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増幅使いの這い上がり  作者: aaa168(スリーエー)
神野樹と、藍祐介
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『回復魔法』

ブクマ本当にありがとうございます。

朝、久しぶりに夢を見た。


前の世界で、藍君と一緒に帰っていた光景。


頭がまだボーッとしてて、その夢が現実じゃないかって。


まさかと思い、昨日したように水の玉を出してみた。


手のひら一杯の大きさの水の玉が、僕の手に浮かぶ。


不思議な感覚が、夢から現実へ実感させた。


僕はもう、今の世界の住人なんだよね。



……もう少しだけでいいから、夢の続きが見たかったな…………



―――――――――――――



授業の時間になって、まず座学が始まる。


その後は属性魔法事に別れて実際に魔法を学ぶらしい。選ぶ属性は各々で決めてとの事。


僕は……聖属性かな?


座学はすぐに終わり、属性によって先生が変わるようで続々と四人の先生が入ってくる。


聖属性はマール先生担当みたいで、聖属性を学ぶクラスメイトと僕はマール先生に付いていくことになった。


……というか、藍君はどうするんだろう?


属性魔法使えないんじゃ――



「――先生!俺属性魔法使えないんですけど!」



声を上げる藍君。


マール先生は、藍君が属性魔法を使えないと知っていなかったみたいだ。


藍君、大丈夫かな……


どうやら藍君だけ魔力を増やす訓練をするみたいで、完全に別行動となる。


僕達は、そのまま藍君を置いて教室から離れた。


―――――――――――――――



「着いた着いた!ここが魔法訓練室だよ!」



マール先生に連れられてやって来た、その場所は……ドーム状で大きい建物だ。



「騎士団の人達が訓練してるような場所じゃないっていうのは分かるかな?……まあ万が一魔法が暴走しても大丈夫な場所って感じ!皆はこれからここで魔法の訓練を行うから、覚えててね!」



中は白い空間がずっと続いていて、とても広い。



「さて……無いと思うけど、魔力が枯渇してくると気分が悪くなるから、もしそうなったら休憩してていいから!」



魔力は消費する物であり、この世界ではそれが無くなれば倒れてしまうらしい。


その前兆として身体の痛み、もしくは魔力酔いが起こるらしいけど……



「まあ、魔力百万あればそうそう倒れないよ!本当に羨ましいなー、元々そんな魔力量なんて」



そう言うマール先生。


僕達は本当に規格外らしい。


マール先生はコホンと咳をする。



「さて、それじゃ魔法を実際に教えてあげるね」



そういうと、マール先生は僕達に話しかけるのを止め、後ろに手を掲げる。



「光よ、我の元へ集い――敵を射ぬく光矢と化せ」



マール先生の大きく手を掲げた上に、光の粒子が集まり、やがて白く輝く矢と形を変えていく。


僕達はその美しさに目を奪われ、声も出ない。




「『ホーリーアロー』」




そう唱えると同時に光の矢はマール先生の向いている方の壁に飛んでいき、壁にぶつかると消えた。



「……ふふ、綺麗でしょ?君たちにはまずこの初級魔法、ホーリーアローを覚えてもらうからね!」



向き直りそう言うマール先生。



「初級魔法っていっても、そこそこの魔法使いなら詠唱なしで発動出来るから結構強いんだよね!」


それを言うと、マールさんははっと思い出したような顔をし、再度口を開いた。


「あ、そういえば階級について言ってなかった!えっと……」



マール先生いわく、何に対しても強さにはその部門によって階級があるらしい。


魔法使いは、初級、中級、上級、星級、天級、帥級、王級、神級とある。


『帥級』からは一つの国に五人といれば多い程。


名の通り、大国の軍と同等以上の戦力と言える。


属性魔法もそれにならい、難易度によってその階級は付けられるようだ。


先程の『ホーリーアロー』は『初級魔法』と言うように。


『星級魔法使い』まで行けば魔法使いとして胸を晴れるらしいが、上はまだまだある。


ちなみにマール先生は天級らしい。多分、これは凄い事なんだろう。



「まあそういうわけで、君たちには天級ぐらいを将来目指してほしいなーなんて!勇者様だしねー」



ニコニコと笑いながら、そう僕達に言うマール先生。


これは、彼女と同じぐらいまで、魔法を登りつめると言う事。



「まあ慌てないでいいよ、とりあえず私が上級魔法までキッチリ教えてあげるから!階級についてもまた詳しく教えてあげる!」



そうして――僕達の、魔法訓練が始まった。



―――――――――――――――




初級魔法……『ホーリーアロー』、『ホーリーボール』、『ホーリーサイン』。


どれも初めて見て、初めて体験するものだ。


それでも僕達は……



「光よ、我に力を!『ホーリーアロー』!」



「光よ、我に宿れ!『ホーリーボール』!」



「光よ、我を照らせ!『ホーリーサイン』!」



出来て、しまった。


クラスメイトは口々に詠唱し、魔法を完成させている。


マール先生、今日はホーリーアローしか教える気が無かったみたいだけど余りに順調で二つの魔法も教えてくれた。


ホーリーボールはバスケットボール程の玉を相手に放つ遠距離攻撃魔法。


ホーリーサインは、頭上に光を放つ玉を生み出して辺りを照らす魔法。


どれも初級魔法だけど、大事な基本魔法だという。


今回は、僕の場合イメージして言葉を頭で思い浮かべるだけで魔法が発動してくれた。


所謂、無詠唱というものだというそうだ。


僕は喋るの苦手だから、適性が高くて本当に助かったよ。



「皆凄いね!本当に魔法初めてなの?……教える側もこう吸収してくれると嬉しいよー!」



三つの魔法を全員完璧に出来るようになった時、マールさんはそう言う。


クラスメイト達は、その言葉に素直に喜んでいるようだ。



「明日はまた、朝いた場所に集合ね!」



その声と共に、僕達は散り散りになった。


マール先生と談笑してる人、部屋に戻ろうとする人、魔法を復習している人。


僕は……今日は早く寝ようかな。あ、先にご飯食べなきゃ。




―――――――――――――




ご飯は、早めに行って一人で食べた。藍君は……もう食べたのかな?


食堂を出て、藍君の事を考えていると、気付けば藍君の部屋の前にいた。


な、なにやってんだろう僕は。


そう考えつつも、気になっちゃって。


そんな状態のまましばらく扉の前で固まった後に、結局僕は自分の部屋に帰ってしまった。


逃げるように部屋に戻り、お風呂に入って、ベッドに入る。


初めての魔法訓練はあっというまだったけども、身体が思っていたより疲れていたようで……僕はすぐに寝付いたのだった。


――――――――――――――


翌日も、同じような流れで過ぎていく。


朝は昨日と同じように教室に向かい、マール先生の朝礼が終わった後、また訓練室に向かい魔法の訓練。


藍君は相変わらず別行動なようだけど、うまくやってそうかな?


ちなみに今日は中級魔法を習った。相変わらず僕達はあっさり習得していて、マールさんもご機嫌だ。



「さて!それじゃ今日はここまでにしよっか!それで明日の朝なんだけど……」



もう夕暮れとなった時、コホン、と少し咳をしてから、マール先生は口を開く。



「……ここじゃなくて騎士訓練場に集合ね!ちょっとしたテストするから!その、王女様来るけど緊張しないで!」



少しざわつくクラスメイト達。



「実は皆魔法の習得が凄いって言ったら、王女様の興味を引いちゃってね!はは、大丈夫大丈夫。今日やった魔法を御披露目してくれたらいいから、それじゃかいさーん!」



マール先生の掛け声と共に、一日目の魔法訓練は終了する。


あちこちで喋っている人、自室に戻ろうとする人。


テストって……藍君は……?大丈夫なのかな……


そんな考えが過り、思考に入ろうとした時。



「よっ!君魔力が一億の子だったよね!」



マール先生が、肩を叩いてきた。



「……?」



「ふふ、実は回復魔法強化ってのも中々珍しいんだー!その、簡単な回復魔法教えるから……ちょっとやってくれない?」



そう、頼むように言うマールさん。



回復魔法……もしそれを覚えられたら、藍君が怪我した時とか掛けてあげられるよね。



《――「ありがとな、神野」――》



お礼を言われた、あの時の事を思い出す。


……僕は、気付いたら縦に首を振っていた。


――――――――――――――――


頷いた後、マール先生に連れられて僕は魔法訓練室の隅に連れられている。



「ふふ、さて。私が今から教えるのは、初級の初級、聖属性回復魔法……『ホーリーヒール』だよ。回復魔法は、ただ魔力を送り込むだけじゃ絶対発動できなくて、イメージが大事なんだ」



やってみせるね、というと、マール先生は僕の胸の前に手をかざす。



「『ホーリーヒール』」



そう唱えると、マール先生の手から、ぼうっとした白い光が現れた。


光は僕の身体へ吸い込まれていき、やがてその光は消えていく。


身体を光が包み込むような感覚が、とても不思議で、心地良くも感じていた。



「ふー、これが『ホーリーヒール』ね。もしどこか負傷してたら、君の身体の傷が治るんだ。……この程度の魔法だと、治る量も少ないけどね」



見た目では、聖属性の魔力を放出しているだけだ。この放出に……『回復』という属性を追加すればいいのだろうか?



「さて、それじゃ出来るかな?イメージする時は……相手の身体を治療する、もしくは元の状態に戻すとか!」



僕が考えていたら、マール先生はそう言う。


相手……あ、藍君の身体を治療する、イメージ……


だめだ、恥ずかしがってたら。


藍君が、もしも怪我を負って、僕が治療出来なかったら、本当に最悪の状況なら、藍君はそのまま……


この異世界では……そんな事が起こってもおかしくない、そうだよね。



「……」



手を、マール先生の身体にかざして。


目を閉じてから、集中しマール先生を藍君と重ね合わせ。


藍君が、そこで怪我をしていて。


その怪我の傷を、僕が聖属性の回復の魔力で包んであげて、治療するイメージ。


僕はそのイメージが完成後……静かに、頭の中で詠唱した。





「――わっ!ちょ、ちょっと!あっ……だ、だめ、す、すとっぷ!」



魔力を放出してすぐ、マール先生の悲鳴にも似た声が聞こえた。


慌ててその魔力を止め、目を開けると……。





……紅く顔を染め、息を荒げながら僕の肩を握り締めるマール先生がいた。



「はあ、はあ……予想以上だよ。これなら足一本ぐらいなら再生するかも……」



肩で呼吸しながらそう言うマール先生。


どうやら失敗ではないみたい。



「は、はは……甘く見すぎてたよ、魔力量一億に、その固有能力。……ごめん、先戻る……」



そう言いながら、マール先生はふらふらしながら出口に向かっていった。





初の回復魔法は、成功……なんだよね?

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