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月の入江  作者: 緋絽
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懇願

どうも、緋絽と申します。予告なく休載してしまい申し訳ありませんでした……!




私の突きだした手が、ノックスの首を掴む。

「───……え?」

そのまま足を払い、地面に叩きつけて横倒しにした。

「ハルキ!?」


やめろ、動くな、私の体。

ノックスが私の指を解こうと手を掴むが、逆に私の力は増した。

「う、あ」

助けて。どうか、私を止めて。

───レオン。

視線だけ、自由がきいた。そのせいで、苦しむノックスがしっかりと見えた。

「あ……あ…」

苦しげにノックスが暴れる。

ノックス! お願い、逃げて!

私の手が腰に伸び、折り畳み式の棒を組み上げる。

これで、喉を、突く気だ。

瞬間でわかった。高く高く振り上げる腕を、私は私の意思で操れない。

ギル。あんたのこと、一生許さない。私の意思を曲げて、私の体を使って、誰かを殺そうだなんて───そんなこと、許されると思ってるわけ?

「……ろして…」

私の口から、言葉が漏れた。それに気づいたノックスが、怪訝そうに私を見上げる。



誰かを殺してしまうくらいなら。



どうかお願いノックス。あなたの力で。



「殺して、くれ」






私を、殺せ。





降り下ろされる棒が、吹き飛ばされる。

強い力で引っ張られた私の体は、それでも私の意思に反して、吹き飛ばした相手に攻撃をしかけた。

息を吸い込み咳き込むノックスをアルベルトが引きずっていく。

「自分の意思で、体を統制しろ、ハルキ」

無理だよ。どうなっているのか、わからないんたから。

だから、止めて。レオン。

黒髪の男は、チラリとギルに目をやる。

ギルは甘やかな笑みを浮かべてこちらを見つめているようだった。

「…………ハルキ、俺はさっき、殺せといったように聞こえたが? 聞き間違いだろうな?」

違うよ。聞き間違いじゃない。

だって、人を殺すなんて普通じゃない。それをしたら、もう、元の世界には戻れないかもしれない。私は、元の世界にいた頃の私から、変わりたくないのに。

それなら、もとの私のまま、殺してほしい。もしかしたら、死ぬことで、元の世界に戻れるかもしれないじゃないか。

「返事をしろ」

無理だって言ってんだろ、この俺様鬼畜野郎。

振り抜いた腕を返して側頭部を狙う。それを、受け止められた。

「おい、ハルキ」

顎を掴まれる。気がつけば、腕を拘束されて動けなくされていた。

瞳に、レオンの目が写る。

「必ず、助ける」

額に、レオンの前髪がかかる。

柔らかいものが、唇に触れた。






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