中村勘九郎襲名披露(完結);平成24年10月10日
昼の部の真ん中。「蝶の道行き」
今回の公演で一番これが感動した。
中村勘九郎の出演作でないから申し訳ないけれど、感動してしまったので、仕方ない。
尾上菊之助と中村七之助の舞踊。
非業の死をとげた恋人たちが蝶に輪廻転生し、幸福な幻を夢見る。
その全てが舞踊であらわされる。
美しく、しかし、下手なホラー映画など寄せつけない冷たさ、怖さがあり、感動が心の中で暴れ回る。
蝶に転生した恋人たちもやはり人間でないものの動きをする。
これはけっこう二十世紀近くに作られた作品のはずだが、能の夢幻能という概念の影響を濃く受けている。
そして昼の部の締めくくりが「伊勢音頭恋寝刃」
ちょっと引っかかる。
襲名披露公演のような大きいイベントでやるにはちょっとしぶい感じ。
ちょっと難しめに思える作品である。
始まりから中盤までは伊勢の遊郭を舞台に主人公(中村勘九郎)、ヒロイン(尾上菊之助)、悪女(尾上菊五郎)、コメディエンヌ(市川左団次)、板前さん(片岡仁左衛門)が虚々実々のかけひきをする。
市川左団次は醜女の遊女で、笑いを担当しており、左団次の芸の幅に驚かされる
今回の公演、中村勘九郎、市川左団次、尾上菊之助の三人の能力に圧倒された。
この話の私がもう一つ引っかかるのは、ラストで、遊郭でのすったもんだの果て、主人公が悪女たちを斬るという近年の通り魔事件のような、というか実際、江戸時代の犯罪を基に江戸時代の作者が3日で書いた作品で当時のエネルギーをひしひし感じる。
しかし最後、何故か主人公が通り魔?をした罪も問われず、中途半端なハッピーエンドになって終わる。
江戸時代にはいろんな創作物の最後をハッピーエンドにする掟があった。好色五人女も雨月物語もそうである。
この作品もそういうしばりがあったのだろうか?
中村勘九郎の一族は新しいことにチャレンジして、いろんな成果を出してきた。
このちょっと込み入った作品の新しい解釈、やってくれないだろうか?(-.-;)
投稿してからミスに気づきましたが、観に行った日は10月2日~3日です。f(^_^;