蒼と赤
上空で、落下していく俺。
この一撃の為に、蒼炎の火力を上げなければ。
残り少ない魔力を搾り出す。
「ぐっ……」
激痛が俺を襲う。
まだ、倒れるわけにはいかない。
「『増幅』」
魔力をブーストし、さらに蒼炎に注ぎ込んだ。
そして、スタッフを構える。
上空からの勢いを乗せて、アルスへと。
「らああああ!」
叫び、俺はアルスへ振りかぶった。
アルスは、まだ動かない。
そして……スタッフを振り下ろした、刹那。
封じ込められた尋常ではない殺気が蓋を開けられたかのように、鞘から抜かれた剣と共にこちらを襲った。
そして、アルスの燃え上がる剣が、俺のスタッフへと。
俺の蒼と、アルスの赤が交わる。
「……まあ、こんなもんだな」
――それは一瞬だった。
赤い軌跡は、俺のスタッフを襲い……
『斬られた』。
スタッフの、持ち手の部分より上は全て無くなり、地に落ちる。
唖然とするしかない、何も攻撃が出来ない。
「おい」
アルスの、声。
「目、覚ませ」
顔面へと襲いかかろうとしている、アルスの蹴り。
「ぐっ!」
炎を纏ったその脚は、反射神経により咄嗟に構えた腕によってガードされる。
ガード、したのだが。
俺が見えている今の風景は、アルスからどんどん離れ、前へ進む。
俺が物凄い早さで吹っ飛んでいるという事に気付いたのは、聳え立つ炎の壁にぶち当たった時だった。
「久々に、楽しかったぜ」
そう言いながら、近付いてくるアルス。
動かない、動けない。
腕が、脚が、頭が。何もかも使い果たしたような。
「諦めろ」
その言葉は、今の俺には物凄く響いてくる。
………………俺は。




