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金貨1枚で変わる冒険者生活  作者: 天野ハザマ


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これ、使えるかな

「そ、そっか。頭を砕けばよかったのか」


 動かなくなったスケルトン達を前にイストファは小さく息を吐き、その頭蓋骨の中にくっついていた魔石を拾い上げる。

 今までのモンスターであれば心臓部分にあったのだが、スケルトンにはそんなものが無いせいなのかもしれない……とイストファが考えていると、カイルは「そうみたいだな」と答えてくる。


「……なんか不安な答えだけど」

「いや、昔読んだ話だからアレなんだが、確か頭砕いても動いたスケルトンの話があったような」

「それはネクロマンサーのスケルトンでは? あれはゴーレムみたいなものですから、また違いますよ」

「あー、そっか。そうだな」


 ドーマの指摘にカイルは頷く。死体を操るネクロマンサーの使役するスケルトンであれば操り人形のようなものだから、頭がどうのというのは関係ない。此処にいるのは「そういうの」ではない、普通の……というとアレではあるが、普通のスケルトンなのだ。


「うん、頭でいいぞイストファ。魔石があるのを見ても間違いなく、それで動かなくなるはずだ」

「そっか……うん、分かった」


 上半身だけで動いてきたときはかなり……いや少し怖かったが、どうすれば倒せるかが分かればそれ程でもない。次はもっと上手く倒せると、そうイストファは自分を鼓舞する。


「それより、そろそろやっといた方がいいかもしれねえな」

「そうですね。ではイストファ、武器を」

「あ、うん」


 ドーマにイストファが短剣を差し出すと、ドーマはヘビーウェポンをかける。

 ズシリと重みの増えた短剣をイストファが軽く振る横で、ドーマも自分のメイスにヘビーウェポンをかけカイルへと振り向く。


「カイルの杖はどうしますか? ヘビーウェポンは辛いでしょうけど、ライトウェポンなら」

「要らん。俺の場合魔力さえあればやりようは幾らでもあるからな。温存しとけ」

「……まあ、そう言うなら」


 確かにカイルは魔法士だ。必要ないといえば無いのだろうとドーマも頷き、その様子を見てイストファも空いたままのドアの向こうに視線を向ける。

 誰かが設置したのか、元からそうなのか……吊り下げられたランタンの明かりに照らされた部屋の向こうには誰もいないように見えた。


「よし、行こう」

「ええ」


 カイルを間に挟むようにして、イストファを先頭にドアの向こうへと進む。

 生活空間なのか吊り下げられたハンモックや固定された机などがある中で、側面に空いた巨大な穴が印象的だった。

 まるで叩き壊されたかのように空いた穴は2つの船を繋いでおり、破片が散らばっているのが見える。


「船底に近い場所に穴、か。いつ沈んでもおかしくねえな」

「実際状況としてはそんなものなのかもしれませんけどね」

「ダンジョンだからこそ成立するってか? ハッ」


 2人の会話の内容はイストファには全て理解することは出来なかったが、この状況が普通ではないということだけは理解できた。だからこそ何が起こってもおかしくはないと気を引き締めて。


「……暗いね」

「ん? ああ、そうだな」


 渡る先の船が暗いことに気付き、イストファは荷物袋の中から以前手に入れたものを取り出す。


「これ、使えるかな?」


 取り出したのは、1階層でゴブリンソードマンから手に入れた光源石だ。

 すでに魔力が切れたのか輝きを失ってはいるが……再び魔力を籠めれば使えるはずだった。


「光源石か。俺がライティングの魔法を使うつもりだったが……まあ、そっちの方がいいかもな」


 照明の魔法ライティングであれば、カイルの近くを浮遊するようにも出来るし部屋の天井に打ち上げることも出来る。光源という点では光源石よりも優秀なのだが……魔力効率を考えれば光源石の方がいい。


「ドーマ、頼む」

「え、私ですか」

「俺の魔力はまだそんなに多くねえからな」

「いいですけど……」


 イストファから光源石を受け取ると、ドーマは魔力を籠め……それに応えるかのように光源石が輝き船室の中を照らし出す。


「おし、それならいけそうだな。イストファ、腰の袋にでも入れとけ」

「そうだね」


 イストファの腰の小袋に光源石を入れると、そんなものには負けないというかのように強い輝きが袋を貫通して周囲を照らす。

 これなら大丈夫そうだ、と判断してイストファは暗い次の船の中へと進み……その中にぼうっと浮かび上がったものに「わっ」と声をあげる。

 薄暗く光る人型。そうとしか表現できない何かは光源石の作り出す光の中でも確かに存在しており……その何かの染みのように漠然とした体を揺らす。

 瞬間的にイストファは短剣を振るい、しかし人型は予想していたかのようにひゅるりと不気味な動きで回避しながら下がっていく。


「あれ、は……」

「おい、一体何……チッ、ウインドカッター!」


 イストファの声に何事かと穴を乗り越えてきたカイルが素早く杖を構え、風の刃を放つ。

 高速で迫る風の刃は人型の何かに命中すると同時にその姿を霧散させ……カイルの「もうゴーストが出やがった」という呟きが響く。


「今のが、ゴースト……なんだ」


 多少動揺していたとはいえ、一撃を避けられた。その事実を噛み締めるイストファにカイルは頷く。


「ああ、厄介だぞ。動きが生き物じゃねえから、ここまでの階層に慣れてると速攻やられるって話だ」

出番のなかった光源石さん、やっと出ました。

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