襲われました。
色々と覚悟を決めて、エリヤにとある言葉を伝えようとした瞬間だった。
ピンポ~ンと来客を告げるチャイムが鳴り響いた。
「「…………」」
…………泣いてもいいかな。
え、何、このタイミング。今日、何か荷物が届くとか聞いてないんだけど!?
「ごめん、エリヤ。代わりに出てくれる?」
心が折れまくった状態で、もしも何かの勧誘だったりしても追い返す元気がない。
「はい、お任せを」
がちゃりとドアを開けて、来訪者と二、三ことばをかわしエリヤが受け取った物を差し出してきた。
「密林からのお届け物。…………これはっ!」
手にした荷物は、明日届くとメールでお知らせがあった通販ショップで頼んでいた某シリーズの最新刊!
ありがとう、密林、フライングゲットできてすごく嬉しいです!!
でもね、でもね、今、このタイミングでのお届けは空気読まなさ過ぎてさっさと発送してくれた密林を罵ればいいのか、頑張って発売日前に届けてくれた飛脚さんを罵ればいいのか分からないよ!?
はあ~っと、盛大にため息をついて俯いてしまう。
仕切りなおして、もう一度という気概がない私を許してくれないだろうか。
やばい、なんて言うかちゃんと考えて何度もシミュレーションしてきたのに、今ので全てがとんで自分が何を言おうとしていたか上手く言葉にできないっ。
何か視線を感じて顔をあげると、エリヤがしゃがみこんで私の顔を覘きこんでいた。
「エ、エリヤ、どしたの?」
思いの外、距離がち、近いんですが……。
しかもなぜにそこまでニコニコと笑ってらっしゃるのかな? え、そこまで打ちのめされた私を見るの楽しいですか?
「取りあえず、そろそろあがりましょうか」
ひょいっと、私を抱えた。
「ひゃっ、ちょっ、エ、エ、エ、エリヤ!?」
「はーい、暴れないでくださいね。落とす気はさらさらないですが、危ないですからね」
すたすたとリビングへ向かうエリヤにされてるのは、最早定番の姫抱っこ!
何度回数をこなしてきても、この体勢は慣れないんですって!!
はい、以前慣れたとか言ってましたが、嘘です! こんな体勢に慣れるわけがあるかい!!
「なんで、そんなに嬉しそうなの!? っていうか、リビングに着いたのならおーろーしーてー」
「嫌ですよ。ようやく和子に念願のお姫様だっこできたんですから、もう少し堪能しますね」
エリヤはソファーに腰を下ろすも、私を抱えたままの体勢を崩してくれない。
「堪能なんてしなくていいから。って念願って、何?」
されるのが夢な乙女なら、世の中にはたくさんいるとは思うが、するのが念願って何事ですかい。
「だって、和子ってば、ジャックとか殿下とかルカルフィック殿とかにされちゃってるんでしょう?」
先の二人は目の前でされたから分かるが、最後の一人の情報はどこで手に入れたのだろう?
「それはそれはご自慢気にいいやがりましたからね、あの人たち。……え? まだしたことないの? とかも言いやがりましたしね」
「あ、あはは、それは、お、お疲れさま?」
うん、その男心は私にはよく理解できないんで、そろそ離してもらっていいですかね。
「和子の心の準備ができたんでしょう? なら、ある程度、こっちも仕掛けるまで離しませんよ」
な、な、何を仕掛ける気ですか、エリヤさーん!
私、そこまで大それたことしようなんて思ってなかったよ?
ちょっと、ほんのちょっとですね、あなたに想いを告げようとしただけで、ここまで急接近する気はさらさらなかったんですー!!
「せっかくウサギが自ら罠にかかってくれてるのに、何もせずに離すなんてもったいないでしょう?」
「その例えおかしくない!? まず、手なずけるところから始めよう! ね!?」
「嫌ですね。もうすでに十分手なずけてると踏んでるからの発言ですよ。私も勿論好きですけど、和子も私のこと慕ってくれてますよね?」
「……エ、エリヤ?」
今、何やら聞き捨てならないことを言いましたよね。
「もう一度、言いますね。というかいい加減察してはいるでしょうけど、念の為言いますね、」
「あなたの事が好きですよ」
「…………っ!」
知ってました。察してました。分かってました!! でも、改めて言われると、破壊力が半端ないというか……っ。
かああああああっっと、火照る頬をどうにかしてほしい。
「で、和子は、私のことどう思ってくれてます?」
明らかにこちらの想いを知っていてあえて聞いてくるなんて意地悪だ。確かに、言いかけた手前察しているでしょうけどねっ。
う~っと、微笑んでいるイケメンを睨みつける。なんだ、その余裕綽々の顏。
くっ、女は度胸だ。
「わ、私も、エリヤのこと、好き、だよ」
試験を頑張ったのは番人への近道という理由もあるが、この想いをエリヤに高らかに告げるためだ。
そして、次の一歩を踏み出すため。
「だ、だから、私とお付き合いしませんか?」
試験に合格したら、好きという気持ちと一緒に伝えようと決めていたことばを贈る。
「え?」
好き以外のことばがあると思ってなかったのか、エリヤ一瞬だけきょとんとした後で、嬉しそうに顔を綻ばした。
お前らすでに付き合ってるも同然だろうと、親友たちから罵声が聞こえてくるような気がしないでもないが、いえいえ彼氏彼女の関係にはなっていませんでしたから。
「勿論、大歓迎ですよ。私から申し出するつもりだったのに、一本とられちゃいましたね」
と、エリヤが顔を近づけてきた。
これはもしやっと、目をつぶると、予想していたところに衝撃はなく代わりにこつんとおでこに軽い衝撃があった。
あれ? と、おそるおそる目を開けると、お互いの吐息がかかるくらい間近にエリヤのイケメン面があった。
「口づけされると思いましたか? 一本とられたお返しですよ。でも、その反応だと実際にしても怒られなさそうですね」
思わずぱしっと両手で唇をガードして、エリヤを睨みつける。
「怒る! こんな逃げ場のない体勢でせまるとか卑怯だし!!」
「逃げ場をなくしているからこそ、でしょ。……こんなふうに、」
ちゅっと、ガードした手にエリヤは口づけをおとす。
「……っ!」
え、今、なななな何がっ。
狼狽える私に満足したのか、エリヤは囲っていた腕を離してくれる。
解放された私は、ぷるぷると今の衝撃を耐え、後ろ手にクッションを掴みあげ即座にエリヤに反撃する。
「エ、エ、エ、エリヤのばか――――――――――――――っ!!!!!!!」
ぽすぽすとクッションで攻撃する私をしばらく放置した後で、エリヤはクッションごと抱きしめてくる。
「やっと、捕まえましたよ。逃がしてなんかあげませんからね」
エリヤは、嬉しそうに私の顔を覘きこみ、今度こそ私の唇に口づけをそっと、おとした。
お読みいただき、ありがとうございました。
これにて第二部本編完結です。
ちょっとした後日談を投稿予定です。
第三部もまとめ中ですので、お待ちしていただけると幸いです。




