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いつも読んでくださって、ありがとうございます。

次は来週かな、明日かもしれません。

「そうか」




それだけ言うと、アルスは剣を俺のスタッフへと向ける。




「お前は、その武器でやるのか?」




「ああ。これじゃないといけない」





「はっ……そうかよ、好きにしろ」




『これじゃないといけない』ってのは、何も愛着が沸いているからってわけじゃない。




《黒衝石って言ってね。とても頑丈で、しかも魔法を増幅させる特徴も持ってるんだ》




マールさんのあの言葉。それが確かなら……




「……『増幅』」




魔力をブーストし、目を瞑りイメージする。




俺が出そうとしている炎は、硬く、鋭い火。



アルスの刃へ対抗できる、そんな炎。



が、中々イメージが沸かない。当然といえば当然だが。




普通の火でやるか?いや、それじゃ駄目だ。


集中を解くため、一度目を開く。





そして、目に再度映る光景。





――これは……




「感謝するよ、アルス」




すぐ、近くに『それ』はあった。




「……ん?何だってんだ」




俺は、後ろの炎の壁に手を突っ込む。





熱く、硬い。不思議な炎。



色は赤黒い、濁った血のような炎。



この世のものではないような、地獄のような炎。





「『増幅』!」





簡単だ。


今俺が触れている炎をライターに灯せばいいだけ。



なのにどうして、こんなに魔力が減っている?




「『増幅』」




どうやらこの炎は、かなりの厄介ものらしい。




「『増幅』」




三回目の詠唱で、ライターにて現れるその火。




「ほう。で……そこからどうするんだ?」




面白い物を見るかのように、そう言うアルス。




「……」





考えろ。



俺のスタッフは、剣で言う刃の部分はほとんど全て切り落とされている。



そこだけ、『創れば』いい。そんなイメージを。





「『付加』……ぐっ」





身体へ纏うと共に、とてつもない熱が俺の身体を這いずり回る。



とてつもない熱、痛みが俺を襲った。



同時に、炎が身体から燃え盛っている。まるで、俺の体を食らうかのように。




「あああああああ!」




痛みで可笑しくなりそうになるのを、声で誤魔化す。



考えろ。イメージしろ。



俺ならやれる。




「……っ、駄目か」




詠唱しようとすると共に、魔力が、恐ろしい勢いで無くなっていく。



同時に身体を覆っていた炎は、少しずつ消えていた。



感覚で駄目だと判断し、詠唱を止める。





……無理か?いいや。




イメージはもう出来ている。




あとは、そう――『魔力』だけ。






目を、瞑る。






「……『増幅』、『増幅』……『増幅』。『増幅』、『増幅』『増幅』『増幅』!」






合計七回。濃密に描いたイメージと、詠唱は重なる。



魔力が溢れてくる感覚を確かに覚えながら、俺は立ち尽くす。



これまで何回、唱えてきただろうか。




身体の痛みや気持ち悪さは、もう限界を越えたのか消えていた。





まあ、関係ないか。





「食らえよ。これで足りないなんて言わせないから」





胸に、スタッフの斬られた断面を押し付けた。



アルスの剣筋のせいか、断面は鋭く、胸を突き刺し血が流れる。




俺はそれに構わず、更に奥へと押し付けていく。






――ここが一番、近いだろ?






イメージするのは、剣。




炎を鋼とし、鍛錬して、形を整え、研ぐ。




そして創られる、炎の刃。










「『創造(クリエイト)』」










イメージと詠唱が合致し、絡まっていく。


胸から魔力が消えていくのを感じながら。


俺は、ゆっくりと持ち手を胸から引き抜いていく。








「……ああ、これだ。俺のイメージしたのは」





俺が目を開けると、漆黒と紅が混じったような色の『鋼』が、斬られた断面から轟々と燃えて。


刀のように伸びたその『炎』は、鈍く光っていた。


炎とも鋼とも言えるそれは、間違いなく刃として形を変え、存在している。





「ありがとう、(こた)えてくれて」






物に心なんて無いなんて分かってはいるが、それでも俺は。


斬られても尚、俺と戦ってくれるスタッフへと礼を告げた。

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