令和元年名古屋駅薪能
演目
仕舞「笠之段」
仕舞「網之段」
舞囃子「藤戸」
狂言「杭か人か」
能「融」
去年は、祖父母の調子も最悪だったのに、まだ施設にも入らず、入退院を繰り返したりして、本当にたいへんだった。去年の暮れに祖父母が施設に入り、だいぶ楽になった。
最近まで疲れがたまっていて、早起き出来なかったが、最近、早起きも出来るようになり、昨日は一念発起して、瀬戸市に行き、三つの美術館を回り(梅雨明けして暑いが、徒歩で)、徳川美術館も行き、その後、席取りの行列に並んだ。
名古屋名駅薪能は高島屋前のイベントスペースで行われる。ミッドランドスクエア(トヨタ)、ゲートタワー(郵便局)、セントラルタワー(高島屋)、大名古屋ビルヂング、ルーセントタワーと言った超高層ビルに囲まれ、だんだん夕闇が迫ってくる。
幽玄である。(・・;)
お能は歌舞伎や、落語に比べても、ハードルが高いというか、大阪の心貧しく荒れた弁護士市長がお能や、文楽を観るやつは変質者と言っていたが、当たらずとも遠からず。(・・;)
着物を来た人はとにかく多いが、黒地に黄金で模様を描いた美事な着物を来たおじいさん、着物を美事に着こなしたハンサムな白人(ベン・スティラー似)、そして烏帽子をかぶり、不思議な着物を来た若者(あなたは何者なの?(・・;)などがいた。
このイベントは無料で、広くいろんな人を招待して行うが、まず最初、全国学生能コンクールがある。今年は異変があった。毎回、圧倒的優勝だった学習院が王座を陥落したのである。(・・;)
二位、学習院と言われた時、騒然となったが、私は学習院が優勝じゃないなら、同志社が優勝だろうと思ったが、やはりそうだった。(・・;)
大学のお能のサークルは女の子ばかりで、衣装(着物)も美しいのだが、同志社は女の子が一人だけで、あとは地味な着物の男子で、やはり謡とか舞に迫力があったのだと思う。
ちなみに3位、法政大学、4位、甲南大学だった。
そして、本編に入って行くが、最初は短い舞を二つ。二つ目は女性が舞う。両方、舞とメインの謡をやり、後ろに四人ぐらいだと思うが、地謡というコーラス隊がいる。
一つ目の舞では西行の「津ノ国の難波の春は夢なれや」を歌っていたような気がする。
舞のあと、舞囃子「藤戸」これはクラシックのオペラにもなっている。観たかったのだが、他の歌舞伎か文楽と競合して観られなかったのである。
「平家物語」の中で、源氏の英雄が地元の漁師に潮がひいたら道が出来るところを教えてもらうが、手柄を一人占めするため漁師を殺める。その漁師が亡霊となり、舞うというものである。仕舞も、舞囃子も、仮面と正式な衣装はつけないが、雰囲気はとても良かった。
そして狂言「杭か人か」だが、これはプロの狂言師でなく、アマチュアの弟子のヴェテランと言う人がやっている気がした。(・・;)
いわゆる、能、狂言らしい名前をもらっていない人だったのである。
でも、内容はとても良かった。とても臆病な太郎冠者が留守番をしていて、隠れている主の影に気づき「人か杭か?(・・;)」と尋ねると主が「クイッ」と答える滑稽ものである。
そして、最後に本命の「融」があった。
融は源融と言い、嵯峨帝の皇子であった。そして、京都六条にものすごく豪華な宮殿を作った。ところが、その頃、日本史一の悪王陽成院が位にあり、暴れ馬に乗って融の宮殿の庭をめちゃくちゃにしたり、下働きのものを殺した(厳密には相撲をとっていて、誤って死なせた)などしていたので、摂政関白太政大臣藤原基経は陽成院に替わる帝を擁立しようとした。
その時、融は「近き皇胤をたずねなば融らも侍るわ」と立候補したが、基経は光孝天皇を擁立した。融は一応、帝になれなかった怨念があるので、怨霊になり、光孝天皇の息子宇多法皇の妃、京極御息所に抱きついたが、宇多法皇の一喝で退散したため、平将門や、崇徳のような高い位の御霊ではなく、妖怪変化の類とされている。
ちなみにこのエピソードが源氏物語の夕顔が廃屋で、もののけに殺されてしまう話になっていくのだが、このもののけは六条御息所説と身分の低い妖怪と説が分かれている。私は六条御息所ではないと思うのだが、京大シンゴジラは「女は身分が違うとか関係なく、嫉妬するもの」とおっしゃっていた。恐ろしいな。(・・;)
ちなみに、紫の上の死と、女三ノ宮の落飾も御息所がやったことである。
ちょっと脱線しているが、六条御息所の娘、秋好中宮は源氏の息子冷泉法皇と結婚しているが、六条御息所は源氏に娘に手を出したら、地獄送りと厳しく遺言している。これは娘を気づかってではなく、嫉妬と思う。恐ろしいな。(・・;)
お能の融はそんなに卑俗ではなく、亡霊として、六条の宮殿の魅力や、近畿の名所を歌い、自分は天皇に準ずる存在だという舞をする。この最後の能は仮面も、衣装も本格的で、和楽器オーケストラと合唱隊がいる。
外はどんどん夕闇に包まれていき、周りのビルの灯りの中に舞台が浮き上がる。
また、来年も、行きたい。




