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第19錬金 私の両親は、やっぱり強かった!

 「こ、この剣の輝きってまさか……」


 私から受け取った赤い刀身の剣を見てセツナさんが呟く。ラクザン達冒険者も一時的とは言えその美しい刀身に見とれていました。特に剣士であるヒサメなどは目が血走っている。……美人さんが台無しだよ?


 「その剣は材料を揃えておじいちゃんに打ってもらったの。セツナさんの為に作ってもらったから使いやすいはずだよ」


 「そのようね。その材料について色々聞きたいことがあるけどまずはコイツラを片付けないと。ありがとうねメイリー!」


 セツナさんは炎輝鉄製の剣を構えるとエレメンタールの群れの中に飛び込んでいく。

 武器が良いのかセツナさんの腕が良いのか、5匹もいたエレメンタールたちは2分も経たないうちにその姿を消していました。まあ理由は後者だとおもいますけど、剣の性能が良かったおかげもあるはずだよね。

 流石に武器なしじゃこの速さで倒せないはずだし。


 「すごいな……さすがBランク冒険者……あの剣の冴え……まだ追いつけそうにないぜ」


 「そうですねぇ。しかし、剣の腕もそうですがあのメイリーという子が渡した赤く輝く刀身の剣も気になりますな。明らかに珍しい素材が使われているに違いありません」


 「あの赤く美しい輝き、あの剣に使われている素材は希少価値がすごく高い炎輝鉄ですね……そして鍛冶師の腕も含めてあの剣は非常に素晴らしいですっ!」


 「ほらほら、ヒサメ!熱くなるのはわかるけどまだ戦闘中よ。集中してよ。私のほうにタールスライムが来ちゃうじゃない」



 セツナさんがエレメンタールを相手にしている間、冒険者のラクザンたちは坑道奥からワラワラとこちらへ向かってくるタールスライムの相手をしていました。

 私はといいますと、溶解液の飛散による傷を癒し終え、魔獣が来ない場所に退避しています。とはいえタールスライム相手なら魔道具を使えば戦えますが、もしエレメンタールが混じってきたら怖いので戦いません。もう服とかも溶かされたくないですし。


 「メイリー。他の服は持ってないの?」


 「あ、耳飾の中にあるけど、冒険者の人達に空間耳飾の事を知られたくないから……」


 「あぁ、それもそうね……」


 セツナさんが私の耳元で溶解液で溶かされた服を見ながら言う。うぅ、セツナさんといえど、あまりじろじろ見ないで欲しい。おこさまボディだけど服の所々が溶けており、玉のような肌が見えてちょっと恥ずかしいもん。


 「じゃあメイリー。これに着替えて頂戴」


 耳飾から出す所を見られたら困るのでセツナさんの持つ指輪に耳飾を同期させ、代えの服の転送を行いました。こうする事でセツナさんの持つ指輪に収納機能が付いていると見せかけられるからです。

 服を受け取った後、私はイソイソと物陰に移動し着替えを始める。


 「ありがとう、セツナさん」



 一方、指輪から現れた服を見て冒険者たちはまたも驚く。今までにも魔獣の巣食う古い遺跡やドラゴン種の巣などで収納機能を持った魔道具は発見されているが、そう言った場所はBランク冒険者ですら生きて帰れる保障などない難易度の為だ。


 「炎輝鉄製の武器に加えて収納機能付きの魔道具……。こんな辺境にいる一介の冒険者がもてるようなものじゃないわよね」


 「そうだな。だけど今、目の前に持っている冒険者がいるんだ。それを目標に腕を上げる為に頑張ろうぜ」


 ラクザンがリーダーらしく締めたところで、私の着替えも終わった。今までは普通の動物の皮製の怪しげなローブを着ていたが着替えの服は普通に私服として使えるシャツと短パンでした。

 なんだかんだで村の近くに採取へ行く機械が多いのでこう言った服装は常に持ち歩いているのですよ。

 服を着替えた事で歩きやすくなった私は先に進むというセツナさんの指示のもと皆について歩き始める。



 今の陣形は前方からの敵襲に備えラクザンとガラハドの前衛がたち、真ん中に魔法使いであるエンリケとイスカ、後方からの敵襲に備えセツナさんとヒサメが付いた。

 私の位置は中央から後ろ寄りですね。やっぱり近くにセツナさんがないと不安ですし!



 「あの……先程の炎輝鉄の剣を見せていただけませんか?」


 注意しながら進む中ヒサメがセツナさんに話しかける。やっぱりヒサメはあの剣が非常に気になっている様子です。剣を作ってもらった後おじいちゃんに聞いたんだけど、炎輝鉄製の剣は剣士ならば絶対に持ちたい剣の上位にくいこんでいるらしいから……ヒサメもきっとそうなんでしょう。


 まあ上位といっても100位以内とかなんだけどね?最上位とかは聖剣とかそう言った呼ばれ方をするものだから。まあ数ある剣の中で100位でもすごいんですけどね。私的には素材自体を作り出せるのでそこまで希少とは思えませんけど。


 「悪いけど今はダメよ。ここは魔獣が巣食う異界。いつ何処から敵が襲ってくるか分からないもの」


 「……そうですよね。いきなりすみませんでした」


 「無事に終わって村に帰ってからなら見せてあげるからそれまで我慢してもらえる?」


 「!は、はいっ!ありがとうございましゅ!」


 嬉しさのあまり噛んでしまい、非常に恥ずかしそうにうつむくヒサメ。それを微笑みながら見つめるセツナさんと、突然大声を上げたヒサメを気にした宵闇の旅団のパーティメンバーたち。



 鉱山の奥へ向かう途中に何度か大きな爆発音が聞こえました。奥のほうで誰かが戦っているのは間違い無さそう。

 援護する為急ぐ道中に大量のタールスライムやエレメンタールが現れましたが、先程とは違いセツナさんの圧倒的な剣技とテンションが上がりまくっているヒサメの剣術によって次々と倒されていきました。


 そしてとうとう最奥部に到着し、そこで私達が見たものは……






 「あっ、やっほーメイリー。こんな奥までこれたなんてすごいじゃない。さすが私達の娘ね」


 「そうだね。シンディ。セツナさんも無事に村に帰ってきてくれてたみたいだし、外(村)は大丈夫そうだね」



 私達が見たのは凍りついた鉱山内部と巨大なスライム……タールエンペラーの死骸と、その前に優雅に立つ親の姿でした。


 父さんも母さんも傷一つ負わずにこの巨大な魔獣を倒したようです。何故傷一つ負っていないと断言したかといいますと、二人の服装にも全く乱れがなかったから。

 父さんはいつもの私服に剣をさしていますし、母さんは手に杖を持っていますが服装は私服にエプロンをつけているだけ。汚れの一つすら見当たらないんですから傷なんて負っているはずがありません。


 「あのー……まさかアレクさんとシンディさんがこれを?」


 さすがのセツナさんもタールエンペラーを無傷で倒したと思われる二人に動揺を隠せない。

 タールエンペラーといえば際限なくタールスライムやエレメンタールを呼び出し、もし討伐するのであれば国であれば軍を、冒険者であれば高ランク冒険者大勢を率いて倒しに掛かるほどの大物だからです。


 なお宵闇の旅団のメンバーにいたっては全員がポカーンと大きく口を開けて静止している。



 「えぇ、私達に掛かればこの程度大した事じゃないもの」


 「って、シンディは言ってるけど、実際はちょっとしんどかったんだよね。まあなんとか核を破壊できたから倒せたけど、もうちょっと時間が掛かってると危なかったかも」


 ……むむっ!さすが父さんたちです。私の心配など全く必要なかったみたい。Aランク冒険者ってここまで強いんですね。

 実力で倒したと思い私が感動していると母さんが私のところに来て耳元で囁く。



 「あぁ、メイリー。あなたの作った【アブソリュートゼロ】と【空間爆裂剤】使ったのよ」


 「え?なーんだ、あれ使ったんだぁ。使い勝手はどうだったかな?」


 「えぇ、あの魔道具はすごかったわよ~。今回みたいに大物討伐時に数個あれば大抵の凶悪魔獣は倒せると思うわ」



 アブソリュートゼロは絶対零度の弾を放ち、着弾した対象とその周囲5㍍を完全に凍り付かせる魔道具。

 空間爆裂剤は地雷のように設置して使うタイプの魔道具で、上に乗った対象の重量が重ければ重いほど威力が増す粉末剤です。


 この2種類を使用したことで父さんたちは傷を負わなかったというわけですね。

 でも使い方が難しいこの2種類を初見で使いこなせたのは純粋にすごいと思います。



 「よし、メイリー達にとっては無駄足だっただろうけど、ここは片付いたから村に帰ろう!」


 アレク父さんの声に全員が返事をして私達は帰り支度を始めた。

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