表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/127

蒼炎

駆け出すと共に、身体中に宿る火を、俺の腕へと収束させるイメージを。





「『集』」





唱えると共に火は、身体から一度離れて腕へ集まり。



集まったそれは炎となって、俺の腕で蒼く燃え上がり、立ち昇っていく。



魔力の増幅により、消耗していく意識を繋ぎ止め、その腕を振りかぶった。





瞬間、厚く、高い波が俺を覆い、視界が真っ暗になる。






――この壁を、ぶち破って見せる。





波へもう飲まれる程になった時。



俺は蒼く燃える拳を、波へと出せる力の限り振った。





「ぐっ!」





拳が水に触れた瞬間、とてつもない音と衝撃が、俺を襲う。




正真正銘、これが、最後。




――今こそ、俺の出せる力、全てを。




魔力を限界まで引き出せば、炎が俺に応えるように、蒼く燃え上がっていく。




……これなら。




俺は、そのまま『蒼炎』を振り抜いた。





―――――――――――



炎と、水の衝突。



爆発音と共に、目の前の壁は消え去った。



大量にあった水はもう、全て無くなっている。






……ギリギリ俺の勝ち、か。


俺は丁度、魔力が尽きたらしい。


腕の蒼炎が、役目を果たした様に消えていく。



「っ!」



同時に俺を、激痛が襲った。


当然だろう、魔力はもうほぼ0だろうしな。



……だが、しかし。



まだ、倒れるわけにはいかない。


激痛に耐え、なんとか意識を持たせる。




目の前には、唖然とした顔の山本と、こちらを見る樹。



樹は、まだ泣いているように見える。




……さっさと、終わらせるか。




俺は、歩く。



「は、はは嘘だろ、おい」



虚空に嘆く山本。




「なんだよ今の、何が起こったんだ、ふざけんじゃねえ……くそが!藍お前何やったんだよ!俺のあの魔法を返せるわけねえ!」



「……」




狂ったように叫ぶ山本へ、無言で近づく。





「お前なんて、魔法適正も何もかもゴミで使えねえくせに!魔力量も固有魔法も――」



「――歯、食いしばれよ」



拳を握り締め、騒ぐ山本の顔を思いっきり殴る。



「がっ!」



悲鳴を上げ、転がる山本。


ふと、後ろを振り返る。



……あの二人組は、もういないか。



逃げたんだろう、扉が開いている。




「くそっ……くそっ……」




転がったままの姿勢で、睨んでくる山本。


その『視線』は、見覚えが有った。



「……お前か、ずっとこっちを見ていたのは」



「っ……」



そう告げると、黙り込む山本。




……まあ、いいか。



俺はもう流石に、そろそろ限界だ。





「樹に手を出すな」





そう告げてから、転んだままの山本へ近づき、背中に手を当てる。





「なにを――」





お前ももう、魔力は限界だろう?



「『増幅』」



本来の使い方とは違うが……魔力の増幅の、副作用である。



言い様のない気持ち悪さが、山本を襲っているはずだ。



直に魔力が尽き、山本も意識を失うだろう。




……はは、本当に、『支援』なんて到底無理だな。





「……っと」





気が抜けたのか、一気に意識が削れていく。


ふらつく足を進ませ、樹のいる方向へ。


だがいつの間にか、樹の方からこっちへ来ていたようで。


目の前の樹は、もう涙を流しておらず、こっちを真っ直ぐ見ていた。




「い、つき……」




なんとか、声に出す。



「お前は、俺が――」



意識はもう限界だった様で。



言い終わる前に、俺は前に倒れてしまった。



それを樹に、抱き止められる。




安心する温かさが、俺を包み込んでいく。







……そのまま、俺の意識は遠退いていくのだった。









「――藍、君、ありがとう――」









暗闇の意識の中で、俺はそう聞こえた気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ