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プレゼント

おかげさまで、五十万PVを達成しました。


本当にありがとうございます……

「お疲れ、ユウスケ」


「ああ、ありがとなミア」


時計は、一周周った十一を指している。深夜と言って良い時間だろう。


俺は、樹やミアが眠った後もシルマを探索していた。今日は少し、眠れそうになかったから。


結局ミアを起こしてしまった様で……こうして今、一緒にお茶を飲んでいるんだけれども。



「デカすぎて、全部調べようものなら途方も無いな」


「ふふ、そうでしょ。何せここは、パパが創った場所なんだから」


「はは、そうだな」


「……綺麗だし、何不自由もなく暮らせる様に——パパが、私の為に創ったの」


「ミアの父親は、本当にミアの事が大事だったんだな」



顔も過去も知らない、ミアの父親。


この『エニスマ』を創った——とてつもない人物だ。

でも。



「……うん。パパはずっとヒトに裏切られてきたから。パパが創った私しか愛せなかったんだと思う」



哀れむ表情で言うミア。

境遇に恵まれず、灰色の土地に逃げ込んだ人物。


寂しかっただろう。俺には、俺の事を信じ、付いてきてくれる人がいる。それがどれだけ貴重な事か。


……そんなミアの父親が残した、あの場所はきっと……





「ミア」


「……なに?」


「少し、見せたい場所があるんだ。良いか」


「え、ええ」


「……行こう」



この探索で、見つけた——『ある』場所。

自分がずっと――眠れない理由。



俺はミアを、そこへ案内する。



————————



——————



――――





シルマの深部。灰の創剣とは真反対の方角の、特に何もないエリアに佇む、ある小さな『部屋』。


ボロボロになった廃材のような場所の中——見つけた場所。


辛うじて残っている木のドア。釘にかかった小さな看板のようなモノには、こう彫ってある。




――――『ハンス・マルテンス』――――





「……これ……」


「ここ一帯は諦めてたんだけどな。ふと思い立って掃除してたらこれが出てきた」



目を丸くするミア。


この名の人物は……俺の予想していた通りだったようだ。



「ーーミアの父親の名前かな、って思ってさ」



「……ええ、そうよ。『ハンス』、パパの名前だわ」



「ここには、入った事は?」



「ない。ないわ……」



ミアは首を横に振る。

初めて見るそれに、戸惑っている様子のミア。


無理もない。この場所自体、こんなだから近寄る事もなかっただろう。そしてまた彼女の父親が生きていた時も、このは知らなかったはずだ。



「そっか。恐らくここが、ミアの父親の私室か何かなんだろう」



「……ええ。きっと、『何か』があるはずよ。私も知らない部屋なんだから……」



「うん、俺もそう思ってる」



こんな隠すようにあった場所だ。

それにミアの父親の名前まで彫ってあるしな。



「で——何となく、ここには俺は入ってはいけない気がするんだ」



きっと——ミアにとって、ミアの父親にとっても、大事なモノがある。



確信は無いが……そんな気がした。何者にも、ミアにさえも隠していた場所。



そしてそんな場所に——俺が土足で踏み入るのは、駄目なことだと思ったんだ。





「ありがとう。ユウスケ」



「はは、礼なんて要らないよ。準備はいいか?」



「――ええ。もちろんよ」



力強くミアは頷き、そのドアに手をかける。



「……いってらっしゃい、ミア」



俺はそれを、静かに見送った。




——————



————



——




「……ただいま、ユウスケ」



あれから一時間も経たず、ミアはドアから出てきた。


そんな短い時間だったが——彼女の表情はずいぶんと違って見える。


そして——その小さな手の中には、()()()()()()()の、青い石が包まれていた。



「それは——もしかして、転移石か?」



アルスのものよりかは少し大きいし、色も違うが——雰囲気が似ている。



『転移石』。



もしそれなら——この場所から旅立つ事が出来る代物。



「ええ」



ミアは静かに笑う。

涙の跡が残る頬からは、その部屋の物語が読み取れた。



そして、その石を見て——俺に告げるミア。




「パパがくれた、最後のプレゼントよ」

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