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イケメン拾いました  作者: ほのお
第二部 はじまりのその後で、
11/28

泣かせました

 がちゃりと玄関の扉の開く音がした。

 城を飛び出してから、すでに数時間が経過している。

 諸々の仕込みを終え、エリヤが帰ってくるのをルカルフィックさんとのんびり待っていた。もちろん、不法侵入してね。



「おかえり、エリヤ」

「やほ~、お邪魔してるよ~」



 エリヤの姿が見えたので、出迎えてみる。


「は? えっ? な、な、なんで!?」


 ルカルフィックさんに頼んで、外からは明かりがついてない様に見えるように、目くらましをかけてしてもらっていたので、そりゃあドア開けて明かりが煌々と付いていて侵入者がいたらビックリするよね。

 しかも、面子は私とルカルフィックさんという城にいるべき二人組。

「まあまあ、深く考えずにさっさと座ろうね」

 入り口で口を開けて、ぽかーんと間抜け面を晒しているエリヤを席に誘導する。

 目の前に、ことんと温かいお茶を置く。

「ほら、外は少し肌寒かったでしょう。取り合えず、あったいお茶でも飲んで身体を温めなよ」

「は、い。いただきます」

 目の前の状況に頭が追い付いていないのか、エリヤは言われるままに無言でお茶をすする。

「ルカルフィックさん、お鍋を持ってくるので、カセットコンロを真ん中に置いてもらっていいですか」

「はいはーい。あと、ご飯もついどくね」

「お願いします」

 と、テーブルの上に着々と夕飯……いや、この時間帯なら晩ごはんか……の準備をすすめる。


 ちなみに、カセットコンロや鍋、保温機に詰まったほっかほかの白米などはルカルフィックさんにおねだりして取り寄せていただきました。


 以前、エリヤのウォシュレットとインターネット発言に爆笑したこの人なら、絶対に私の世界に詳しい筈だと踏んで話をふってみたら、

「うわぁ。僕にここまで頼むとかある意味すごい度胸だよね。言ってないけど、なんとなく僕の正体分かってるよね」

「知りません、分かりません、存じ上げません」

 詳しく知りたくないので、この人は私の中では権力持った頼れるお兄さんだ。それ以外の何者でもない。それ以上深入りしたくないし。

「……うん、そっか。そうきちゃうのか。逞しすぎて、お兄さん、ちょっと拗ねちゃいそうだよ」

 え、僕ってもっとこう、おいしい立ち位置目指してたんだけどな……と小声で何か意味不明なことを呟く姿があまりにも切なかったので、早々にご機嫌取りに奔ることにしよう。


「黙っていうこと聞いてくれたら、ルカルフィックさんの好物を作ります。複数個リクエスト可能です」


 宣言通り、見返りをしめす。

「え? いいの? え、えとね、肉じゃがとハンバーグ。できればポテトサラダも」

「承ります。その代わり、これも追加で」


 馴染みのある料理ばっかだな。私の作れる物をわざわざ言ってくれたのか、それとも本当に好物がそれなのか。うーん、謎だ。

 やっぱりこの人、私側の世界に関係ある人なんだろうなーとさりげなく思う。……深くは考えないけどね。

 三品増える分、必要な物が増えたのでそれを書き加えメモを渡す。

 日本語読めるのかという疑問があったけど、最初のメモを見て理解したということはそういうことなのだろう。

「はいはい。このメモの内容の物を全部揃えたらいいわけね。調理器具からメーカーの指定までしてる調味料とか、和子ちゃんどんだけなのさ」

「だって、こんな使ったことない仕様の台所でなんかまともに調理できませんって。よろしくお願いしますね」

 そういうあなたも、なぜにタ○ガーの魔法瓶とか知ってるんですかとツッコみたくなったが、なんとか踏みとどまる。



 以上のやり取りがあって、普段通りとまではいかないけども、ルカルフィックさんのご協力のもと、そこそこ快適に調理できたので料理は満足のできる出来である。

 カセットコンロ万歳!!



「はい、エリヤお疲れ様。本日の献立はすき焼きと、ハンバーグと肉じゃがとポテトサラダだよ。どうぞ召し上がれ」

 準備も無事に出来上がり、食卓の中心ではぐつぐつと鍋がいい感じに出来上がっている。

「ほら、呆けてないで、あったかいうちにいただいちゃいなよ。せっかくエリヤの為に気合入れて作ったんだから」

「わ、私のため、ですか」

「そうそう。どーせ、仕事が忙しくて食事もまともにとってなかったんでしょう? ちなみに聞くけど、昨日は何食べたの?」

 うっと、答えに詰まる横で、鍋を優雅につつきながらルカルフィックさんが呟く。

「昨日のお昼は食堂で、パンだけ購入してさっさと執務室に籠ってたよね~。しかも、固形物を久しぶりに摂取したとか面白いこと言ってたかな~」

「ちょっ、ルカルフィック殿、いらないこと言わないでください!!」


 ほほう。


「エリヤ」

「はい」

「私のとの約束、覚えてる?」

 不健康状態から、通常の健康な状態に戻った時にひとつ、交わした約束がある。


「どんない忙しくても、食事は必ずとる」


 つい~と、エリヤが目をそらす。

 おい、そこのくたびれたイケメン。その態度は何かな?

「エ、リ、ヤ?」

「…………はい、すみません。最近は守れてないです。で、でも、最近ですよ!! ちゃんと、今の案件が滞るまでは守ってたんですって」

「ふぅ――――――――――ん」



 絶対に嘘だろう……と心の中で罵りつつ、ため息をついて台所にあるバスケットを指し示す。

「その中に、サンドイッチやから揚げなんかの仕事中にも手軽に摘めそうな物入れてるから、明日、朝食兼昼食でもいいから食べて」

「え?」

「せっかくの鍋が冷めるって。ほら、食べてって、ルカルフィックさん、お肉とりすぎです!!」


 はむはむと美味しそうに牛肉を味わうルカルフィックさんは、本当に幸せそうである。

 え? 材料費とか? 勿論ルカルフィックさんにたかりましたけど?

 ちなみに、ルカルフィックさんは「誰のツケにしとこっかな~」と呟いていたが、それは私のあずかり知らない事なので放置した。

 エリヤへのツケになっていたら、後であやまっておこう。勿論第一希望は殿下だ。あ、ちゃんと国庫とは別の個人の資産の方ね。



「って、エリヤ、なんで泣いてるの!!? 味付けどこかおかしかった?」



 あまりにもエリヤが静かなので視線を向けると、はらはらと涙を流していた。

「ち、違います。だって、私のためにここまでしてくれるなんて、感激して……」

「いや、そんなに感激しちゃうようなことだった?」

「だって、いつもは明かりの付いてない暗くて寒い家に帰って、食事の用意とか自分でしてるのに……いえ、ほぼ食べるの面倒くさくてそのまま寝ちゃうんですど」


 なんだと? こら、今なにか私の逆鱗に触れる発言をきいたような。本当、エリヤってなんでこんなに食事に無頓着かなぁ。


「家に帰ったら城にいる筈の和子がいて、さらに自分の為に温かい手料理を用意してくれて待っていてくれてるんですよ!! それに私のこと色々心配してくれてるし……。この、色々と仕事の立て込んでいる時にこんなことされたら、思わず泣いちゃいますって!!!」

 ちーんと、鼻をかみながらエリヤが力説する。

「心配するのは当たり前でしょう? ひっさしぶりに顔見せたと思ったら、前以上に顔色悪いし、思わず怒りで押し倒しちゃったし」

 えぇ、思わずうっかり襲いかかってしまったし。……勢いって恐ろしい。

「あのタイミングじゃないと、当分行けそうになかったんですもん。そんな日に限って、学校の方で面談があるとかで帰りが遅いっていうし、殿下には時間がおしてるぞって文句言われるし」

 おーい、そんなに泣いてるとイケメンが台無しだよー? まあ、そんな心配してもイケメンは泣いてもイケメンだけど。

「ごめんね。わざわざ会いに来てくれた日に帰りが遅くなっちゃって。無理して来てくれてありがとう」

 目元にたまる涙を指ですくってあげながら、普段は言わない一言を伝えてみる。


「私もね、会いたかったから、エリヤの顔を見れて嬉しかったんだよ?」


 伝えた瞬間、エリヤがきょとんとした。……何、その顔は。失礼な。

 そして、数秒ほど間が空いた後で、かあああああああああっっと顔を赤らめたと思ったら、両手で顔を覆って俯いた。



 なんだ、その乙女な反応っ!!!!



 それって本来は、私が本来やるべきリアクションですよね? ……いつのタイミングかは知らないけど!

「ちょっと、エリヤ。大丈夫?」

「だって、和子がデレたりなんかするから、驚いてしまって」


 ……え、今の私の発言、デレてたっけ?

 あれぐらいでいいんだっけ、デレって。違うよね? そんなにハードル低くないよね。


「何、バカな事いってんだか。ほら、こっち向いて、いつまで泣いてんのよ」

 疲れると人間って、涙腺ゆるくなるのかなぁ。

 素直に私に涙をぬぐわれるエリヤはなんだか可愛くて笑ってしまう。

「いい大人なくせに」

「これは、和子が悪いんですって」

 少しは落ち着いたのか、照れているのか少しぶすくれている。

 やばい、本当に可愛い。エリヤってば、拗ねるとこんななんだ。そんな顔されると、いろいろとまずいんですけど。

 ……年上なのになんだこの可愛さ。ん? 歳といえば、

「あれ、そういえばエリヤっていくつだっけ?」



「「はいっ!?」」



 思わず浮かんだ疑問を素直に口にすると、男二人が異口同音に叫んだ。

 あれ? なんか、私、おかしな事言いましたっけ?

「今、このタイミングで、その質問ですか?」

「いやいやいやいや、ツッコむとこはそこじゃないよね! まだ、年齢とか基本的な情報伝えてなかったの? っていうか、気にしてなかったの!!?」

「ちょっ、だって、今までになく甘い雰囲気に持っていけそうな感じで、どっかの守護者がいなかったら絶対に手を出してもいいレベルだったのに、全然関係ない質問よこしてその空気をぶった切るとかどんだけスルースキルが高いんですか!?」

「普通、気になるでしょう? 歳とか、誕生日とかさ!! なんなの、そんな付き合いのレベルなの君たちって!!」


「え? どうしたの二人とも。ほら、鍋が煮立ってきてるし。ルカルフィックさん、そっちに調整のツマミがあるので、もう少し火を弱めてもらっていいですか?」


 指示通りに火を弱めるけども、ルカルフィックさんとエリヤは何やら目で会話をしている。アイコンタクトできるほどあなた方、仲がよかったですっけ?

 しかも交わされている中身は、絶対に失礼な内容だろう。



 甘い雰囲気をぶち壊した?



 …………わざとですけど、何か?

 柄じゃないのに、早々甘いやり取りなんてできないっての。


 ふーんだ。


 まだまだ、デレたりなんてしてやらないんだから。




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