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逆襲の劉封 孔明に殺されてたまるか!  作者: 巻神様の下僕
第八章 北伐

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第九十話 劉備北伐

 建安二十一年 春


 劉備率いる蜀軍十万は北上を開始する。


 北伐が始まったのだ!


 軍の陣容は以下の通り。


 大将 劉備


 将軍 張飛 趙雲 馬超 呉懿(ごい) 黄権 李厳 張衛 霍峻


 武将 馮習 張南 馬岱 龐徳 魏延 李恢 王平 孟達 馬謖 厳顔


 参謀 諸葛亮 徐庶 法正 陸遜


 後方担当 蒋琬 董允 費禕


 まさしく蜀の全戦力をかけての北伐だ。


 なのに、なのに俺は。


「孝徳。留守を頼む」


 俺は劉備から直接留守番するように言われた。


 これは俺が非公式ではあるが劉備の後継者に成った事と後方を万全にする為でもある。

 そして俺以上に悔しがっている者も居る。


「な、なぜ。わしが留守番なのじゃ?」


 肩をわなわなと震わせている黄忠。

 だってしょうがないよな。

 孔明からああも言われるとね。


 当初は黄忠も将軍として従軍する予定だったのだが、主席参謀の孔明の鶴の一声で外されたのだ。


「もはや老人の出る幕は有りません」


 本人にはとても聞かせられない言葉だ。

 多分黄忠が聞いたら孔明を殺しかねない。


 聞かせれば良かったかな?


 この北伐の陣容は劉備主導で決められた。


 意外だったのは孔明が主席参謀として従軍する事だった。

 一抹の不安を感じる。

 まあ実戦になったら徐庶や法正、陸遜が居るから問題はないとは思うけど。


 それと呉懿が参戦する。


 呉懿は史実では妹が劉備に嫁いでいる。

 実戦経験豊富な武将で蜀の重鎮で劉禅の外戚。

 しかし、孔明存命中はあまり活躍する事もなく、官位も低かった。

 その後、孔明が亡くなった後に車騎将軍に任じられて漢中の守備を任されている。


 これは孔明が外戚である呉懿一族に権力が集中しないようにわざと官位を上げさせなかったと言う話だ。


 でも、これって呉懿と言う人物を信用してなかったって証拠だよね?


 劉備が亡くなった後の蜀は孔明一人に権力が集中していて彼は独裁者だった。

 その独裁者孔明に対抗出来る唯一の人物が呉懿だったかも知れない。

 しかし、孔明が権力を握っていた状態では呉懿は何も出来なかったし、周りも孔明に呉懿を重用するようには言えなかった。


 だから孔明が亡くなった後に呉懿を昇進させて、軍を任せようとしていた。

 しかしその頃には呉懿も高齢になっていたので、孔明の死後、四年後には亡くなっている。


 もし仮に呉懿が劉備が亡くなった後に車騎将軍に任じられたら、孔明の北伐を諫めて無用な出兵をせずに済んだかも知れない。

 それか、馬謖、李厳ではなく、呉懿を重用すれば北伐の失敗は無かったかも知れない。


 孔明の人を見る目は本当にどうかしている。


 ここぞと言う場面を任せる人物を、ことごとく外しているのだから逆に凄いとも言えるけどね。


 今度の北伐もそんな事がないように祈りたい。



 今回の北伐の進軍ルートは孔明の第一次北伐をなぞっている。


 なんせ今回の北伐の作戦を考えたのが孔明だからだ。


 史実では孔明は別動隊として趙雲を斜谷道(やこくどう)に派遣し、そこで魏軍主力を引き付けさせ、本隊は下弁から北上して祁山(きざん)を占領。

 そこから軍を派遣して各地を平定した。

 この時に天水、南安、安定の三郡が蜀に寝返っている。

 その後、街亭で馬謖が魏の援軍に来た張郃に負けて北伐は失敗する。



 今回も史実同様に軍を展開する予定だ。


 これは徐庶、法正、陸遜も賛成している。


 この三人が合格点を出すと言うことは孔明の考えた北伐は間違っていなかったと言う事だ。

 後は大事な場所を誰に任せるかだけだな。

 そこは間違えないで欲しい。



 そして俺は漢中に残って劉備達を見送った。


 漢中居残り組は以下の通り。


 大将 俺(劉封)


 将軍(副将) 黄忠 陳到 張任 彭羕(ほうえい)


 武将 呉蘭 雷同 傅彤 張翼 鄧芝 孟獲


 漢中居残り組の兵力は三万。

 このうち張任は益州成都に残り、益州の政務は劉巴をトップに執り行っている。

 国内はがっちり固めている。

 何の心配もない。


 心配ないよな?



 ※※※※※※


 俺は柳隠(りゅういん)


 劉将軍の遠征軍から帰還した俺は都伯(とはく)から伯長(はくちょう)に昇進し、さらに屯長(とんちょう)に任じられた。


 とても信じられない。


 俺が五百人を指揮する事になるなんて!?


 それに杜禎(とてい)柳伸(りゅうしん)も昇進して伯長に任じられた。


 俺達三人は郷里では一番の出世頭だ。


 一年前はこんな事になるなんて想像してなかったが、これは夢ではなく現実だ。


 それが証拠に俺の目の前には劉将軍が居る。


 俺と劉将軍は今、門の上に居て、将軍はじっと北を見ている。

 そう、俺は劉将軍直属の屯長の一人として抜擢されたのだ。

 こんな光栄な事はない!


 そしてなぜ俺が劉将軍と一緒に門の上に居るかと言うと、益州牧劉玄徳様の遠征軍を見送っていたからだ。


 俺の上の千人を率いる部曲(ぶきょく)将から聞いた話では将軍は今回の遠征軍から外されてしまったのだ。

 将軍ほどの戦歴を持つ人が今回の遠征に参加出来ないのはさぞ残念な事だろう。

 将軍の目には遠征軍はどう写っているのだろうか?


 悔しいのだろうか?


 それとも玄徳公を思って心配しているのだろうか?


 しかし俺の立場では劉将軍の心の内を知る事は出来ない。



 それとこれは噂だが、劉将軍は玄徳公の後継に選ばれたから今回の遠征を外されたと言われている。


 玄徳公には跡継ぎの阿斗様が居られるが、まだ若く、跡継ぎとしては頼りない。

 それよりも目の前の劉将軍は長沙王の血筋で玄徳公のご息女と婚姻しており跡継ぎとして申し分ない。

 それに民や兵達の人気も高い。


 俺も劉将軍が玄徳公の後を継いだほうが良いと思っている。


 これは多くの人が内心思っている事だ。


 しかし、中にはこんな噂が巷には上がっている。


『劉孝徳は玄徳公に取り入り、跡継ぎを狙っている』


『劉孝徳は跡継ぎに成る為に阿斗様を亡きものにしようとしている』


『劉孝徳は民心を惑わし、玄徳公を押し退け、益州牧の位に就こうとしている』


 こう言った噂だ。


 しかし誰もこの噂を信じていない。


 玄徳公に取り入りとか、阿斗様を亡きものにとか、益州牧を狙っているとか。


 そんな事、劉将軍がする訳がない。


 と言うか、する必要性がないじゃないか?


 劉将軍は玄徳公の養子で、蜀軍の中で一番の功績を上げているし、玄徳公のご息女と婚姻している。

 それに孫呉の姫君との間に娘が産まれているんだぞ!

 そんな人がどうして危険を犯す必要が有るんだ!


 どうせ腐れ儒者の戯言だ。


 あいつらは役に立たない事ばかり言って、上に取り入り俺達よりもいい暮らしをしている。

 あいつらが居なくなったほうが世の為だと俺は思うね。


 それにもし、もし仮にそうだとしても俺は、俺達は劉将軍に付いていくだろう。


 今の世の中、強い人が上に立つべきなんだ。


 どうして幼い子供が俺達の上に立たないといけないんだ!


 こんな噂を流している奴は本当にろくでもない奴に違いない。

 もし噂を流している奴が居たら取っ捕まえて劉将軍の前に突き出してやる!


「そろそろ戻るか。行くぞ、柳隠」


「あっ、はい。劉将軍」


「なぁ、柳隠。その劉将軍って言うの止めないか。俺とお前は年はそんなに違わないだろう?」


 え? 何を言っているんだ。この人。


 俺と劉将軍は確かに年は近いけど、劉将軍は高貴な出だし、身分が違うし、だから、その……


「いや、悪かった。君の立場ではそう言うしかないよな」


 俺が答えないでいると劉将軍が俺に謝った。


「いえ、そんな。いや、えっと…」


 なんで謝るんだよ。なんて言えばいいのか分からないよ。


「ふふ、俺は君に期待しているんだ。なんせ伯言が君を推挙したんだからな。早く将軍になってくれよ」


「はっ? いえ、すみません。ご、ご期待に、そ、そ、添えるように、が、頑張ります」


 将軍? 俺が将軍になる?


「頼むよ」


 そう言って劉将軍は先に行ってしまった。


 俺は劉将軍に期待されていると言われて嬉しくて嬉しくてその場で飛び上がってしまった。


「ようし、やってやるぞ! 俺は将軍になって劉将軍をお助けするんだー!」



 そして、俺はその言葉通りに劉将軍を助ける事になる。


お読み頂きありがとうございます


誤字、脱字、感想等有りましたらよろしくお願いいたします


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