第10錬金 私、焼き魚定食が食べたかったの!
父さんが調査にでて半年。私は9歳になりました。
そして当面の生活基盤としてシーナコッタに構えたお店は今日も大忙し。
「シンディさーん!パッツァを3つ包んでおいて~」
「メイリーちゃーん!こっち向いてくれぇぇ!……じゃなくて漁の時の緊急避難用として《浮身剤》5セットよろしく頼むわ~」
「失礼する!我らはシーナコッタ自警団なのだが盗賊のアジトを潰すので《拡散砲撃弾》を20セット頼みたいのだが……」
街の外れにあるにもかかわらず、町の中心部からアイテムを買いに来てくれる住民達のおかげで、生活という面では苦労することなく過ごせています。
「母さん~。料理系の在庫まだあるかなー?」
「そっちは大丈夫よ~。それより薬品系のアイテムが在庫が残り少ないわ。早い目に補充しておいてちょうだい」
「了解~。あと、今日の発注はどの位あったの~?」
「浮身剤2件で8セット、拡散砲撃弾2件で25セット、ヒラーズ軟膏5件で15個にレビテート材4件50本ね」
「マジデスカ……多すぎじゃない?」
「レビテート材の方は日にちが多く掛かるって言っておいたから、大丈夫よね?」
「……木材がちょっと足りないの。他のアイテムに関しては少し補充すれば足りるっぽい」
「あらあら?それじゃあ母さんは明日伐採に行ってくるわ。…明日お店一人で回せる?」
「大丈夫大丈夫。今から冒険者ギルドに店の手伝い募集の指名依頼出してくる」
「一人でやる気はないのね……まあ良いわ。どうせセツナさんに頼むんでしょう?」
「もちろん!今日もお店に来てくれてたし、多分手伝ってくれると思う」
セツナさんというのはシーナコッタで活動する女性冒険者です。見た目も良い方でお店に来るたびに私をよく可愛がってくれるので、かなり仲良くなっているうちの一人です。
やって参りました、シーナコッタ冒険者ギルド。
慣れた物でさっさと受付で指名依頼とその依頼料、仕事内容の登録をいつもどおり済ませるとギルドを出ました。冒険者に指名依頼が入った時は冒険者カードが反応を示し、依頼が来ていると知らせてくれる妙にハイテク機能を備えている。
翌日母さんは近くの森に伐採に向かいました。
母さんには空間耳飾を渡しているのでアイテムの持ち運びには苦労しませんので身を守る事に集中すれば良いだけです。それに母さんは攻撃魔法も使える冒険者。ちょっとやそっとの魔獣や盗賊程度には負けませんので安心して良いのです。
私?私の場合は空間耳飾に爆弾系アイテムをストックしておけば何とかなると思いますよ?魔力が大量にあっても攻撃魔法が使えない錬金術師ですから、定番の凄腕の冒険者にはなれませんし。
……体力のステータスも未だにD-のままですから、武器で戦うと言う目標も立てられそうにありません。
「おはようー。メイリーいるの~?」
「はいはーい。セツナさんいらっしゃーい。今ちょっと調合中で、もうすぐ終わる予定だから少し下で待ってて~」
「おっけー。どうせご飯食べてないんでしょ?作っておいてあげる」
「セツナさん。さっすが~!大好き~!愛してる~!」
「ふふっ、私もメイリーのこと大好きよ~」
調合を終え階下に降りたのは、セツナさんが来てから15分後。テーブルの上には出来たての汁物や、野菜サラダに焼き魚等が並んでいました。
「思ったより早かったのね。まあ冷めなくてよかったわ」
「セツナさんが来ると焼き魚定食がでるから好き~」
「まあね。ご飯だけ食感的な問題で不満だけどしょうがないよね」
「だねー。でももうじきご飯の味も追いつけると思う。大分良い苗が育ってきてるから」
「ほんとに?それは良い事ね。出来たら真っ先に私に知らせてよね?」
「もちろん~。数少ない転生者の知り合いだもんね」
この会話から分かるとおり、セツナさんも私と同じく記憶を引き継いだ転生者。
セツナさんと出会ったきっかけは、いうまでもなくこのお店の商品に米と醤油が並んだから。
「こ、これってお米と醤油じゃないの!?これを何処でっ!」
ある日、お店の中に怒鳴り込んできたのは、このシーナコッタを中心に活動するBランク冒険者のセツナさんだった。黒のロングヘアーを後ろで括りポニーテールにしていて、目つきはキリリとしています。全体的にみたらスレンダーですが、筋肉と一部分に脂肪が付いたスタイルと言えるでしょう。
「どこでと言われれば此処でと言うしかないんですけど……?これらの商品に何かご不満でも?」
「あっ、ごめんなさい。文句があるんじゃなくてその香りが懐かしいものだったからつい……」
「ふむふむ。これらが懐かしいと言う事は……こちらにも見覚えがあったりするの?」
「えっ!?こ、これは……!まさかの味噌!」
「お姉さん……日本人ですか?」
「!?なんでそれを……もしかして?」
とありがちな展開があり、お互いが記憶ありの転生者だと知ったと言うわけです。
その後も交友を重ねて今となっては歳の離れた友人と言うわけですね。どの位離れてるかといいますと……ひとまw……むむっ?背筋に寒気が!?
寒気を感じた方向を見るとセツナさんが氷のように冷たい視線を向けていました。こ、これ以上は秘密にした方が良いようです。
セツナさんも私と同じくこういった感じのお話やらゲームが好物だったらしく、自立できる歳になるとすぐに冒険者になったそうです。生まれも育ちもこのシーナコッタと言う事なので幼い頃から海に親しみを持ち、仕事がない時は漁にでると言うバイタリティもあるほど。
あとセツナさんのステータスを(スキルを除く)教えてもらった所、体力がBで魔力がD+というギリギリで耳飾が使えない数値でした。なので魔力の影響を受けない指輪を3つ作って渡しています。
これだけでも十分驚かれましたけど、魔力が一段階あがりC-になったらさらに凄い耳飾を渡せると言うと
魔力をあげる修行を開始すると言い出しました。そんな修行あるのかどうかは謎ですけどね?
セツナさんは生前コンビニの店員やら、ホールでの仕事をしていたらしくお客さん相手には問題が起きません。仮に手を出そうとしてもセツナさん自身強いから問題ないし。
夜になると母さんが採取から戻ってきたので、木材やら魔獣の素材の確認をして自分の耳飾に移動させました。その日は私と母さん、それにセツナさんで仲良く食事をしてセツナさんに抱きついて寝てました。
セツナさんの母性の塊は凄く落ち着きましたとだけ述べておきます。