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第八十七話 下弁攻め

 建安二十年 夏


 どうしてこうなった?


 俺達が成都に戻ってきたのは建安十九年から二十年になり、春を通り越して夏になっていた。


 南蛮制圧は冬には終わったのに季節は既に夏!?


 これと言うのも益州南部の道が整備されてないのが悪いのだ!


 帰り道は建寧から牂牁を通り江陽に戻るルートだった。

 これは最初から決まっていたのでそれは良い。

 悪いのはそのルートの道の整備に思った以上に時間が掛かった事だ。


 そしてその原因は……


「「「パオオーン」」」


 うわー、うるせー!


「可愛いもんでしょ。孝徳様」


 士徽の連れてきた戦象部隊にある。


 士徽は牂牁郡討伐から俺達に合流し、そのまま成都まで付いてくる事になった。

 それというのも南蛮部族からの土産物が多く、それを運ぶのに戦象部隊が役に立つからだ。

 そしてこの戦象部隊を成都に連れて行く事で、南蛮制圧が完了した事をアピール出来るのだ!


 しかし問題も有った。


 この戦象部隊。とにかく足が遅い。

 それに大食らいで補給担当の呂乂達を悩ませた。

 道の整備の手伝いもさせたが兵士が怖がって近付けない等のマイナス効果が発揮される始末。


 道幅を広める為に戦象部隊を先行させ、その後を兵士達で道を均す作業が続いた。


 まあ、人がする作業よりは早いのだがその分世話をするのが大変で、馬の方が楽だなと思った次第です。


 江陽郡に着くと厳顔とその兵達とはお別れした。


 彼らはあくまでも援軍なので、兵には報酬を厳顔には厳重注意がされる事になっている。

 厳顔は厳重注意をされた後に左遷される。

 俺の下に来ると言う左遷だ。

 本人は喜んでいるのだが、左遷は左遷だ。

 決して栄転ではない。


 成都ではちょっとしたパレードが行われた。


 俺達遠征軍が先頭を歩き、その後ろに南蛮兵が続いた。

 さらにその後ろから士徽が率いる戦象部隊、その後ろでは南蛮からの土産物を積んだ馬車が続く。

 その珍しい南蛮土産に成都の民は驚きの声を上げていた。


 劉備達は象を間近に見て驚くと思ったのだが、本人と荊州の家臣達は荊州南郡で既に見ており驚く事も無かった。

 益州の家臣達も一度は見た事があるのだろう。

 象を見て驚く事は無かったが、象の多さには驚いていたようだ。



 そして俺は宮殿で劉備達に南蛮遠征の成果を報告した。


「臣孝徳。ただいま戻りました」


「ご苦労だった。成果に関しては報告を聞いている。上々の結果だ。大義である」


「はは、ありがとうございます」


 劉備から直々のお褒めの言葉を頂いた。


 また独断専行したのかとお叱りを受けるかと思ったが、それは無かったな。


 しかし、あいつからはチクリと言われた。


「劉将軍。南部統治に関して、独断が過ぎるのでは有りませんか?」


 あー、めんどくせー。


「孔明殿。南部統治に関しては遠征軍の大将である劉将軍に一任されていた筈です。それが問題になりますか?」


 陸遜が俺を庇う。


 そして孔明はジロリと陸遜を見て言う。


「いえ、事前に話をして頂きたかったと申しているだけです」


「そうですか。ですが任地に行かなければその土地の統治に関しては分からないものです。事前に話をしていても、実際は現地での統治に向かない事も有ります。仮に事前に話をしていて、それとは違う事をしていたらどう思われますか? 劉将軍はそれを思い、統治に関してはあえて何も言わなかったのです」


「そうですか。それは私の考えが至らず申し訳ない」


 な、なんか陸遜と孔明がバチバチやってますよ?


 普段は劉巴と孔明が論戦してるんだけどね。


 それから孔明派閥の董和から厳顔に関して言われ、それを王累が言い負かし、補給に関して数が多いと黄権が言うと張松がそれでも少ないほうだと反論する。


 ふむ。以前よりも孔明派の人間の勢いが有るな。


 さては下弁攻め、上手く行ったのか?


 朝議は南蛮制圧での成果とその後の利益、問題点が上げられて場は紛糾したが、劉備が最後を締めて終わった。


 そしてその後俺は派閥連中から俺が留守の間に何が有ったかを聞いた。


「まずは下弁だな。あれは半分成功した」


 劉巴から下弁攻めの結果を聞かされた。


 李厳による武都郡下弁攻め。


 李厳率いる蜀軍三万は下弁に侵攻し、その占領に成功する。

 と言っても下弁は無人地帯、占領するのは難しくない。

 問題はその後だ。


 下弁に入った李厳は早速城の修復や周辺から去った民に帰還を促す為に四方に兵を出したりした。


 この時参謀の李恢、閻圃は李厳に忠告した。


『付近に魏軍が居る可能性が有ります。まずは下弁の修復を行わせるのが宜しいかと』


『付近の住民は下弁が安全だと思えば勝手に戻ってきます。李恢殿の言われる通り魏軍に注意すべきです』


 この二人の忠告を李厳は笑って退けた。


『魏軍が近くに居るのなら我らが下弁に入るのを黙って見ている筈がない。仮に近くに居るのならその動向を知る為にも兵を四方に出すのは悪手では有るまいよ』


 この李厳の言に二人は妥協する。


『ではせめて兵の数を減らして頂きたい。本隊の数は保つべきです』


『うむ。その言は取り入れよう』


 李厳が進言を取り入れたので二人は安堵の表情を浮かべるが一抹の不安を感じていた。

 そこで遊軍である馬超の下に伝令を出して直ぐにでも救援に来れるように依頼した。


 その後不安は的中する。


 下弁の城に入る事一月あまり、魏軍の姿は見えない。


 城には次々と物資が運ばれて拠点作りが進んでいた。


 その矢先、それはやって来た。


 夏候淵率いる魏軍が襲来したのだ。


 急な襲来に動揺した蜀軍だが、李厳はこれに冷静に対処しようとした。


 したのだが、兵が足りなかった。


 この時下弁に残っていた兵は一万足らず。

 その他は道の整備や屯田の為に外に出ていたのだ。

 そこを夏候淵に突かれた。


 どうやら夏候淵は李厳が油断するまで待っていたようなのだ。


 その後は下弁を守れないと判断した李厳は兵を退き、外に居る兵達と合流しようとしたが、夏候淵の追撃がそれを許してくれなかった。

 李厳は散々追い回されて兵は四散してしまい軍として維持出来なくなってしまう。

 その窮地を救ったのが副将の王平と張翼であった。


 王平と張翼は下弁の外に居たが異変に気づいて直ぐに行動に移す。


 王平は下弁から漢中に繋がる道『馬鳴閣(ばめいかく)』で、柵を築いて道を封鎖する。

 張翼は先行して李厳の本隊と合流してその後退を助けた。

 李厳は張翼に助けられながら、王平の築いた即席の砦に逃げ込みそこで魏軍を迎え撃つ。


 夏候淵はそれを見て追撃を中断し、陣を築いてじっくり攻める構えを見せる。


 ここで戦線が膠着する。


 その膠着状態を打開したのが馬超だ。


 馬超は関城から長駆迂回して陰平に入り、そこから下弁に侵入して夏候淵の後背を突く動きを見せた。

 しかしこれは下弁に居た徐晃、張郃に防がれる。

 そしてこの馬超の動きを知った夏候淵は徐々に戦線を後退させて下弁に駐屯した。

 その後李厳は下弁の手前武興に駐屯する。


 そして年明け後に夏候淵は兵を退き、李厳は下弁に再度入る事になった。


 下弁攻めは成功はしたが、夏候淵に下弁を譲られる形で終わった。


 それに下弁を得たがその被害は大きかった。


 李厳は兵を半数近く失い、更に多くの物資を失った。

 馬超も陰平に入った時に氐族の酋長の強端(ごうたん)の伏兵に有って少なくない被害を出していた。

 その後強端は龐徳に斬られている。


 武都郡、陰平郡を得たが無人地帯である為にその維持にどれだけ掛かるか分からないと劉巴は頭を抱えている。

 それは孔明も同じ考えでは有るのだろうが、向こうは今回の事を成功と思っているのだろうか?


 劉巴には南蛮で得た粟を武都郡、陰平郡での屯田に使うように言った。

 武都郡と陰平郡は高地だから南蛮の高地で取れる粟も使えると思う。

 駄目なら荊州経由で麦を手に入れて育てるだけだ。


 下弁攻めの話が終わったので、魏と孫呉の動きを聞きたかったが、劉巴が明日にもまた話すからと言って話は終わった。


 そして劉巴がニヤニヤした顔で早く屋敷に戻れと言った。


 珍しい事も有るものだ。


 いつもは話足りないと俺を引き留めるのに、早く帰れと言われる事は無かったのに?



 そして陸遜と共に屋敷に戻ると尚香、劉華、孫英が一緒に居た。


 孫英の腕には赤子が居た。


 あれが陸遜の子か。


 うん?


 孫英の隣に座っていた劉華の腕にも赤子が居た。


 へ?


 誰の子?

だ、誰の子だ(棒読み)


誤字、脱字、感想等有りましたらよろしくお願いいたします


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