3度目もやっぱりアレでした
「まあ、目を覚まされたわ」
「あらあら、気分はどうかしら?」
「何か飲み物でも持って来させましょうか?」
ぱちりと目を覚ますと、視界に飛び込んできたのは金髪に蒼い瞳の絶世の美少女たち。
……どうしよう、疲れ目なのかな。同じ顔が3つあるように見えるんだけど。
三つ子、三つ子なのか?
それにしては、細部までそっくり過ぎてる気がするんですが。
「どうしたのかしら?」
「どこか気分が悪いの?」
「お医者様を呼びましょうか?」
いや、やっぱり3人いらっしゃるよね。それぞれしゃべてるみたいだし。
これが幻だったら、私、本当に病院に行かないとまずい状態だ。
「えーと、ここはどこでしょうか。あと、貴女方はどちらさまでしょうか?」
確か、殿下にティオール国へと強制連行されたはず。
しかも、守護者が云々言ってたから、たぶんルカルフィックさんのとこに行くみたいな感じだったのに、美少女に囲まれているこの状況はなんだろう。
「ここは城の客室よ。私は一の姫」
「私は二の姫」
「そして、私が三の姫よ。私たちは殿下の婚約者なのよ」
「殿下というのはシルヴェストロ殿下のことですよね。三人とも、殿下の婚約者なんですか?」
え? 何、あの人って、同じ顔の美少女を傍に侍らしてるわけですか。……こんな美人さんたちを複数だなんて、なんて身分なんだ。
「そうよ、私たちはみんな殿下の婚約者なのよ」
「ねえねえ。貴女は殿下の運命の人なのでしょう?」
「例の指輪が反応したのしょう?」
指輪? 確かこちらに来る前に赤くなってるとか騒いでいたアレのことだろうか。
「って、運命の人ってなんですか?!」
なんだろう、その聞き捨てならない響きの単語。
「「「貴女のことよ」」」
待て待て待て待て待てーいっ!!!!!!!!!!!!
「昔、占い師に予言されているのよ」
「殿下はいずれ、運命の人と出会う」
「その者が、殿下の傍にいる限りティオール国は安泰でしょうって」
「いきなりそんなこと言われても困りますって! っていうか、私はそんな大層な者ではないですって」
勘弁してください。なんだ、その運命の人って!? 国が安泰? なにその国家レベルの壮大な話。
「「「あら、ダメよ。逃がさないわ」」」
がしっと、三方向から腕が伸びてくる。
「ここに印があるもの」
一の姫に示されて自分の右の手の甲をみると、何やら今までになかった痣みたいな文様がある。
三枚の翼と、何だろう花……だろうか、それとも宝石か何かが組み合わさったような複雑な痣がある。
「この印は、守護者様の所有物に付けられる特別な印よ。貴女、きっと今年の花嫁に選ばれるのね」
守護者っていうのは、ルカルフィックさんのことだよね? それになんだ、その花嫁とかいう、物騒な単語は。
「殿下の運命の人でもあるし、守護者様の花嫁であるなんてスゴイわ!!」
きゃっと、嬉しそうに微笑んでくれるお姫様たちは眼福ものだけど、会話の内容がわけが分からなすぎる。
運命の人? 守護者の花嫁?
「そんな面倒くさそうな身分はいりませんからっ!!」
私が欲しいポジションはそんな、キラキラしい身分じゃなくて、もっと別のものだ。
お姫様たちの拘束を振り切って、寝かされていたベッドから起き上がる。
迷子になるのは必須だが、ここにいても何もいい方向に話が転がる気がしない。
と、いうことは逃走あるのみ。
廊下で誰かを捕まえて、エリヤのところにでも連れて行ってもらおう。
「すみません、逃げさせていただきます!」
扉に向かって、走ろうとした瞬間、ふわりと身体が浮いた。
「だーめ。勝手に城の中をうろつくなんて、自殺行為だよ?」
「ルカルフィックさん!! って、ちょっと、離してくださいって」
また、またなのか、私って異世界の男性に姫抱っこされる宿命のもとに生まれてるのか!
「んー。個人的にこの状況っておいしいから、離したくないんだけど」
「「「あら? 守護者様の登場だわ。なら、私たちのお役目は終わりね」」」
ぽんっと、何かがはじけた音がして、お姫様たちの姿がかき消えた。
「えぇっ!?」
「本体に戻ったかな。相変わらず、かしましい姫たちだよね~」
……ほ、本体? うん。心の平穏の為にきかないでおこう。
私は何も見なかった。
それよりも、聞きたい大事なことがある。この人なら、知ってるし答えてくれるはず。
「ルカルフィックさん」
「なあに?」
「エリヤに会い「あ、それ、今は無理」
…………おいおいおいおいおい。この人確か、
「困ったことがあったら喚んで。必ずあなたを助けるから」
とか、以前別れ際にカッコいいことおっしゃってましたよね? 私ってば、今現在大変困ってるんですけど?
「和子ちゃん。聞き方ってあるじゃない。もう少し、頭を使ってきいてごらんよ」
「それは目をうるませて上目づかいで可愛くおねだりしろって事ですか?」
えー、最低。
なんだかんだでこの人も、男の人なんだな。
「激しく違います。やめて、そんな生ゴミを見るような目で見ないで。ごめんごめん、僕のいい方が悪かったです」
こほんと、ルカルフィックさんは仕切りなおす。
「現在、色んな思惑が交錯しているので、シルヴェストロの命令で城内で和子ちゃんがエリヤに会うのはお断りさせていただきます」
思惑、ね。
そんなこと知ったことではないが、こちらの世界の権力持ってそうな殿下や、ルカルフィックさんに恩を売るのはこれからのことを考えるとまんざらではない。
私がこちらに来たのは、特待生制度のコネとかツテを得て、面接を有利に進めるためでもある。
それと、何より大事なのはエリヤとゆっくり話がしたいからなわけで。
城内がダメなら、ここはひとつ、
「エリヤの家に連れて行ってください。誰にもばれないように、こっそりと」
「その心は?」
「獲物が逃げないように、巣穴で罠を這って待ち構えるためです」
そう、時間がないとか仕事が忙しいとか、そんな言い訳で誤魔化されないためにも、帰宅後が望ましいだろう。
「準備とかもあるので、ルカルフィックさんにも色々と手伝ってほしいんですが、いいですか?」
「おねだりされるのは嬉しいけど、見返りとかあるのかな?」
くそぅ、ただでは手伝わないってか。
「……勿論、用意させていただきます。その代わり、きっちり手伝ってもらいますからね」
「りょーかい。お姫さまの御心のままに。じゃあ、行こっか。行き先のご指示をどうぞ?」
「まずは商店街へ買い出しです!!」
追記事項として、ルカルフィックさんとの会話は姫抱っこの状態で行われたことをお伝えしておこう。
うん、もういいんだ。三回目だもん。な、慣れたもんねっ。こんなこと、ど、どうってことないんだからっ。
というか離せって言っても、この人絶対に離しそうになかったしねっ! 嫌がれば嫌がるほど、嬉しそうに抱えてたルカルフィックさんも、お腹の中は黒いに違いない。
それに今だからいうけど、殿下に抱えられた時は、あの人胸に手がさりげなく当たってやがったからね!!
殿下に関しては、絶対にわざと狙ってそう抱えたと思う。




