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増幅使いの這い上がり  作者: aaa168(スリーエー)
『機灰の孤島』編
76/127

俺達は向かい合って焚き火を囲んでいる。二人だが。


燃える赤が、灰色の地面を紅く……暖かく照らしていた。


ぱちぱちと小枝が鳴る音に、燃える炎の音。



「おお……良い感じだな」



そして……二人で箸に肉を突き刺し、焼いて。


広がる香ばしい匂いが食欲をこれでもかと押し上げる。


そういや、俺も樹もご飯はかなり久しぶりだったか。


「……」


樹も、表情からお腹が減っていると言っている様だ。


「そろそろいいか」


火が通っている事を確認した後、少しだけ肉を齧る。



……何も無いよな……


うん。


変な味もしないし、違和感も無い。


というか思ったより上手いな。鶏肉を少し固くした様な食感だ。


それに独特の風味と香りがあり、それは全く悪いものじゃない。寧ろ良い。


まあ当然味付けなんてしてないから、本当に『肉』をそのまま食べている感じだが。



しかし、今まで食べてきた料理には無いものがあった。


食べて飲み込むと、一瞬で身体に溶け込んでいく感覚、これが心地良い。


魔物だからかは分からないが……これはクセになりそうだ。



「…………」


気付けば樹が横に居た。


こちらを、まじまじと見ている樹。


心配そうに伺う様子から、期待の目になっていっている。


俺の様子から毒は無いと考えたのだろう……その通りだ。


ごめんごめん、待たせたな。


「はは、大丈夫そうだよ。食べて良いぞ」


そう言うと目を輝かせ、もう一本の箸に指していた肉を頬張る。


「……ん……」


美味しそうに食べる樹。


良かった、樹も気に入った様だ。



狼といえど、身体は普通の大型犬程ある。


まあつまり……まだまだ肉があるってことだ。



恐らく、今日の夜では食べきれない。



――――――――――――――――――ー



はい、そう数十分前の俺はそう思ってました。



「…………」



樹はゆっくりと食べているように見えていたが、気付けばもう肉をかなり平らげている。


狼の肉は、部位によって食感が違うから飽きが中々こない。


……それにしても樹は、良く食べすぎなんだが。



「はは、あのさ樹」


「……?」


不思議そうにこっちを向く樹。


「そろそろ肉、明日に保存しとこうかなって」


「…………っ!」


そう俺が言うと、自分が食べていた量に驚く樹。


「……ご、ごめん……なさい……」


恥ずかしそうに頭を下げ、謝る樹。


「はは、良いんだよ。お腹減ってたんだろ?」


別に全く悪い気はしてない。美味しそうに食べてくれて嬉しいぐらいだ。


それに……


「樹は多分魔力量が多いから、その分食べる量が多くなるんじゃないか?」


現に俺は、前の世界より食欲が抑え目だ。


樹は前と比べ、かなり食べている、これはもうそういうことだろう。


「……」


考え込むようにして、納得する顔に変わる樹。



「よし、それじゃ片付けるか」


「……!」


洗い物は任せて、と言うようにポーズする樹。


はは、頼もしいな。

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