとドーマも、互いに何が出来るかはよく分かっている。


「ボルテクス!」


 枝分かれする電撃が放たれ、ゴーストの何体かに突き刺さる。揺らぐゴーストの姿はしかし、それでも消え去るまでには至らない。

 単純に威力が足りない。その事実を認識し、カイルは軽い舌打ちをする。

 嘆いている暇などない。分散して襲って来ようとするゴースト達の一体がカイルのファイアの魔法で霧散し、その隙を狙いカイルへと接近していた別のゴーストがドーマのメイスの一撃で霧散する。


「あと3体……多いですね」

「まあな」


 カイルとドーマのコンビを厄介と判断したのだろう、距離を保ちながら殺意を向けてくるゴースト達を見据え、カイルは杖を向ける。

 さっきは上手く油断してくれていたから当てられたが、次はそうはいかない。人外の動きをするゴースト相手に、ファイアの魔法は少しばかり遅すぎる。ボルトなら速いが、動きが直線的に過ぎる。

 悩むカイルをドーマが庇うように盾を構えて立つと、ズドンという音が響きドーマの盾に衝撃波がぶち当たる。


「くっ……!」

「そこだ、ボルト!」

「オアアアアアアアッ!?」


 衝撃波を放った瞬間で油断していたのだろうか、カイルのボルトの魔法を受けたゴーストは貫かれると同時に霧散する。だが……カイルはそこで違和感に気付きドーマに視線を向ける。


「おいドーマ……?」

「い、意外と衝撃が凄くて、身体が……」

「げっ!?」


 直接的なダメージを防ぎきっても、その衝撃まで防げるわけではない。

 イストファよりも身体的能力が低いドーマであれば、その影響は顕著だ。

 腕どころか身体にまで衝撃が伝わったドーマは一時的な麻痺に近い状態にあり……それでも盾を取り落とさなかっただけ立派だろう。


「オオオオオオオ!」

「オオオオオオオオオオ!!」

「ボルト!」


 カイルの放ったボルトの魔法を回避すると、一体のゴーストが上空からカイルへと迫る。

 その腕が色濃くなり、まるで実体化するかのような気配を見せた瞬間。


「ヒートウェイブ!」

「オアアアアアアア!?」


 その上空へと向けたカイルの杖から赤い波動が放たれる。

 熱を放射するだけの魔法は避けるには範囲が広すぎて、突っ込もうとしていたゴーストは真正面から魔力による熱に焼かれ悲鳴をあげる。


「ハッ、効くだろ!? お前等の身体は魔力そのものだもんなあ!」


 カイル自身、少し忘れかけていたことだ。ゴーストの身体は魔力の集合体。

 肉体持つ者の攻撃は魔力を纏わねば通用しないが……逆に魔力を纏った攻撃であれば、どんなものでも通用する。肉体持つ者には大した効果のないものでも、充分に「攻撃」として通用するのだ。

 そして、それさえ分かってしまえば打つ手など幾らでもある。魔力が足りないが故の「見た目だけの魔法」は少し前までのカイルの常だったのだから。


「オオオオオオオオオ!!」

「クールウェイブ!」


 カイルの放つ青い波動……冷気を放つだけの魔法にゴーストが悲鳴をあげて遠ざかる。

 だが、その隙をカイルは逃しはしない。


「サンダーショット!」

「オアアアアアア!」


 電撃魔法ボルトとは別系統の……相手を痺れさせる雷撃が放たれ、その身体を駆け巡り霧散させる。

 だが同時に残り2体のゴーストが不可視の衝撃を放ち、復活したドーマがカイルを突き飛ばし攻撃を受け……吹き飛ばされながら甲板へと倒れる。


「ぐ、く……!」

「悪ィ!」


 転がったカイルは立ち上がると、ゴースト達へと杖を向ける。


「ファイア……アロー!」

「オアアアア!」


 倒れたドーマに追撃をかけようとしていたゴーストが消滅し、残り1体のゴーストがカイルをどうにかするべく不可視の衝撃を放つ。避ける事すら出来ないカイルは真正面から大きく吹き飛ばされ、甲板の上をバウンドしながら転がっていく。


「カイル! この……!」


 ドーマが身体の痛みを耐えながら起き上がろうとした、その時。自分の腕を何かが掴んだことに気付く。それは、白い……骨だけの手。甲板の穴から突き出されたソレはドーマの腕をしっかりと掴み、そのまま穴の中から現れようとしている。


「ひっ、この!」


 掴まれた腕を振り、ドーマは必死にスケルトンの腕を甲板へと叩きつける。

 だがそれは甲板の穴を広げるだけで、スケルトンの腕は離される様子もない。

 やがてもう1つの腕が甲板の穴の縁にかけられ……スケルトンの頭が現れる。

 だがドーマとて、それを座して見ていたわけではない。フリーになっていた手で転がるメイスを掴もうとして。だが、その腕に向けて衝撃波が放たれメイスは転がっていく。


「ヒヒヒッ、ヒヒヒ!」


 その上空には、嘲るような表情を浮かべたゴースト。

 そしてスケルトンはその上半身を現し……カタカタと顎を鳴らして。その頭蓋骨が、バキンという破砕音と共に転がっていく。


「あ……」


 ドーマが見たのは、スケルトンを蹴り壊し……荒い息をつきながらゴーストへと斬りかかる、イストファの姿だった。

電撃魔法ボルト……主に打撃ダメージを与える魔法。雷の速度を持っているが、その性質は雷ではない。

雷撃魔法サンダー……主に魔法的ダメージを与える。性質は雷そのもの。

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