宣告
朝。今日から戦い方を学ぶための訓練が始まる。
俺達が集まったのは、王宮から少し離れた騎士の訓練場である。
ちなみに、服装は王国から配布された訓練着?を着ている。
周りを見渡せば、騎士が訓練を行っているようだ。また、昨日見た魔法使いの方々もこっちを見学に来ている様子。
俺達が全員集まったことを確認すると、訓練していた中の一番偉そうな騎士の人が俺達の前にやってきた。
「よう!堅苦しい挨拶とかは俺の性分じゃないんでやらねーぞ。俺の名前はアルゴン・フランベルク。一応この国の騎士団の副隊長をやっているものだ。団長はちょっと今忙しいんでね、今は代理で俺が訓練を行うことになった。よろしくな!」
挨拶が終わると、アルゴンさんは見学している魔法使いをチラッと見ると、こっちに向き直り。
「さて、まずお前らにはそれぞれの能力を調べさせてもらおうと思う。」
そういってアルゴンさんは、大きい透明の板を取り出した。
「これは魔力量、魔法適正を調べることができる便利な代物でな。名前は忘れた」
おいおい、大丈夫か……
「大昔、どこかの魔法国家が開発したらしいんだがな。魔力量は分かると思うが、魔法適正を調べるってことは、そのままの意味の魔法を使う適正がどれぐらいあるかどうかと、基本の火属性、水属性、土属性、風属性、聖属性のどれに適正があるか調べるってこった。」
「座学で詳しく説明すると思うが、大雑把にいうとその適正がないとその属性魔法は使えん。さっぱり諦めるんだな。まあ属性がどれも使えないってことはないはずだ。なんたって勇者様だからな。一般的には、魔法は誰でも使えるが、属性魔法は百人に一人。」
「また、固有能力ってのも存在する。そうだな…王女マーリン様は毒魔法、騎士の中にも装甲魔法ってやつがいた。それらは決まって強力な物が多いんだが、これに関しては五千人に一人が持っているなんて言われている。物によっては世界で一人しか使えない固有能力なんてものだってある。まあ持ってたら喜んでいいぞ。歴代の英雄ってのは、基本固有能力持ちだったからな。」
そう言うと、アルゴンさんは周りを見渡していく。
固有能力とか、魔法とか、英雄とか――ファンタジーっぽいものばっかりだな……
まあつまり、その魔法適正とか固有の魔法とかで俺達の力が決まる。
……もしこれで、能力無しなんて言われたらどうなるのだろうか。
そのまま捨てられるのか?そう考えると恐ろしいが……きっと大丈夫……だよな?
「さて……さっそくだが、時間も無いんでな。順番に調べていく。えー、そこから順番にこっちに来い。」
おいおい、その順番だと俺が最後じゃないか……?まあいいか。
最初は俺が話した事のない男子だった。仮に男子Aとしよう。さてどうなるかな…
「まず、この板のここに手を置いてくれ。それから少し待つと結果が出て……おお!これは出たな!いいんじゃないか?」
そう言ったアルゴンさんの目にある板には、このように表示されていた。
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魔力量 1000000
魔法適正 8
属性魔法適正 水7 火8 風8 土9
固有能力 『土属性魔法強化』
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「こいつを例に説明するぞ。魔法適正は10が最高で、これが高いと詠唱が短く済んだり、属性魔法以外の魔法をうまく扱えるようになる。次に属性魔法適正だが、これも10が最高で、この場合は水、火、風も使えて、土に関しては一級品といったところだ。最後に固有能力だが……言わなくても分かるとおり、土属性魔法が強化される。詠唱はいらなくなり、魔力効率も大幅に上がる。名前は地味だが、素晴らしい能力だ。」
言い終えたアルゴンさんは、はっと思い出した顔をして、
「そういや言い忘れていたな。一般人の数値は、魔力量3万、魔法適正3、属性魔法適正は2。固有能力も当然無い。魔法使いだと、魔力量は十万、魔法適正は6、属性魔法適正は1属性で5が平均ってとこか。まさか最初からこんな数値をたたき出すとはな……我々にとっては羨ましいばかりだ!」
はっはっは、と笑うアルゴンさん。たしかにこれは可笑しい。チートもいいところだ。
これは俺も期待できるんじゃないか……?そう考えるとニヤニヤしてしまうな。
自分にそんな力があるかもしれないと考えると、嬉しくなってしまう。
見ろあの男子Aの姿を。なんてニヤニヤっぷりだ。
それからも続々とチート野郎が生産されていく。男子も女子も関係なく数値がおかしい。
そして、隼人の番になったのだが……
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魔力量 10000000
魔法適正 10
属性魔法適正 水9 火9 風9 土9 聖10
固有能力 『聖剣使い』 『神聖魔法』
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まさしく主人公だ。いやゲームだとバランス壊れるなこれ。アルゴンさんも黙り込んでいる。
「最初見たときから何か感じていたが…まさかこれ程とはな…この数値だけでも異例だが、固有能力二つに……それに『聖剣使い』とは。おいヴァレン!このことを国王様に伝えてこい!」
アルゴンさんがそういうと、騎士の一人が頷き走っていった。
主人公補正とでも言いたいのか?本当に羨ましいもんだよ。
「気を取り直し、次だ!」
次は雫。雫は、隼人の後だというのにまったく物怖じしていない。
そして雫が板に手を触れると……
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魔力量 50000000
魔法適正 10
属性魔法適正 水10 風8 土8
固有能力 『氷魔法』
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「ふむ…魔力五千万とは…お前も相当な数値だが、それに劣らず固有能力がかなり強力だ。氷魔法ってのは大昔に存在したと言われる、魔王が使っていた魔法でな。この魔法適正なら必ず使いこなせるはずだ――いやいや、全く恐ろしいな……」
雫もすげえな……さっきといい、二人はかなり異例だ。周りとすべての値がかけ離れている。
それからも様々なチートが生み出される中、樹の番となった。
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魔力量 100000000
魔法適正 9
属性魔法適正 水10聖10
固有能力 『回復魔法強化』
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「ま、魔力量一億だと?」
アルゴンさんが固まった。
「異例すぎる…しかもこの魔力量で回復魔法強化とは。回復魔法は魔力を大きく使うんだが、場合によっては休む暇なしに回復魔法をかける必要がある時がある。それで魔力切れを起こしてそのパーティーは壊滅って事はよくある事なんだがな。この魔力量、それにこの固有能力。お前に関してはその心配はいらないようだ。……次きてくれ!」
樹がべた褒めされてて俺も嬉しいよ。うん。俺の番か…さてどうなる。
「お前には期待してるぞ。なんたって最後だからな。」
緊張するからやめてくれ!あー……大丈夫かな……
そうして出てきたのは。
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魔力量 1000
魔法適正 3
属性魔法適正 ――
固有能力 『増幅使い』
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「……うん?俺の見間違いか?……すまないな。もう一回やり直してくれ。」
何度やり直しても、『それ』は変わらなかった。
後ろからは、何あれ?とかあいつ弱くね?とか可哀想とかいう声が聞こえてくる。
不安と焦燥で、冷や汗が背中を伝っていく。
「……」
アルゴンさん!なんか言ってくれ!
その思いがアルゴンさんに伝わったのか、はっとしたように俺に向き直ると、
「属性魔法適正や魔法適正は仕方ないが、魔力量は鍛錬で伸びるもの。この数値は低すぎるが…それでもだ!固有能力がお前にはある!聞いた事がない能力なんだが、この名前からすると人体、魔法に干渉して、それを強化するものだと考えられる。お前は魔力量を増やす事を目標にしろ!おそらく攻撃は無理だが、支援に関しては一級品の能力だ!落ち込むんじゃないぞ!」
アルゴンさんが必死に慰めてくれた。固有能力ってのは、本当に凄いものなんだな。
というかこれなかったら本当にただの一般人じゃないか……はは、それ以下かな。
後ろの声も収まったみたいである。……アルゴンさんのおかげだ。アルゴンさんには感謝だな。
……俺は支援しかできないが、それでも。それでも役に立てるならそれでいい。
樹も俺なんか比較にならないぐらいだったし、よかったさ。
そうだ、そう思うようにしよう、……はー、かっこ悪いなあ俺。
うーん…書くのってやっぱり難しいですね。