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増幅使いの這い上がり  作者: aaa168(スリーエー)
『灰色の少女』編
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門番

降りていくと、当たり前だが機械の町がすぐそばに近づいてくる。


実感と共に、戦う覚悟を決めておく。



……そして、その覚悟は直ぐに試される事となった。



「早速か」



そいつらは、二匹……いや、二人といってもおかしくはない。


「―――――――」


「―――――――」



そいつらは動く様子が全くない。機械の町の門番何だろうか。


じっと、外敵の存在を一早く索敵するようにギョロギョロと単眼を動かしている。



それは、『人型』の機械の化け物。


特徴的なのは、大きな一つ目と、俺達より一回り大きい豪快な体。


手に握る、鉄が凝縮されたような塊の棒。


一目見て浮かんだのは、ファンタジーの世界でよく見る『サイクロプス』。




「……やるしかないか」



俺は嘆く。


久しぶりの戦闘だ、俺は戦いのイメージを作り、唾を飲み込む。


「行けるなら、教えてくれ」


「……!」


樹はとっくに準備万端か、便りになるな。



……幸いあいつ等は俺達に気付いていない。


これまでは基本あちら側が仕掛けてきたせいか、こんな状況は久しぶりだ。



だが、それはこの距離だからだ。


戦闘は先手が圧倒的に有利。距離を開けながら先手で攻撃を放つ。


その攻撃が出来るのは――樹だ。



「……いく、ね」


「ああ」




瞬間、展開される白い魔法。


樹の杖が眩く輝く。



「―――――!」


「―――――!」



門番達と俺達を取り囲むように、白い壁がドーム状に広がる。


突如現れた異変に、起動したかのように動きだす門番。


しかし俺達を見つける事はまだ出来ていないようだ。



「っ!」



樹が更に杖に力を籠める。


瞬間――門番へと、『剣』が降り注いでいく。


剣と言うのは比喩では無い。白く、美しく形作られた剣は、降り注ぐには勿体ないと思ってしまう程。


その剣が、四方八方から襲い掛かる容赦ない攻撃。


一瞬で百を超えるそれに、門番は対応出来ているのだろうか。


見えない程の攻撃を終えて暫く、やっと分かった。


「……いるな」


一匹、残っている。


まるで片方を守るように、一つが犠牲となって。


これまでの敵には見られない光景だ。


「……」



息をつく樹。


一瞬で大量の魔力を使えば、当然身体に相応の負荷がかかる。


何も言わなかったら、樹はまだ戦闘に参加するだろうな……





「後は俺がやるよ。――『充電』!」



樹の前に出る。


同時に電気を纏わせる。



「――――!」



その巨大な目で睨まれると、少し物怖じしてしまう程だろう。



機械音を鳴らしながら、門番は大きな左腕で殴り付けて来る。



「――っと!」


大振りだが早い。しかし、俺のスピードの敵じゃない!


攻撃を避け、背中に回る。同時に俺はサイクロプスの身体を二つにすべく、剣を構える。



「――――!!」



構えた瞬間――サイクロプスは途轍もないスピードで振り向き、右に持った鉄塊の棒を俺に振りかざす。


このまま攻撃すればやられるか――



「充電!」


「――――」



攻撃の判断を取り止め、俺は電気を再度纏いサイクロプスの攻撃を回避。



「……危ないな」



距離を取り、対面する。


サイクロプスはやはりこれまでの化け物と異なり、動作が『野生』ではない。


この先にある地を『守っている』ような。静かだが、この先を絶対通さない……そんな意思を感じる。



「――……」



圧力と共に、こちらへゆっくりと向かってくるサイクロプス。


このまま、電気を纏ったまま戦っても良い、勝機も十分にある。


だが――ここは。



「増幅――付加!」



久しく、燃え上がる蒼炎を身体に纏う。


実戦で使うのは、電気の力を手に入れてから殆ど無かったからな。


電気とは違う、炎の力の感覚を馴染ませていく。



「やろうか」




持ち手のみのスタッフをしまい、背中にある剣身のみのスタッフ……『鈍器』のスタッフを抜く。



『この先』へと、侵入する覚悟。


それを試す為――真っ正面から、正々堂々コイツを倒す!





「―――――!!」



サイクロプスは自身の持つ鉄塊を大きく振りかぶり。


俺を潰そうと振り下ろす。


空気の圧が、俺を包む。


「……っ」



俺は応えるように、前へ出てスタッフを振る。


その鉄塊に、そして鉄塊を通じてそれを持つサイクロプスへと――俺の蒼炎を乗せた一撃を。



「―――――!!」


「らあ!!!」



黒のスタッフと、鉄塊が交わる。



ギン、と鈍重な音と共に、俺の身体に重く強い力が加わった。


その衝突の後――



「……終わりだ」



退いたのは、鉄塊の方だった。


大きく仰け反るサイクロプス。隙を逃さず、その巨大な目を殴打。


鈍い感覚が俺の身体に伝わっていく。



「――……」



弱点はやはりここだったようで、反撃しようする動きも止まって。


守る者は、静かに光を消していく。



「……ごめんな。この先に行かせてもらうよ」



後は進むだけ。


動かなくなった門番二つを背に、俺達は機械の街に足を踏み出す。


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