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やはり想いは通じない

作者: 神前 健人

「どうしたもんか。」

俺は考えることを放棄したくなってきていた。それもまあ無理はないとは思う。さっき好きな人に振られたのだから。別に予想はしていた。こっちのことを何とも思ってないというか、ただの一人の友達として接しているということは。それに彼女に好きな人がいるというのも知っていた。でも、俺は諦めきれなかった。恋する彼女に恋をした。でもやっぱり結果なんて自分が予想した通りであって、一発逆転とはいかなかった。そんなものだと思う。どんなにこっちが想っていても届かない時は本当に届かないし、届いても何もないことだってある。

「ふー。」

俺は公園のベンチに腰かけ溜息をつく。溜息と一緒に嫌な思いも吐き出してしまいたかったが、どうしてか重い気持ちにしかならない。吐いた分だけ自分が重くなった気持ちになる。マンガみたいに気持ちを伝えたら楽になったみたいな気持ちなるかもとか思ったが、そうでもないな。俺は漠然とそう思い。ベンチから公園にある池を眺める。さっきまでの出来事を思い出す。



「好きです。付き合ってください!」

俺は元気よく告白する。自分にできることは誠意をこめること。それしかない。少し俺は不器用なのかもしれない。でも、俺ができることといったらそれくらいのもので。俺はできることをした。

「ごめん。君が何を言っているのか。わからない。なんで今なの?」

「えっ・・・。」

「私は自分のことで自分の事だけで精一杯なのに、どうしてあなたの気持ちまで考えないといけないの。嫌だよ。私は嫌だ。考えさせてよ。いや、違う。ごめんね。君の告白には応えることができない。だから、ごめん。」

そう言って彼女は走って去っていった。残されたのは振られた間抜けな俺一人。



 どう考えても彼女とその好きな人に何かあったのか、それとも他に何かあったのか・・・・。告白への答えから考えるにそういうことだろう。。俺はもっと踏み込まなければならなかったのかもしれない。でも、俺は立ち尽くしてしまった。追えばよかったのかもしれない。悩んでいた彼女に何もできず。ただ自分の感情だけぶつけた、本気の想いというのは重たいものだとわかっておきながら彼女に感情をぶつけた。そして、それがただ受け取ってもらえなかっただけ。

 俺は天を仰ぎみる。何もない。真っ青な空だ。空は本当にきれいで、俺の出来事とはまるで無関心に陽気だ。こういう時は少し憎らしい。少しでも曇っていれば、振られたという雰囲気も出るのに。告白が成功したかのような快晴。少しうざったい。

「何してんの?洋一?」

「空を見てたんだよ。邪魔スンナ。」

なんか陽気に話しかけてくる。名前の通り陽気なやつだなあ。とか思いながら陽子を見る。

「振られたの?」

「そうだよ。文句あるか?」

「人生初の告白だったのにね。」

「そうだな。」

「まあ、でも洋一にしてはよくやったんじゃない?」

「かもな。」

「でしょ。」

そう言うと、陽子は俺の隣に腰かけてくる。俺はじろっと陽子を見たが、何も言わず、やっぱり空を見た。想いなんて通じないよな。それから俺たち二人はずっと日が暮れるまでベンチに腰かけていた。何もするわけでもなく。そして、日が暮れてそろそろ俺が立ち上がろうとするときに陽子が口を開く。

「それでもやっぱり君が好きなんだよ洋一。」

そう言うと、陽子は去っていった。まるで逃げるかのように。

「知ってるよ。陽子。」

やっぱり想いなんて通じない。想いをぶつけられてもやはり俺は拒絶する。だから辛いのだ。両方ともに。

 しばらく俺はベンチにとどまってしまった。少し放心してしまっていた。思い出すのは過去。

「お前は強いな。世間的には間違っているのにどんどんとぶつかってくる。」

俺は重い重い腰を上げた。妹の陽子はもう帰ったころだろうか?好き同士であっても無理なものは無理なのだ。俺も好きだが、もうそれも過去のお話。俺はもしかすると陽子の代わりが欲しいだけなのかもしれないな。何となくそう思いながら、俺はとぼとぼと帰った。

 やはり想いは通じない。

 そう思った。

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