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イケメン拾いました  作者: ほのお
第一部 イケメン(仮)拾いました
6/28

親友いわく、ありえない設定とのこと。

 仲良しな親友いわく、

 私の周りはありえないとのこと。



 両隣になかなかおいしい設定の幼馴染が住んじゃってるような、親友の栞。

 一学年下の美少年な後輩にすごく懐かれたり、実の兄貴(妻帯者)にすっごく溺愛されてる、おなじく親友の明子。



 確かにあの二人に言われるまでもない。

 私自身も分かっている。


 異世界の客人をうっかりコンビニ帰りに拾ったり、

 あまりの健康状態の悪さに、異世界当番の親の力を使い引き留めて面倒をみたり、

 拾った客人とはまた別の異世界の客人に強制的に異世界に拉致られたり、

 たどり着いた異世界では言葉も通じないのに放置プレイされたり、

 なんか初対面の人に意味深に迫られたり、

 せっかく異世界に行ったのに、違法だからととっととお帰りを願われたり、



 ――――ありえないですね。本当に。



 しかも、エリヤには、急な別れを告げられるし。

 いきなりさよならを告げられて、扉である鏡にぺいっと押されたからね?!

 何が起こったか理解する間もなく、自宅に戻されましたから。



 共働きの両親はめったに家にいないし、ご飯も一緒にはなかなか食べれない。

 そんな私とって、出迎えをしてくれたり、一緒にご飯を食べてくれたり、傍にいてくれるエリヤの存在はとても貴重だった。

 今まではひとりが当たり前だったのに、エリヤと過ごした三か月で誰かがいてくれる温かさを知ってしまってからは、ひとりで過ごす時間がより淋しかった。

 エリヤが来る前は耐えれたのに、ひとりでいるのが苦痛でたまらなかった。


 家族にも、親友たちにも、誰にも言ってないけど、すごく、すごく淋しかったのだ。

 過ごしたのはたった三か月という短い期間なのに、いなくなって気付いた存在の大きさに自分でも戸惑った。



 が。



 しかし。








「和子~!!」

 ぱたぱたと走り寄ってくるのは、金髪、碧眼、キラキラオーラを醸し出すイケメン。

「……エリヤ。また来たのね」


 そう、また、である。

 このイケメン、別れて2週間くらいしてからだろうか。ふらりと遊びに来るようになったのだ。

 ただし、以前みたいな長期ではなく短期での滞在で。

 間を一週間や、三日、時には二週間だったり、時間が空いたら遊びに来ているらしい。


 今回で何回目だろうか。……そうとうな回数来ている。


「またとか言って、和子も私に会いたかったでしょ?」

「……別に」

「素直じゃないですね」

 エリヤは以前と違い、少し強く出るようになったと思う。

 再会時に、思わず嬉しさのあまり、私から抱き着いたのが敗因だったと思う。

「再会した時は、淋しかったと言って胸に飛び込んできてくれたのに、そんなそっけない態度だと来る回数減らしますよ」

「…………それは、嫌かも」


 来てくれてありがとう、って一言をいえたらかわいいんだろうけど……素直にことばにできない自分が情けない。

 いえない代わりに、エリヤの服の裾をきゅっと握りこむ。

 そんな私の姿に、ふっと笑みを浮かべるエリヤは、そこはかなく嬉しそうだ。

「まあ、そんなに間を開けると私自身が淋しいから、来れる時はこんな風にとんで来ますから、少しは喜んでくださいね?」



 なんで、そんなに来てくれるの?

 どうして、私が淋しそうだと嬉しそうなの?



 と聞きたいけども、勇気というか覚悟というか色々なものが足りてない私は、自分でも不甲斐無いと思う。

 エリヤも許してくれているし、今のなんともいえない距離感を崩したくない。

 だからまだ、今はこの曖昧だけども、以前に比べたら少しだけ甘い空気を楽しみたいと思う。





「そういえば、改装工事はすすんでいるの?」

「ふふ、聞いてくださいよ。進度はついに半分越えましたよ。あとは、最大の難関ネット回線の引き込みですね」

 有言実行というか、エリヤは私を異世界に招待する切り札を着々と完成に近づけている。

 ……そもそも、こっちの技術をあっちにもってくのはアウトではないのだろうか。


「言ったじゃないですか、高校卒業までには完成させますから、覚悟しといてくださいね?」


 えっと、なんの覚悟かな?

 いえ、なんとなく分かるんですけど。

「エリヤこそ、こっちにばっか来てて、仕事は本当に大丈夫なんだよね」

 前みたいに拉致られたくはないので、予防線を張るにこしたことはない。

「仕事してますって。あ、そうだ」

「ん?」

「取りあえず、宣戦布告を」

 エリヤが姿勢を正し、優雅に一礼をする。



「私の名前は、エリヤ=トリルです。ティオール王国で王太子殿下直属の竜騎士隊の隊長を務めております。お嬢さんのお名前は?」



 今までは、きいても教えてくれなかった情報を告げ、笑みを浮かべるエリヤに、そういえばちゃんとした自己紹介を受けてなかったと思い至る。

 …………宣戦布告、ね。ならば、こちらもある程度のお返しをしなければなるまい。

 私の方はある程度説明してるが、ここは改めてしときましょうか。



「私は、春野和子。公立咲楽高等学校の二年生で、生徒会書記をしています。将来の夢は、異世界の扉の管理人です」



 ついでに、お返しに新情報も一つ加えておく。

「夢というのは初耳ですね。だから、やけに扉の間で興味芯々だったんですか」

「だって、親にも言ってないもん」

 興味は前からあったけど、決定打をくれた人物が目の前の人物なのは、ご本人には今のところ秘密である。

「私としては、エリヤの正式な役職とかほとんどが初耳だし」

 なんだ、その重要ポジション。やっぱり、城関係者じゃん。騎士ってどんだけテンプレだ。

 そこまで偉い人だなんて思ってなかったんですけど……。もっと偉い人オーラ出してよ。

「和子、もう一回言っときますね」

「ん?」

「正式にご挨拶させて頂いたからには、そろそろ本気出しますから」

「本気?」



「覚悟、しといてくださいね?」



 拾った時は、不健康でボロボロだったイケメンは、その魅力を全開にしてキラキラ笑顔で私に正式に宣戦布告をしやがった。


 これが、私とエリヤの本当のはじまり。

 まだまだ物語は続いていくのだけども、ここで一旦おしまい。

 どんな道筋になるかは知らないけども、ハッピーエンドには意地でも辿り着こうと思う。




第一部おしまいです。

お付き合いありがとうございました。


小話で、トイレを見にショールームに向かう二人のデート(?)話とか需要ありますかね……

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