宿
忙しくて中々かけませんでした……すいません。
門の近くまで行くと、門番さんに凄く見られる。
なんかこうチラチラみる感じ。王都の門番と違ってドシッとしてないな。
「あのー、入っても良いですか?」
「っ!すまないな、子供がどうしてこんなところに?抜け道でもあったかな?」
声をかけると、オドオドした感じで返してくる。
ああ……そういや俺達この見た目だと中学生ぐらいの年齢に見られてたんだっけ。
「あー、すいません一応冒険者なんですけど……」
「えっ!君たちが?…………うん、本当だ……」
俺のギルドカードを見せると、信じられないといった表情でギルドカードと俺を見る門番さん。
「あっ、君は流石に違うだろう?妹さんかな?」
後ろに隠れ気味な樹を見て、そういう門番さん。
「……っ」
い、妹かあ……樹唖然としてるし。
「……え?違うのか?…………あ」
樹もギルドカードを出すと、また信じられないというような顔になる門番さん。
「あの……通っても良いでしょうか?」
まだ驚いてる顔の門番さんにそう言う。
「う、うん。ごめんね!そうだ、冒険者なら良い宿屋知ってるよ、教えようか?」
「本当ですか!ありがとうございます」
……結構いい人っぽい?
――――――――――
あれから門番さんに少し情報を貰ってから、門を開いてもらった。
「元気でね!頑張れよ少年!」
手を振りながらそう言う門番さん。
うん、いい人だった。
出会いに感謝しつつ、前を向く。
街の風景は結構王都と同じ感じだが……あっちで見なかった人もいる。
そう、『奴隷』だ。
当然初めて見たが……これは中々キツい。ボロボロの服、死んだ目で傷だらけの足を引きずりながら、主であろう者についていっている。
そんな人が少なからずいるから、嫌でも奴隷と分かってしまった。
元の世界でも奴隷制とかそういうのがあったのは知ってるが、直に目にするのは全く別だ。
おそらく奴隷を売る店も有るんだろうが、近付きたくないな……
「樹、大丈夫か?先に宿に行こう」
「……」
頷く樹。
さっき門番さんが言っていた宿は……名前を『冒険の小宿』。名前通り、冒険者に優遇してくれるという。
場所はこの先真っ直ぐ行くとあるらしい。
道行く人は王都に比べ少ないが、冒険者っぽい人は多く歩いている。
冒険者の屈強な男達の集団は怖いが、少しずつ慣れてきた。
それでも体が当たりでもしたら怖いので、気を付けながらしばらく道を進んでいくと……目の前に、目的地が現れる。
看板が大きく立てかけてあったのですぐわかったが、それにしても大きい宿屋だ。
外観はさっぱりとしていて、ざっと三階ぐらい。
そのまま中へ入り、見渡してみる。
中は落ち着いた茶色を基点としたいい感じの色合いだ。机や椅子が沢山あるのを見ると、食堂かな?
少ないが人があちこちにいて、見るからに酒に酔ってる人もいるのを見ると、酒場でもあるようだ。
そんな感じの感想を抱いていると、厨房からやわらかい雰囲気のおばさんが出てきて、声をかけてくる。
「いらっしゃい!えらく小さいが……兄弟で旅かな?ご飯かそれとも泊り、どっちだい?」
うん、こういう時は……
「すいません、こういうものです」
なんか警察のアレみたいになってるが……まあいいか。
「ええ、あんたら冒険者だったのか!ちっさいのに……まあ確か、うちに来るのは殆ど冒険者だしそりゃそうだね。ごめんよ」
俺が出したのは、ギルドカードだ。見せるだけで冒険者って分かるの超便利。
「はは……いいですよ、よくいわれます。泊りでお願いしていいですか?」
「はーい、それじゃ二人で千アゼルね。部屋は……」
あれ、そういえば『兄弟』ってのは否定して無かったような……
「兄弟だし、二人一緒でいいね!えっと二階の211号室が空いてるからそこがあんたたちの部屋。あとご飯の時は鐘が鳴るから、降りてきてちょうだい。時計でいえば大体十五時ぐらいかな、味は保障するから、楽しみにしてなよ」
完全に言うタイミングが無くなってしまった、まあベッドが一つとかじゃないならまあいいか……いいよな?
あとご飯が楽しみです。
「分かりました、楽しみにしてますね!それじゃ早速部屋行きたいんですけど……」
「はいよ、これが鍵だ」
鍵を預かり、階段を昇る。
樹、一緒の部屋だけど嫌な感じでは無さそうかな?
「……」
うん、特に変わらず平常運転だ、良かった。
―――――――
俺たちの部屋につき、辺りを見渡す。
ベッドが二つと洗面所ぐらいしかないかなり殺風景な部屋だが……こんなもんだろう。
荷物を下ろして、
「あー!やっと着いた!」
ぐーっと背を伸ばし、ベッドへダイブする。
「……」
樹もベッドに座って、ちょっとした放心状態だ。
腕時計を見ると、五時半頃。この世界で言うと一五時前ぐらいだな。
それじゃ、もうそろそろ飯時だよね。
「樹、腹減ってるか?」
コクコクと頷く樹。
うん、いつもより勢いがある気がする。
今日は昼はなにも食べてないし、色々大変だったしまあお腹が減るのは当然だろう。
あと同時に疲れもかなり来てるため、お互い何もする気が沸かない。
そんな感じでお互い、何もする事なくぼーっとご飯の鐘がなるのを待っていた。
―――――――――――
「……!」
鐘がなりました。
目覚めたように俺達は反応した後、食堂へと向かう。
結構人がいたが、空きはある。二人用の小さな机に座って、ご飯が来るのを待った。
俺達以外は本当に図体のでかい男、女の人が殆どで、結構注目される。話しかけられることは無かったが。
「はいよ。ふふ、待たせちゃったかい?上手いから味わってくいなよ」
しかし、料理が運ばれてからはそんなことを気にする暇もなくなった。
運ばれてきたのは、異世界では定番?のシチューとパンだ。
一口頂くと、口の中で濃厚で優しい旨みが広がっていき、同時に肉が、野菜がほろほろと崩れていく。
下味の胡椒がまた食欲を掻き立てるので、もう止まらない。
……気がついたら、皿は空になってしまった。
樹もホクホク顔で、食後の水を飲んでいる。
「上手かったろ?毎日来てくれていいからね」
いつのまにかおばさんが来て、そう言いながら机の上を片付けてくれる。
「はは、思っていたより美味しくてびっくりしましたよ。明日もお願いします」
「そうかいそうかい、料金は明日また頂戴ね」
そう言いながら食器を持って厨房へと戻っていくおばさん。
「さて……俺達も戻るか。樹」
「……」
ちょっと樹の顔が赤いような……気のせいか?




