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増幅使いの這い上がり  作者: aaa168(スリーエー)
『機灰の孤島』編
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道中


「……ち、ず……?」



不思議そうな表情をする樹。


そりゃそうだ、いきなりだしな。



「ああ。でも――こんな、ちゃんとしたやつじゃない」



俺は鞄から地理の教科書を取り出し、ぱらぱらと見せる。



「ある程度、何処に何があるか分かるようにしたいんだ。そしたらこの土地から抜け出せる近道になるだろ?」


「……」



樹はうんうんと頷く。


この土地は、同じような光景が多いせいで迷いやすい。


何処に何があるかある程度分かるだけで、大分変わるはずだ。


闇雲に歩いているだけでは落ち着かないというのもある。



もしかしたら抜け出す手立ても見つかるかもしれない。


……抜け出す、か。



「そういえばさ、樹」


樹に納得してもらった後、俺は話を変える。



「……?」



……この土地に来て、早いもので一日が経過した。


灰色の空や機械の化け物、奇妙な魔物。


人一人いない、この土地。



「樹は……ここから一刻も早く脱出したいと思うか?」



この答え次第で、俺のこれからの行動は変わる。



「……」



首を横に振る樹。



俺はそんな樹を見て、口を開く。



「そっか。……あのさ、これは俺の我侭なんだけどな」



俺の行くべき道は分からない、でも……今の俺の正解だと思う道は。



「この土地で暫らく暮らす事が出来れば……きっと俺達は強くなれると思うんだ」



誰にも頼れず、俺達でなんとか生きていかなければならないこの状況は……『修行』とは行かないまでも似たものだ。


「……」


頷く樹。


表情から、肯定の意思が見てとれる。


……でも。


「でも、本当にいいのか?辛くないか」


樹は女の子だ、嫌と言うなら勿論ここから脱出するのに全力で舵を取る。


「……」


またしても頭を横に振ってから。


樹は頬を赤らめて、小さく口を開く。



「……藍君、と、一緒に……強く、なれるなら……」



それは『ずっと』、そう思っていたかのように告げる樹。


遠慮や嘘は全く雑じっていない、本物だ。


「……そっか」



樹もまた、俺と同じように……強くなりたいと思っていたようで。


前の世界とはもう顔付きが違うのは、俺の気のせいではないだろう。


本当に、頼もしい『仲間』だ。



―――――――――――――――――――


荷物をまとめ、移動の準備をする。



「さて、それじゃ今日は……」



行き先を方角で決めようと思ったが……分からない。


とりあえず、適当な方向に真っ直ぐ進めばいいか。



「よっと」



俺は鞄から折れたスタッフを地面に立て、放す。



「……よし、今日はこっちに進む事にしよう」



倒れた方向を確認し、俺はそう言う。


「……」


頷く樹。こんな方法だが、納得してくれたようだ。



取り合えずは、今から進む方向を勝手に北として始めよう。



幸い俺のスマホに歩数計があるから……距離は大体分かる。


歩幅とか、そんな正確なものを作るわけじゃないしいいよな。


まず真っ直ぐ歩くってのも難しいしな……



特に理由はないが、なんとなく地理のノートに書いていこう。




「よーし、それじゃ出発するか!」



「……!」



――――――――――――――


ノート片手に、俺達は歩く。


「111歩、枯れた木が集まってる場所……と」


「……」




「1000歩時点まで何もなし、と」


「……」




「3000歩時点……何もなし。ちょっと休憩するか」


何も無いってのは案外疲れるな。


万が一に備えて、軽い休息ぐらいはしておこう。



「……」



頷く樹は、全く疲れていなさそうだ。


はは……俺より体力あったりして?




これからも何が起こるか分からない……心して行こう。

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