対峙
部屋を抜け出し、走りながら思考する。
魔法訓練室ってのは……いつもクラスメイトが教室から向かってた場所だろう。
それなら、距離はまだまだあるはずだ。
急ごう。
――――――――――――――
教室に一旦着いてから、今まで行ったことのない領域へと足を運ぶ。
魔法訓練室って言うんだから、大きさも中々だろう。
長い廊下をしばらく走った所で、大きいドーム状の建物がある所に出る。
ここだろうか?
「はあ、はあ……」
ここまで全速力で走ってきたため、息が切れる。
そして、いまだに樹の姿を見ていない。
焦りが俺を覆っていくのを感じる。
――樹、頼む。何もされてないよな?
そう願いながら、建物の扉らしき所を開く。
……鍵が、かかっていない。
扉が開いた先は、真っ白な空間と人影。
男が三人に、樹が一人。
「ほら回復しろよ!まだまだ続けるぞ!」
「ひひっ……!死んじゃうんじゃねーの?」
「祐介君に会いたいー?はは、泣くなっての」
その光景から分かるのは。
男三人は、よく樹をいじめていたグループであること。
特に、真ん中の山本優樹は、特に激しかった記憶があること。
樹が、山本に魔法によって傷付けられているということ。
その行為は、今始まったばかりでないこと。
……そして、樹が涙を流していること。
――今、怒りが俺の腹で燃え上がっていった。
行き場を無くしたその怒りの感情は、言葉となって。
「おい」
今まで出したことのないような、低い声が出た。
耳障りな男三人の声は、すぐに消える。
「……樹に何、やってんだ?」
見たら分かる光景から、確かめるようにそう告げる。
……黙りか。
「樹」
守れなかった、その人の名前を告げる。
「ごめん」
その謝罪の言葉は、『決意』を込めて。
……こいつら、全員ぶん殴ってやる。




