初めての会話
正直こんな見てくれると思っていませんでした。本当にありがとうございます。
そうして俺達は戦うことになったのだが……当然俺達は平和の国NIPPONで過ごしてきたのだ。
当然『戦う』なんてこととは無縁であったし、戦う方法なんて分からない。
このままだと、普通の動物にさえも太刀打ちできないだろう。
この前野良犬にビビっていた俺達に戦うなんて出来るんだろうか。
そういったことは王国側も分かっているようで、とりあえず1ヶ月ほど座学や鍛錬を通して俺達を使えるようにするようだ。
俺達を受け入れるのは王都にある王宮で、そこでは数多くの優秀な魔法使いや騎士がいるという。
「とりあえず今日は疲れているだろうから、明日詳しい事を騎士団長の方から伝える。今日はゆっくり休んでおいてくれ。それと今夜は晩餐会を開く。違う世界の料理だがきっと口に合うと思う。ぜひ楽しんでいってくれ。……それでは頼んだぞ、シュタイン」
そんな事を王様は言い、執事？っぽい男の人へ目配せする。
「始めまして、シュタインと申します。これから勇者様方のお部屋へ案内いたしますので、こちらへどうぞ」
俺達は、そのシュタインという人に着いて行く。
―――――――――――
そうして、各個室部屋へ案内されたあとは自由時間となった。
俺達の部屋は、もちろん入った事はないが、お高いイギリスのホテルといった感じだ。
全然落ち着ける気がしないな……
「……はあ……」
流れるように時間が進んだが、やっと自分達だけで話せる機会だ。
クラスメイト達は、各部屋に集まってこの状況について話している人たちが多いだろう。
さて、俺は……一人で過ごしてもいいんだが、樹が心配だ。
春樹や雫とも話したいんだが、あいつらは隼人と一緒にいるだろうしな。
そんなわけで、樹と何を話すか考えながら俺は樹の部屋へとむかったのだった。
――――――――――――――――――――――――――――
コンコン、と樹の部屋をノックする。
何も言わず、樹はドアを開けてくれた。樹は、部屋にある床に座るようだ。
俺も靴を脱いで、樹の前に座る。
どうやら雫の言うとおり、嫌われてはいないみたいで良かった。
一応、この部屋は今男女の二人っきりなんだけどな…結構信頼されてるの……かな。
「樹、あれから大丈夫か？ほんと現実味がないよな、夢かなにかじゃないかと今でも思ってる」
「…………」
むにっと、抓られる感覚。
頬が痛いんですが。あれか？これは夢じゃないって言いたいのか？
「……」
「は、はは、これは夢じゃないな。俺達いったいどうなっちまうんだか。」
何故かいつもより様子が変な樹。
積極的、というか……
「……」
まあ顔色も特に変わってないし。意外と動じないタイプか？
何かふわふわしているような気もする。
「異世界に着ちまったけど、樹は結構心配じゃないみたいだな。良かった――」
「――その……」
……
非常に……本当に唐突に――
――い、樹が喋った。
想像よりもずっと、可愛い声。
ハッとする。
「ど、どうした？」
「……」
……あ。また黙ってしまった。
言葉を間違えたか？
せっかく樹が喋ってくれたのに！
「ど、どうしたんだ？」
言い直す俺。樹は顔は下に俯き、表情が分からない。
「あ……ありがと……う」
ふと俺に向くと、小さな声で、それでも必死に聞こえるように樹は言った。
「……へ」
思考が一瞬停止する。
……え？そんな……俺、感謝されてるのか？
目はいつものように髪の毛で見えないが、恥ずかしいんだろう、顔がどんどん真っ赤になっていく。
――不味い。
『二人だけ』。
『頬を染める樹』。
『可愛い声』。
意識してしまう。樹だって、女の子だ。
この状況に――俺なんかが耐えられる訳がない。
心臓の鼓動が、あり得ない程にバクバク言っている。
俺は……これ以上いたらおかしくなってしまう。
不味い。
「い、いえいえ――どういたしまして！」
俺は、気づいたら靴を履いてドアを開け、閉めて自分の部屋へ走った。
そしてベッドの枕にジャンプ。
「はあ……やっちまった」
ため息と同時に、先ほどの後悔も出ていく。
俺ってこんなヘタレだったんだな……
後でもういっかい会いに行くか。さすがにあれは駄目だろ。でもどう言えば……
コンコン、とノックの音。
え？樹？え？嘘だろ、まだだめだって！あ――ど、ドアが開いていく……
そしてゆっくり扉が開き、外からはメイド服をきた樹が――
「失礼します。晩餐会の時間となりまし……どうしました？」
「は、はは、ははは、ですよねー……」
普通のメイドさんでした。
……いや、メイドって初めて見た気がするな。
「……？どうかされましたか？時間となりましたので、案内いたします。どうぞ。」
そうしてメイドさんに着いていき、晩餐会の会場へと向かったのであった。
