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増幅使いの這い上がり  作者: aaa168(スリーエー)
『灰色の少女』編
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一日

プロローグの部分です。


やっとここまで来れた、って感じですね……


朝、3時。


「ふっ……ふっ……」



それは……いつから始めたか。



我武者羅に鍛えた所で、強くなれるとも思っていない。



鍛え方は、正解が見つからない。今もずっと。




だから俺は、色々と考え自分に必要な力を得られるような、そんなトレーニングを心掛けるようになった。



今は腕立てをしながら、同時に魔力のコントロール練習を。


魔力の分布を足から腕に変えたり、頭から爪先に変えたり。出来るだけ瞬間的に。

身体を使いながら魔力も使うという事は、言うならば実戦と一緒とも言える。



そしてまだまだ自分は非力だ。

前衛の俺として――結局最後にモノを言うのは、鍛え抜かれた己の肉体。


未だに、機械の力には力負けする事もある。だから、鍛えなければならない。



「……ふう」



これを1000回繰り返した後は、素振りだ。


実戦と同じよう、炎の刃をスタッフに宿らせてそのまま素振りを。


刃を出来る限り鋭く、そして振るスピードも極限まで早く。


一度、新たに現れた敵に弾かれた事が有ったからな……


あれは焦った、俺の中では炎の刃は弾かれないという勝手な決め付けが住み着いていたらしい。


何でも斬り通す刃、そんなイメージを炎の刃に込めて創造する。


何者も切り伏せる剣、そのイメージの元で剣を振る。


それを繰り返し、何千時間か。



いつの日かその敵に対峙した時は、何とか切り伏せる事が出来た。





朝、5時。

ようやく、身体が暖まってきた。


「ふう」



素振りが満足行くまで終えた所で、最後のメニューだ。


前までのような単純に鍛えるものではなく、実戦を意識したトレーニングを最近は行っている。



「『充電』」



詠唱と共に、駆け巡る電流。


この電気の力は戦闘でかなり助かっており、俺の戦闘スタイルの軸になっている。


『火』がパワーとすれば、『電気』はスピードだ。


流石に電気のスピードとまでは行かないが――これまでの敵にスピードで負けたことはない。


感覚の強化は、電気によって敏感になっている……感覚が伝わるスピードが速くなっているのだろう。


俺の『電気』のイメージが、そういうモノだったからなのか?分からないが……


まあともかく、今の俺にはとても役立っているモノだ。




「っ――らあ!」



仮想敵は、これまでで一番強い敵達を。



電気を纏いあらゆる攻撃を避け、背を取った所を炎で攻撃する。


この戦闘スタイルで、俺はこの地で戦ってきた。


恐らくこれからも。


だからこそ、俺はこのスタイルを磨き続けなくてはならない。


―――――――――


朝、7時。



数々のトレーニングを終わらせ、ストレッチをしている頃になれば……



「ふぁあ……おは、よう。藍君」


「ああ、おはよう」



樹が目覚めてきた。


あくびをしながら寝巻姿のまま挨拶をする姿はとても無防備だが……そこまで俺に気を許してくれているのは嬉しい。


そして、樹は俺の元に近付き、身体に優しく触れ……


「『聖浄』」


樹がそう唱えると、俺の身体の汚れが削ぎ落とされる。


あっという間に俺は、風呂上がりかそれ以上に清潔になった。


樹によれば、聖属性に水属性を混ぜた魔法らしい。本当に樹の魔法には助けて貰ってばっかりの日々で。


もちろん原理などわからない。


樹も「何となくやったら出来ちゃった」って言っていた。恐ろしい才能。



「いつもありがとな、ご飯にしようか」


「……うん!」



……それと、樹は凄く元気だ。静かだけど、毎日色んな表情を見せてくれる。


転移する前とは見違える程に。こんな毎日が修行みたいな日々なのにな。


そんな樹が居るからこそ、俺はここまで頑張れているんだろう。


――――――――――――――




そしてご飯。


ご飯といっても……まあ、肉だけども。


様々な魔物に会い、解体も何とかやる内に大分上達した、気がする。



どの部位がおいしいとかも何となく見たら分かるようになった。


不味い部分は非常食だ。


薄くスライスし、焼いた魔物の肉を、樹の作ってくれた皿に盛り付けていく。





「……んー、あの蜥蜴の肉はやっぱあっさりして旨い」



栄養面は全く大丈夫なのか、体調は今の所全く悪くなっていない。


寧ろ良い位だ。


魔物のおかげで食糧難は無縁となった、本当にありがたい事。



「……」



黙々と美味しそうに魔物の肉を頬張る樹。


本当に樹はよく食べる。その分魔法を沢山使っているから当たり前か。



樹のお腹も十分に満たしてくれるこのダンジョンは、本当に助かっている。




「さて、今日も『南』に進んでいくか。異論無いか?」




俺は『アプリ』の『コンパス』を見ながら、進路を確認しておく。



「……」



頷く樹。異論はないようだ。


ああ、そういえば……スマホのアプリのマップについて。


これを何となく開いた時……当然だが何も表示されなかったんだが、樹が画面の左下を指さしていた。



『コンパス』の表示を。樹はこれが気になったらしく、俺は半ば無いだろうと思っていたんだが……それに反してコイツは動いた。


反対に向けると方角が逆に。そして、俺達が進んでいた進路に向ければ……それは南の方向を指していたんだ。


何時からかは分からない。もっと早く気付いていればな。


もしかしたら、俺達は北の大陸のさらに北の最果てに飛ばされたのかもしれない。



だとしたら、一体どれだけ歩けばいいのやら……




「よし、行こうか」




―――――――――――――――――


朝、 9時。


支度を終えて今日も灰色の土地に足を踏み出す。


南に進んでいけば行くほど、強大な敵が増えてきた。


例えば……さっき言ったとてつもなく硬い身体をもった敵。


灰色の地面を、自在に泳ぐ不思議な敵。


大量の目を持った、全ての動きに対応してくる敵。


そのどれもが、当たり前だが『機械』の身体だった。



「ああ、今日は早い時間で会ったな」



見れば、遠くに特徴的な青い光とメタリックな身体が存在している。


機械の敵だ。


そいつは俺達に気付くやいなや、こちらに近付いてきていた。





「――……」





『虎』タイプ。サイズは俺の数十倍。


スピードにパワー両方ともトップクラス、かなりの強さだ。それを活かしたタックル、引っ掻きによる攻撃が主。


アイツもまた、俺の事を警戒しているんだ。殺意をこちらに向けながら、伺うように対峙している。



「樹、下がってな」


「……」



俺が樹にそう言うと、樹は俺と距離を取ってくれる。


コイツの場合は、俺が一人でやったほうが良い。

標的になったら、恐ろしい勢いで突っ込んでくるからな……



「『充電』」



 ポケットに忍ばせているバッテリーのケーブルを掴み、そう唱えれば――俺の身体を、電気が支配する。



「――――!」



 殺意が限界点になったか、虎はスチームを吹き出しながら突っ込んでくる。




デカいトラックが突っ込んでくるのは、こんな感じなんだろうか?

迫力満点だ。突っ込むだけでも十分な攻撃。


加速し続ける巨体は、俺を殺す気満々だそうだ。突進だけでなく、殺意の塊のような爪を此方に斬り付けようとする。






……やがてその爪が、俺の身体を――



――引き裂く、前に。


俺は、上空へと『跳ぶ』。



「――――」



普通であれば絶対に間に合わない。


電気の力の恩恵だ。

強化された感覚で、虎の認識ズレが起こる程のギリギリのタイミングで避ける。


避ける際の跳躍にも、もちろん電気の力が大きく関わる。

これを纏っている間は、制御出来ない程の速さで身体が動くからな。



「――どこ、向いてんだ?」


狙い通り俺を消したと思い込んでいる虎に、樹へ突っ込んでしまう前に呼び止める。


樹もコイツの攻撃でやられる程弱くは無いんだが、あっちこっち行くと面倒だ。


「――――!」


 

俺の声に反応し、こちらへ向こうとする――が。


背を取った時点で俺の勝ちだ。



「――――っ」



電気を消して、炎の刃を点火する。



現れる蒼炎。詠唱はもう省略出来るようになった。



蒼の刃を振りきれば――目の前の虎が半分になり静かに倒れる。


こうなったらコイツは流石に終わりだ。機械音も消えていく。


日々の修行の賜物か……真っ二つに斬るのは容易くなっていた。




「お待たせ、樹。行こうか」




まだまだ、道は遠い。

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