四月花形歌舞伎(前編)
名古屋での四月花形歌舞伎、涙が出た。
先々月、伯父を亡くし、先月は祖父が入院し、何とか仕事はしているが映画など観られなかった。しかし、伯父の七日七日の法要にも時には父親の代わりにうかがい、忌明けを迎えた。祖父も大手術をしたが退院した。(私の父親は婿養子なので、祖父は母方の祖父です。)意外と元気で昨日、久しぶりに明るい気持ちで休日を迎えた。松坂屋美術館で第70回春の院展を観るが、どの絵も美しく、肯定的に見えて来た。
松坂屋美術館の通りの向かい、中日劇場で四月花形歌舞伎、市川猿之介と片岡愛之助のダブル座長的四月花形歌舞伎を観る。私は体があまり強くないので、夜の部から。
夜の部は「新八犬伝」
もちろん滝沢馬琴(曲亭馬琴)の「八犬伝」を基にしつつ、平成の御代に若手歌舞伎役者のために製作されたもので初演は数日の公演、幻の公演とされていたらしいが、近年、片岡愛之助のレパートリーとして復活。
「八犬伝」に「太平記」「雨月物語」などの要素がくわえられ、八剣士の敵は日本の最高神、あらみたまとされる崇徳院である。片岡愛之助はこの崇徳院と八犬士を早替わりで演じる。
ところで、不思議な縁だが私は詩歌文学を専門にしているが、崇徳院は専門にしているお一人で崇徳院の御製などいくつも口から出てくる。神話の中の崇徳院でなく、本当の玉音に接するととても祟り神になられたとは思えないのである。
そして歌舞伎の中の崇徳院は崇徳院でふっきれていると言うか、ほめているのだが、ここまで荒唐無稽なら誰でもええやんと思わせるハチャメチャぶりで、悪役なのだが、何となく見守るみたいな感じになってしまう。(・・;)
(ルックスとしては公家悪と言う感じになっている。しかし、ほとんどのシーンではお侍さんに化けている。(全て片岡愛之助が演じる。))
しかもクライマックスでは片岡愛之助の崇徳院が宙乗り(ワイヤーで劇場上空を飛び回る)など、平成の御代の作品だが、江戸の反骨の精神、逞しい笑いとかすら感じさせられた。(・・;)
しかし、演劇として観るとなかなかよく出来た考えさせられるものだった。
今、一番、歌舞伎界でよくチケットが売れるのは市川猿之介の一門(おもだか屋一門)である。尾上菊五郎、中村吉右衛門の一座の公演は素晴らしいが、客の入りは今一つである。しかし、八犬伝には尾上菊五郎、中村吉右衛門らの一座の若手役者が集結して若いエネルギーがあふれていた。一般のファンの方にはふうんという感じかもしれないが、時蔵の息子の萬太郎、先ごろ亡くなった三津五郎さんの息子巳之助、錦之助の息子隼人、又五郎の息子の種之助、この四人は輝いていたと思う。先に書いた人間国宝たちの公演でも種之助なんかはすごく上手いと思った。歌舞伎にはいろんな役があり、その人の持ち味を活かす役をやることが大事である。四人は自分の道を見つけていると思われた。特にテレビドラマなんかに出た場合、中村隼人は爆発的な人気になる可能性があると思う。また種之助は年を重ねた時、芸能界になくてはかなわない名脇役になる可能性が高い。
八犬伝で有名な芳流閣で片岡愛之助と中村萬太郎が決闘するシーンは明らかに「白浪五人男」のクライマックスを下敷きに素晴らしいシーンになっていた。(お城の屋根の上での大立ち回り。)(愛之助が犬飼現八、萬太郎が犬塚信乃である。)
歌舞伎の古典と新しさが融合し、若い役者たちのエネルギーが爆発していた。そして、そのおおもとの話を作った滝沢馬琴(曲亭馬琴)は偉大と喝を入れられた。(・・;)




