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長い眠りから

「……ん……ここは……」




知らない天井ではない。



どこか来た事のある雰囲気。



真っ白なカーテンで覆われている部屋の中、俺は綺麗なベッドのような場所で寝ていた。





電球のようなものが上にあって光っていたから、状況はすぐに分かった。



まるで病室だな。





「……――――!」





ふと横を見ると、機械の犬が居た。



驚いているのだろうか。



俺を見て、青い光を点滅させている。



……ああ、そうだ、俺は最後、あの兵器と戦って……





って――――――おいおい、今何日だよ?









「嘘だろ、年が変わってる……」







腕の時計の画面は、確かに1月1日となっていた。



……確か、あの時は……12月21日だったか……?







「丸10日寝てたのか、俺は」







これまでに無い事だ。



まあでも、体は大分元気だから大丈夫かな。





「……どっか行ったな」





光る機械犬が消えている。……どうしたのだろう。



寂しくなったな。



うーん、それにしても。







「腹、減った……」







丸10日だ。



ずっと寝てたとはいえ、流石に……というか。







「俺、生きてんだな」







空腹で実感する。



最後の戦いに関しては、本当に死ぬかと思った程だ。



あそこまで俺の身体を使ったのは初めてだろう。









「……ん」









何か、物音がしたような。









「――藍君!」







と思ったら――





シャーっと金属が擦れる音とともに、カーテンが開かれて。





樹が、顔を出した。









「……樹……」









そう呼ぶと共に、俺は身体を起こそうとする。





「……!まだ、寝てて……」



「はは、大丈夫だって……おっと」







起き上がろうとしたら、ふらっとする。どうやらまだ駄目のようで。



仕方なく、ベットの上で座るだけにしておく。



「……」





「ごめんごめん」





ジト目のイツキに謝る。



いやあ、行けると思ったんだけど。



やっぱりあの後だからかな。





「……んっ」



「ん?……っと!」





樹が、俺の胸に顔を押し付ける。



ぐりぐりと。同時に抱き着いてきた。







……そっか。





「心配かけたな、樹」



「……う、ん……」







丸10日だ、ずっと寝ていたんだから、不安にもなるだろう。





俺は迎える形で抱き返す。





温かい樹の身体。帰ってきたんだなと感じる。





「……樹……」



「……藍、君……」







顔を離した樹と、見つめ合う俺達。



樹が紅くなっている。恐らく俺も――









「……お邪魔、かしら?」







ミアがいた。



居心地悪そうに、ジトっとした目で俺を見る。





「――っ!ミア!」



「……」







樹が、名残り惜しそうに離れてしまった。







「は、はは。おはよう、ミア」



「……身体は、大丈夫なの」





ジト目のまま、ミアはそう俺に言う。





「ああ。10日寝てたんだな俺」



「……本当に、このまま起きないのかと思ったわよ……」





ミアは肩を窄め、そう言った。





「はは……まあ、生きててよかったよ」





俺はしみじみそう思う。



本当に、死ぬかと思ったからな……









「まったく、もう……」



「ん?」









ミアは俺に近づき笑った。



その顔に、あの時のような涙は見えない。



初めて見る、笑った顔。











「おかえりなさい、ユウスケ」



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