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増幅使いの這い上がり  作者: aaa168(スリーエー)
神野樹と、藍祐介
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旅、道中。

待っていた人には本当に申し訳ない。


明日も明後日も更新しますので!


異世界の旅は、初めて経験することばかりだった。



王宮から出ると、教科書でチラッと見た程度の中世ヨーロッパの街並みが広がっていて、鎧を着たり、ローブを羽織っていたり、変わった格好をしている人達が居たり。


何もかもが僕にとって変で、この世界ではこれが普通なんだろう。


藍君はこんな初めて見る人達にも関わらず、情報集めをしてくれた。


ここがどういった場所が分かった所で、これからギルドと言う所に行って、身分証明書なるギルドカードを受け取った。


僕達はこれで、コルナダと呼ばれる近くの町に移動出来る。



その間には、大きな森を抜けなければならなくて……ちょっと辛くて。


最初のスライムが溶けてどろどろになっていく様や、藍君がゴブリンと呼んでいた生き物が死んでいく様はその、結構気持ち悪かった。


藍君が全部やっつけてくれたけどいずれ僕もやらなきゃいけない。



……うん、まだちょっときついかな……



道中ゴブリンの集まりの攻撃もあったけど、なんとか藍君がやっつけてくれて、僕達はコルナダに着いた。


街並みはそんなに変わらないけど、初めての旅のゴールだ、凄く達成感があった、僕何もしてないんだけど……




――そして、今。



「……」



目の前には、ベッドに座る藍君がいる。


考えてみればそりゃそうだ、僕が無理を言って二人で旅してるんだし、わざわざ二人分の部屋をとるなんて勿体無い。


でも、やっぱりその……『意識』してしまう。


そんな状態でお風呂に入っても、全く頭は冷えず。


というか、藍君が僕の身体をその、じっと見てるんだけど……いや嬉しいんだよ、でも恥かしい。


藍君に見られて、僕の鼓動はどんどん早くなっていく。


「樹、こっち来てくれないか?」


唐突にそう言う藍君。


鼓動が早まるのを抑えつつ、僕は藍君の隣に座る。


「あー、明日は冒険者ギルドに行って――」


―――――――――――――――――――――――


いつものように普通の会話が始まり、僕は大分落ち着けた。


やっぱり藍君の声は落ち着く。



「それでその、信用してくれてるのは嬉しいんだけどさ。ちょっと無防備かもしれないぞ?」



話題を変え、そう言う藍君。何のことだろう?



「その……なんていうか、樹って可愛いだろ。正直言うと、一緒の部屋ってだけで――」




――い、今――可愛いって言った?言ったよね、ど、どうしよ――




だ、駄目だ、顔が熱い。今僕、凄い事になっちゃってる。か、隠さなきゃ――



「……ってあれ?」



僕は咄嗟に、ベッドに顔を埋める。藍君は不思議そうに呟くが、しょうがない。


本当、凄く、ひ、卑怯だよ……



「………………」



僕は、この熱が冷めるまでこうしている事にした。



でも――全然熱は冷める事は無く、むしろぶり返して来た。


もう、藍君のばか……



「…………」



黙って僕は藍君のふとももを叩く。


いつもならこんな事絶対しないけど、僕の頭はもうまともに動いていないみたいで。


ペチペチと響く音。何かその音のおかげで、ちょっと落ち着いて――



「膝枕か?……はは、いいけど俺の足、そんな気持ちよくないぞ」



藍君が放ったその唐突な台詞に、たまらず僕の身体は反応する。



え、え?なんで今膝枕なの?いや、その嫌じゃないよ、でもその急すぎて心の準備もまだ……



落ち着きなんて全く戻らず、僕の思考はパンクする。



「前のお返しって事だよな。ほら、きていいぞ」


トントンと叩き、僕を急かす藍君。


お返しって?いや、もう考えるのはやめよう。藍君も待ってるんだし。



……。



あ、藍君の膝枕……だ、だめだ。僕の今の顔は絶対今、藍君に見せられない。


し、しつれいします。



「……」



鍛えられて、少し硬い藍君の太もも。


僕にとって至福の時間が流れていって。


いつのまにか、さっきまでの胸の動悸はゆっくりと治まっていった。



「樹」



僕が落ち着いて来た時、藍君が僕の名を呼ぶ。



「後悔とかしてないか?俺と旅するって事に」



それは、藍君の口から、自然と溢れ落ちるように……不安そうで、心配そうで、僕の事を伺うような。



「……僕は……」



藍君はもう、とっくに僕にとって一番なんだ。


その質問の答えは――とっくに昔の、ずっと、『前の』世界から出ていて。



「藍君と……その……これからも一緒がいい、です」



……でもそれを口から発するのは別な話であって……すごく恥ずかしい。


気付けば僕は、恥ずかしさで藍君の足に顔を埋めていた。



「そっか。よかった。……樹」



不安や心配が解けたように、柔らかい口調で言う藍君。


本当に少しの沈黙を挟んで。



「……その、俺がお前を守るからさ。これからも一緒に頑張ろう」



そう、藍君は言った。


僕の頭は、その台詞を理解しようとしても考えるほどに沸騰していくよう。


本当に卑怯だ、藍君は。こんな台詞を急に言うなんて。こんな僕に、そんな事を言ってくれるなんて。



「……樹?」



気付けば僕は、押さえのきれない恥ずかしさで……下手な寝たふりなんてしちゃっていた。


抑えようとしても、どんどん熱くなる僕の顔。


こんなのじゃ、絶対――



「はは、おやすみ」



……ば、ばれなかった。



「よっと」



藍君は僕を優しく下ろす。


そしてそのまま……僕のベッドに。


あ、あれ?これもしかして僕、藍君のベッドで夜を過ごすの?



「……」



冷めない頭を、無理やり覚まして考える。


いや、そりゃそうだ。じゃなきゃ、藍君と僕が、い、一緒に……


……何考えてるんだ、僕は。



《「……その、俺がお前を守るからさ。これからも一緒に頑張ろう」》



不意に思い出す、ついさっきの出来事。


熱を逃がすよう、僕は異世界の無駄に大きい枕を抱きしめる。


うう……僕、寝れるのかな。



――――――――――――――――――――


そんな心配を他所に、僕の身体は疲れに正直で……気付けば朝になっていた。



気付いたらもう二時でした……今日の夜また出しますのでよろしくお願いします。

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