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案内

お久しぶりです。長らく更新を停止して申し訳ないです。

コロナ自粛の暇つぶし程度になれば幸いです。


「この場所……エニスマ、そしてシルマを、案内してあげる」


ミアは、確かに俺にそう言った。



「ほ、本当か!?」


「ふふ、ええ。……貴方がエントを倒してから、防衛システムも休止して、動かなくなったから」



今ならどこでも好きに行けるわ、と笑って言うミア。



「……いいのか?」



きっとここーーエニスマは、ミア、そしてミアの父親が大事にしてきたものだろうから。



「別にいいわよ。見て減るものじゃないし……貴方が見たくないって言うなら良いけど」


「い、いやいや!見たいよ!」



実際ここまで来たのは、この場所の謎が知りたかったからだ。



「……ふふ、なら行きましょ?」





あれから樹も合流して、俺達はミアに着いて行った。


樹の様子は、普段と変わらない様。昨日の事は、あまり気にしていないのだろうか……



「凄いな……」



ミアに案内され、塔の中を案内してもらう。


ミアの部屋の上は機械の兵……バルドゥール達の配置を変更したり、操ったりするパネルがあった。


下手すれば俺達のいた世界より進んでるんじゃないか?色々とな。



「……綺麗……」



その更に上に登っていくと、『頂上』だった。


樹が感嘆の声を漏らす。




実際そこは、絶景だった。エニスマの全てが一望出来る場所。


青いライトが散りばめられ、それらは生きるように稼働している。


俺達が歩いてきた場所が全て見える展望台。




「この場所を作ったのも、ミアの父親なのか」



気になって、俺はそう聞く。



「ええ、勿論よ……私はパパみたいに頭も良くないし、魔法もうまく扱えない」


「……ミアの父親は、相当凄い人なんだな」



呟く俺に、ミアは微笑んで。



「当り前よ。ふふ……それじゃ――」



その表情を治し、俺に向く。




「『地下』に、行きましょうか」

ミアの部屋に戻る道中。



『転送装置』が、そこにあるらしい。



「まさか、地下があるとはなあ……」


「この塔は展望台、バルドゥールのコントロールのみしかないはずよ。侵入者対策に、パパが生前に全部地下に移したから」


「はは、まあ確かにこんな塔に地下があるとは思わないしな」


これだけ立派な塔だ、地下の存在を連想するには難しい。


話をしていれば、ミアの部屋に着く。


そして、光る円のようなものが設置してある場所に俺達を案内してくれた。


丁度三人ぐらい入れそうな、如何にもなモノ。



「これが、転送装置か」



「……ええ。じゃあ、行くわよ」



「いや、まだ心の準備が――」



ミアと前、散歩に出かけた時もそうだったけどさ……これ苦手なんだよな。



エレベーターとは違うけど、なんか身体がひゅんっとする。



……どうして、そんな悪戯な笑みを浮かべるんだ?ミア?



「み、ミア?」


「ふふ、聞いてあーげない。――『転送』!」


「う、うおー―」





「……ふふ」



「……」



「……うう、ふう、着いたのか?」



何とか、終わった。本当に慣れないよこれ。



何故か樹は全く動じていなさそうだ……俺だけなんか恥ずかしいじゃないか。



ゆっくりと、瞑った目を開ける。



「――!?……は、はは、何だこりゃ……」





思わず笑ってしまう。



地下と呼ぶその場所は、むしろ塔よりも大きく見えた。

東京ドーム一個分とか建物の大きさの比較でよく聞くが、まさかここでそれを体感するとは……



「パパの部屋みたいなものよ、凄いでしょ?」



白い壁が囲う中。



畑が並ぶ、農園のような場所。


ガラス器具が大量に置いてある、化学実験所のような場所。


液体の金属の池。


バルドゥールの模型。


他にも、数えきれない程沢山のものが置いてある。


ミアの父親の残したモノは、俺の想像以上に多く、進んでいた。


部屋にしては広すぎるよ、うん。



ただ。

そんな地下の中。

もっとも印象的なのは――



「あの、一番奥にあるのは……」



それは、『剣』のようなシルエット。

灰色の靄のようなものが覆っているが、確かに見える。

このドームの最奥に存在するそれは、一番遠くにあるはずなのに。

何故か一番強調し、俺の目を離さない。

まるで、この灰色の土地の『中心』のような。



「ふふ、多分言葉で言うよりも……そうね、行きましょうか」


「あ、ああ。頼む」


「じゃ、行くわね。『転送』!」



だから、一声かけてくれ――



そう言う間もなく、ミアと転移した。




「……」


「……」



樹、俺共々、黙って『それ』を見続けていた。

シルエット通り、それは剣だった。

灰色の地面に突き刺さった、俺の身長程ある、巨大な剣。



有無を言わさぬ存在感。

そして、感じる魔力。

まるでそれは生きているかのように、力強さを感じた。



「……パパは、これを『灰の創剣』と呼んでいたわ」


「創剣……か」


「ええ。文字通り、この剣がここ一帯の魔力を創り続けているの。この灰色の靄みたいなものが高濃度の魔力で、パパはこれを色んなモノに変換している。まあつまり……これだけ大掛かりな事が出来ているのも、この創剣のおかげなのよ」



「なるほどな……」


「何時から存在しているのかはパパも分からないって言ってた。雲、地面、空気全てこの剣の魔力の影響を受けている事を考えたら、相当時間は経っているはずだけど」



確かに、この島は魔力が濃いと思っていた。

付近のバルドゥール達が、ここへ近付く事に強化されていっていたのも分かる。


まさか……こんな剣の影響だったとはな。



「本当に、不思議な場所だ」


「……そうね」



ミアが頷く。

きっと、ミアの父親は、時間をかけてこの場所を作ったのだろう。


……そしてそれは、他ならぬミアの為に。



「……ねえ、ユウスケ」

「ん?」

「あのね、私も――この剣に、創られたの」



ミアは、意を決したように、そう告げる。



「……もっと詳しく言えば、この剣の魔力と、パパの魔法によって」



俯いて、ミアは言った。


『産まれた』ではなく――『創られた』と。

この少女は、俺達人間のような生まれではなく、言わば『機械』のようなモノ。



「あの、バルドゥール達と似たようなモノよ。貴方達とは全く違う、生き物と呼べるかどうかも分からない」



確かに俺達とは違う。


道中倒してきた、バルドゥールと同様――ミアの父親によって『創られた』のだから。


いわば、『創造物』。そう言いたいのだろう、ミアは。



「貴方達に、出会って、助けられている間に――考えたの。私が何者なのか、って」


「貴方達、と――私は違うんだ、って」


「ヒトである貴方達と、『創られた』、私なんだ、って」



ミアは、俯いて、涙を流しながら続けて。



「だから、ね、私――『気持ち悪い』、でしょ?私は——貴方を殺そうとしたモノ達と同じ。拒絶されても——私、は」



……『創られた』。『機械』。『創造物』。



ミアはきっと、ずっと悩んでいたんだろう。


自分が、『それ』だった事に。



――だけど。



『それ』が、何だってんだ。



「……そんな事で、悩んでたのか」


「――!そんな事って――!」



涙を目に浮かべながら、怒りの感情を向ける彼女。



「ミアはミアだ。ヒトであろうと、そうでなかろうと――何も俺の中では変わらない。好奇心旺盛な普通の女の子だよ、ミアは」



「……う……ほ、本当?」



まだ疑っているのか、ミアは俯いたままだ。


今日のミアは少しだけおかしいと思っていたが、こんな事を溜めこんでいたとはな。



「ああ。何ならヒトよりヒトらしいよな、ミアは。な、樹」


「……うん。僕も、そう思うよ?」



樹も、笑ってそうミアに言う。


俺も樹も、ずっと思っていたことだ。



ミアは色んな顔を見せてくれた。


あの星空を見た時の表情は、『機械』と呼べるわけもない。


ヒトよりヒトらしい、それが誉め言葉になるかは分からないが……



「ふふ――そっか!」



今の笑顔が、何よりの証拠だ。

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― 新着の感想 ―
[一言] お待ちしてました!! この小説を初めて読んだ時に主人公の強大な敵に何度も立ち向かう姿に惹かれたので、また更新されて嬉しいです! 少し抜けてる部分もあるので読み返して来ますね!!
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