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月の入江  作者: 緋絽
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発覚

どうも、緋絽と申します。

ご無沙汰しておりました。空くと思っていたのに、思ったより時間がとれない日々です。

と、言い訳をします…。大変申し訳ありませんでした。ご閲覧いただけている方々に深く感謝申し上げます。


「今日も、欠勤...?」

今日で5日になる。それは、キリカが図書館に出勤しなくなってからの日数。

これまで時々キリカがいないときはあったが、それはキリカが週に与えられた歴とした休みの日だった。

「そんな長期で休めるもんなのか?」

カウンターにいた彼女の同僚に尋ねる。同僚はランセルに畏まって、おどおどとしていた。

この女は、オレの能力を知っているらしい。

「いえ...長期で休むには、その、許可申請が必要ですが、彼女は申請もしておりませんでした」

「へぇ」

それはまた、おかしな話だ。あんなに楽しそうに、本の話をするのだ。キリカの性格的に、無断欠勤をすることはないだろう。

それはつまり、この連続した欠勤が、彼女の意思によるものではないということを指すのではないだろうか。

「家には行ってみたか?」

「は、はい。あの......どうもしばらく、家に帰っていないようで......。騎士様、キリカに何かあったんでしょうか? 彼女、今までこんな風に休んだことなんてないんです、きっと何かあったんだと」

青ざめて震える同僚に、オレは頷いた。

「可能性はたけぇな。わりぃけどあんた、ちょっと抜けてこられるか。本部で詳しく聞きたい」

「か、確認してきます」

奥の部屋に引っ込んだ同僚を横目に、オレは奥歯を噛み締めた。

オレは、人に力を晒さない。そうしてしまうと後々面倒なことが多いことを知っているし、オレにとっても他人にとっても、得なことがない。

だから、常に最小限の力を使って生きている。

オレは、耳についたピアスを探る。

弛めれば弛めるほど、抑圧されていた自分の力が解放されていくのがわかる。それは、塞き止められていた川が、栓を失って勢いを増していくのに似ている。

オレは力を晒さない。だけど。

オレの名を呼ぶキリカの笑顔を、いや笑いかけなくたっていい、たったあと一度だけでも、あの娘の無事な顔が見れるなら。

ーーーーキリカが、オレの本当の姿を見て泣いても、構わない気がした。



同僚から聞いた話では、キリカがいなくなったその日も、奇妙な風だったらしい。

いつも通り出勤していたキリカは、利用者の案内中に消える。

その時は同僚は、早退したのだと思ったらしい。声はかけられなかったが、他の図書館員に言伝てがあるのだろうと特に疑問を抱かなかった。

「だけど、休日を2日挟んだ出勤日、行方不明者は開館時間になっても姿を現さなかった。それで家にいってみたら、戻っている形跡もなかったらしいぜ。そんで、これはおかしいってなったらしい」

「なるほど...大まかな流れは把握した」

ロイが難しい顔をして頷く。

オレは妙に気が逸り、落ち着いていられる気分じゃなかったが、それでもなんとかこらえた。

焦っても仕方ねえ。それは、これまでの経験からわかっている。

「しかし......自ら消えた可能性があるかぎり、許可も下りづらいし、大々的に動くのは難しいな......。どうする、レオン」

振られた隊長は、少し頭を巡らせてから口を開いた。

「同僚から聞いた話に、その行方不明者と最後に話をした利用者の特徴は聞いていないのか」

「聞いたよ。だから、わざわざあんたらに伝えに来たんだろ。オレの独断で動いていいのかわかんねぇからさ。でも、なんつーか、はっきりしたことは言えねえけど」

話せと促され、オレはチラリと後ろに立つハルキに目線をやった。

伝令役のハルキには詳細を知る義務がある。そう考えて連れてきていた。この話をすれば、自然とあの話題に近づく。それはわかっていたが、逃げ続けていられるような話題でもない。

「白髪に近い金の髪、だったらしい」

ハルキが息を止め、体を固くしたのがわかった。

オレはそれに気づいたが、気にしないことにした。一人ならまだしも、ここにはレオンがいる。あいつがどうにかするだろう。

正直、オレはキリカの件で余裕がない。

「それだけか?」

「まさか。そいつ、色なしの研究についての資料を欲しがってたらしい。...…そういうのって、珍しいだろ。オレとしては、あの銀髪野郎が絡んでんじゃねえかと踏んでるわけなんだけど」

レオンがあっさりと頷く。

「可能性は高いだろうな。金の髪なら銀髪でも染めやすいだろうし、何より目撃証言が髪色以外奴に一致している。……少しできすぎな気もするが…」

「それはつまり」

ハルキの固い声が後ろから届く。

怯えて声も出せないかと思ったが、案外己を奮い立たせる質だったらしい。

そういえば初めの頃も、隊長に突っかかっていく命知らずだったっけ。

「ギルシュ・ヴァーリアが関係しているということ? じゃあ、単純な事件じゃないよね。ギルならわざわざ昼間に図書館で連れ去らなくても、家の近くで待ち伏せして連れ去るくらい簡単にやるでしょ。いや待て......ギルじゃなくても、普通そうするんじゃないの? わざわざ目撃される時間にやるなんて、意図的じゃないなら頭がおかしいか相当なアホかだよ。てことは、ーーーー誰かに、怪しまれるのが目的だったんじゃないの?」

後半はぶつぶつ呟くようになっていたハルキの言葉に、隊長以外が目を丸くした。

当然オレもだ。

焦っていたにしろ、こんなことに気がつかないなんてオレは相当動揺していたらしい。

そう、まるでこんな、罠のような事件。頭から怪しんでくれと言っているかのようだ。

隊長は薄く笑ったあと、引き出しから複数の資料を引っ張り出し机に投げる。

「その通りだ。次いでに似たような行方不明事件が複数起きている。そのためこの件は、同一犯の事件としてランセル班を主導に5つの班で片をつける。采配はロイに任せる。言うまでもないだろうができるだけ守備に長けた班を選べ」

「あぁ、わかってる」

ロイが躊躇なく頷いた。

「仮に居所が見つかった場合とそこにギルシュ・ヴァーリアが確認できた場合は俺も関わる。ランセル」

5つの班で動くほど大きな事件はほとんどない。こんなに大々的に動く必要があるかと疑問に思っていた所に呼ばれて顔をあげる。

「忘れ物をしたような顔をしてるな。今回の捜索は急を要する。ーーーー解除(・・)を許可する。ただしピアスだけだ、意識は残せよ」

「え...…いいのか、そんな」

ようやく、大きく動く意味がわかった。オレの制御を外す許可を出す、それほどの事件だと、装うために。

「なんの問題がある。行方不明事件は二桁に達しようとしてる。十分重大な事件だ。お前なら、居場所を探すなんて簡単だろう?」

キリカは、オレが守りたいかもしれないものだと、この人は気づいているのだ。

好きだと思う。あの笑顔に会いたいと思う。

だからこそ、私情のままオレの能力を使って捜査してもいいのか迷っていた。それすら、隊長は見越して、きっと。

「あたりめえだ、瞬きで終わらしてやるよ」



キリカ。

必ず、見つける。

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