第18錬金 私の負傷、そして姉?の怒り。
「こ、これは……」
私達が石切り場に駆けつけるとそこにはたくさんのタールスライムの残骸と稀にドロップされる魔石などが散らばっていました。後は石切り場の見張りを担当していた村人たちの死体も……。
やはり父さんたちは既にここに来ており、内部の調査に乗り出しているようです。
「聞いた話によるとタールスライムの上位種のエレメンタール、さらに最上位種タールエンペラーの目撃情報もあるし、この村人たちはそれにやられたのだと思うわ」
「タールエンペラーか……こりゃ気合入れてかからないと万が一があるぞ!」
冒険者たちのリーダーっぽい少年が号令を出しました。ここで冒険者達の紹介をしておきます。
まずは号令を発した槍を主武器とする山小人族のラクザン、人族で杖を発動体とする魔術師で見た目30台くらいのエンリケ、斧を持つ熊の獣人ガラハド、金髪がすごく似合うスタイル抜群の美少女エルフ兼剣士のヒサメ、エンリケ同様魔術師で本を持つタイプの元の世界でよく見かけた茶髪のコギャルっぽい雰囲気のイスカ。イスカの成長度合いもヒサメ同様侮れないものがありそうです。
彼ら5人こそがマクスヴェルで名を上げつつあるD級のパーティ『宵闇の旅団』だそうです。冒険者ランクは一番下はFランクから始まり上はSランクまであるそうです。
そこから考えるとまだ序の口?と思われるかもしれませんが、この世界の冒険者でD級以上になれる冒険者はそう多くないのだそうです。
それをまだ歳若い(感じの)彼らがD級まできているのは地味にすごいことなのですよ。
まあセツナさんはB級、父さんたちはA級ですけどね。
あとはまあパーティ名が多少厨ニ臭いですけど、そこは気にしなくても良いかな。
パーティ名と仕事のできる出来ないは関係ありませんし。
「あ、先に進む前にこの薬を渡しておくね」
セツナさんと暗闇の旅団の皆さんに作ったばかりのルタの塗り薬を手渡す。やっぱり前に出ない私より前に出る彼らのほうが怪我を負う可能性が高いですからね。
「おおきに……ってこれ、今マクスヴェルでも噂になっとぅルタの塗り薬ちゃうん?」
「噂はどうか知りませんけど間違いなくルタの塗り薬ですよ……けど、それがどうかしましたんですか?」
イスカが受け取った薬のパッケージを見て驚いていました。私は何でそんなに驚いてるのか不思議に思いながらも聞き返しました。
「どうかしたかもなにもあらへんよ!大抵の怪我ならたちどころに治る名薬といわれ数年前から突然流通し始めたのに製作者は不明……そんなものが何で君みたいなこの手からでてくんの?」
「あぁーえっとそれは知り合いの行商人さんと取引して定期的に卸してもらってるからですよ」
「……ほんまか?」
「ウソついてどうするんですか~。さーて、早く奥に行きましょう。こうしている間にも父さんたちが不覚を取るかもしれないし!」
イスカに追求されると喋りたくない事まで喋らされそうなのでやばいと思い会話を断ち切る。
イスカも不本意ながら、状況を鑑みて追求している場合じゃないのを理解している為それ以上は聞いてきませんでした。
石切り場を進んでいくと分かれ道が幾つかありました。しかし戦力を分断するのもまずいという判断を下した宵闇の旅団に従って全員で一塊になって慎重にかつ、急ぎ足で奥へ向かう。
奥へ行くに連れてタールスライムの数が増えていく。私を除くセツナさんたちがタールスライムを掃討しながらさらに奥へ進むと、だだっ広い広間にぶち当たりました。
どうやらここが石切り場で最奥部の一つのようです。そしてそこにいたのはエレメンタールというスライム型魔獣が5匹。
「え、エレメンタールが5匹もいるぞ!みんな溶解液に気をつけろ!」
溶解液?ってえぇ!もしかして溶かしてくるの?
「ひえぇ!どど、どうしよう!溶かされたくないよ?」
「……あのさ、メイリー。今更だけど外で待ってても良かったのにどうして中についてきたのかしら?」
ワタワタと慌てる私に呆れた表情で話しかけるセツナさん。
「それはやっぱり異界化って言う状況を見てみたかったし、異界化している場合に最奥部にあるという降魔石が欲しかったし?まあ異界化って見た目では分かりにくいってことだけは理解できたけど」
「はぁ……アンタって子は……」
「セツナさんたち。話している所悪いけどあいつらが来てるぞ!」
その声に反応し前を向くとエレメンタール2匹が私とセツナさんのいる所へ這いずってきていました。
ある程度近づいてきたエレメンタールたちの体が一瞬大きく膨れ上がり次の瞬間、その口らしき場所から大量の液体が吐き出された。
「あわわわっ!」
「メイリーよけてっ!」
バシャンッ!
「あぐっ、ああぁぁぁぁ!!」
セツナさんの方へ吐き出された溶解液はセツナさんの剣技で振り払えましたが私はそうは行かない。
肉体的能力は低い私だけど間一髪の所で直撃は避ける事ができました……が、地面に落ちた溶解液が飛び散り私の体のいたるところに付着する。その部分からはシュウゥゥという煙が立ち上がる。
「メイリィィィ。だだ、大丈夫?薬、はやく薬をっ!!」
うーん初めてセツナさんがすごい慌ててる姿を見たなぁ……。耳飾からルタの塗り薬を取り出しながらそんなことを考えていました。
「い、痛いけど大丈夫だよ!それよりセツナさん。その剣じゃ戦えないよね……」
「それより……じゃないわよもう!剣なんてなくても私はコイツラと戦えるわ。メイリーを傷つけたんだからただじゃおかない」
スクッと立ち上がり、空間指輪から別の装備を取り出そうとするセツナさん。しかしそれを引き止める。
「あー慌てないで。これ使ってよ!」
私が取り出したのは一振りの剣。赤く輝く一目見て名剣と分かる代物。
これこそは、おじいちゃんに作ってもらった炎輝鉄製の剣なのです。
「えっ!その輝きは、まさか……」