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月の入江  作者: 緋絽
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衝突

どうも。緋絽と申します。

かなりご無沙汰しております。短めです。どうぞ!



宿舎に戻るとアルベルトとノックスが心配顔で待っていた。

私の隣に並ぶレオンを見て戸惑った顔をしたが、何も言わないでいてくれた。

二人の元へ行こうとした私の手をレオンが掴む。

「………っ!」

思わず振りほどいてしまった。

捕まれた部分がまるで熱を持ったようだ。あぁ、一旦意識してしまうと、もう止まらない。

「…………あ、これは、その」

やってしまった! 別に嫌な訳じゃなかった。急に掴まれて驚いただけなのだ。どうしよう、私がレオンを嫌って振り払ったのだと思われたら。

「…………気が咎めるのか、また別の理由があるのかは知らないが」

レオンが眉間に皺を寄せる。

気に入らない。そう考えているのが如実に伝わる表情。

別の理由がないとは言えない。けど、嫌いな訳じゃないよ。むしろ逆だよ。

「勝手に消えるなよ、クラモチ。お前の居場所は、ここだ」

心臓が、大きく跳ねる。

たった今、その手を振り払ってしまった私に。どうしてレオンはいつもいつも、まるで狙ったかのようにほしい言葉をくれるのだろう。


あぁくそ。好きになってしまってからの方が、苦しい。


私はレオンに笑い返した。

「うん。わかってる、レオン」

ありがとう。

レオンがクッと目を見開く。

それを疑問に思いつつも特に追求はせずに、私は二人と部屋へ戻った。




「――――で? なんでてめぇは泣いて走り去ったんだ、さながら恋愛劇のヒロインかのように」

仏頂面でノックスが問い詰めてくる。

しかし私はその言葉に悶絶ものの恥ずかしさを受け取った。

「ぎゃぁぁああああ! やめろバカ!!」

ヒロインとか私にひたすら似合わない単語でしょうが!!

「見事な泣き走りだった」

「アルベルトも真顔で褒めたりしたら冗談かそうじゃないか見分けらんないでしょうが!!」

なんなの! いじめなの!

くっ、わかってる、近頃悶々と考え込むことが多くて、しかもついさっきレオンへの感情を自覚したばかりだから少し過剰に反応するようになっているだけなのだ。

「ごまかそうったってごまかされてやんねえぞ。今度という今度は話してもらう」

「そうだな。水くさいぞクラモチ。君が何かに悩んでいるのなら、僕らはいつだって手を貸すつもりでいるのに」

それはまるで私が隠し事をいくつも持っているかのような物言いですね? ………あるわ、めちゃめちゃあるわ。思い返せば思い返すほど出てくる。

言葉につまっていると、ノックスがギリギリと頭を締め付けてきた。

痛い痛い痛い! いやでも、そう簡単には話せることじゃないというか! 嘘をついていたことを知ったら、この人達はどう思うだろうって言う葛藤をもう少し巡らさせてほしい!

「い、いや、その、ちょっとしたことがあって、それであの、俺の過去に関わることで、」

ピクリとノックスがその動きを止める。

「すぐには話しづらいというか、えーっと」

どう言えばこの事態を回避できるか。それしか考えていなかったので、私はノックスの表情の変化に気づくことができなかった。

頭から離れた手が、きつく私の肩を握る。

「いっ……ちょ、ノックス、肩」

「――――ふざけんな」

怒りのこもった声音に、思わず言葉を飲み込んだ。

顔をあげれば、眉間に深く皺を寄せたノックスが私を見下ろしている。どうしてそんな、歯がゆそうな顔をしているの。

「ノックス?」

「お前はいつもいつも、過去のことがってごまかしやがる。言いたくないことなら仕方ないって、俺はそれも受け入れてた。聞かれたくないこともあるよなってな。けど、もう、お前が来てしばらくだぞ。…………そんなに、俺達は昔の話をできないほど、信用ならないのかよ」

ハッとした。

余りにも悲しげな、傷ついたかのような声音。

「ちがっ、ノックス、待って」

「俺は、お前の助けになれたらって、ずっと思ってたよ。隊長以上に」

肩を突き放すように離され、少しよろめく。

「ノックス!!」

突き放してしまったことすら後悔して傷ついた。そんな表情を残して、ノックスは部屋を出ていってしまった。

「アークライト! くっ、待っててくれクラモチ、説得して連れ戻してくる」

「いいよ、アルベルト。大丈夫」

今さら気づいたのだ。私はいつも自分のことばっかりで、隠し事をされた周りがどう思うかなんて、考えたこともなかった。自分なら、頼られもしないと悩むに決まっているのに。

後から気づくことばっかりだ。

「アルベルトも、ノックスと同じこと、思ったろ?」

「いや、僕は……その」

困ったように眉尻を下げるアルベルトに笑いかける。

その感情は、私を心配してくれたからこそ生まれた感情。それを疎ましくなんて、思えるはずがない。

嬉しくて堪らないよ。

「俺が行くよ。そんで、話したいことが、あるんだ。……だから、話すときは最後まで、聞いてほしい」

私の言葉に、虚をつかれたような顔をしたアルベルトが、少し面白かった。



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