衝動
どうも、緋絽と申します。
しばらく更新できずすみませんでした!
そして短いです!
部屋に男の人が入ってきて、騎士様だと名乗った。
さぁもう大丈夫。怖かったね。今助けるからね。
笑って棒読みで言った騎士様の目が醒めているのに、ノラクルは気づいた。
名前は? と問われ、ノラクルと返す。
その名に、騎士様が納得した雰囲気を出したので、ノラクルは肩を落とした。
知らない間に、期待するようになっていたらしい。あの、男の人みたいな女の騎士様のせいかな。…………あの人は私を見て、こんな顔をすることはなかったなぁ。
騎士様に向ける顔が、いつものように固く強ばり無表情になるのが自分でもわかった。
ノラクル。昔々、神様がいたとされるほど遠い昔に使われていた言葉からつけられた名前。捻りなんて何もない。そこに込められた愛情なんて、一欠片も感じない。
『色なし』。そんな意味の、単なる記号。
なんて名前。お父さんとお母さんは、私にきちんとした名前をつけることすら、嫌だったのだ。
ノラクルは髪を握りしめた。
この白い髪を見て、たくさんの人が私をいじめるか、知らんぷりをするのを、ノラクルは知っている。
役立たず。穀潰し。そんな言葉は、気がつけば身近に降ってくるもので、まるで挨拶のようだ。
部屋を出ても、ノラクルを抱き上げることもしない。もし本気で助ける気があるなら、抱えあげて走った方が賢明なのに。
澱のようなものが、胸の奥に溜まるのがわかった。
外に出た瞬間、地面が揺れた。それから怒号や悲鳴が飛び交い始める。
戦いが始まったのだ。
騎士様達が、みんな捕まえてしまうのだろう。
ぼうと俯いて地面を見つめていたノラクルの視界に、自分の白い髪が映った。
…………あの、人、も?
ノラクルとは違う、月光のような白銀の髪。
あの人は、ノラクルに優しかった。胸がつぶれそうになるくらい。
どくりと、鼓動が跳ねた。
奮い起てる衝動が、ノラクルを突き抜ける。
頭を撫でた感触が。耳を通る歌声が。目を覆う手の熱さが。優しい、声が。
まだ、残ってる。
騎士様をふりきるのは、とても簡単なことだった。
前を行く騎士様は、当然ノラクルの手を引いていない。
ただ立ち止まり、横道に入ってジグザグに走れば、ほら。
たちまちノラクルは一人になった。
走っているうちに、ここがあの男の人のいた部屋の近くだと気づく。
どの扉かは覚えていない。しかし、ノラクルは自分の勘を頼りに扉を開けた。
月光のような銀糸が翻る。それに対称して部屋には赤い血が広がり、騎士の制服を着た男の人が倒れていた。
くっと瞳が開かれた。赤く染まっている手を、男の人が服に擦り付ける。
「……どうして……君が……」
見開かれた片目はすぐに戻り、甘い顔立ちをどこか複雑そうな顔にして、男の人は首をかしげた。
「なんの、用かな?」
考えるより前に、言葉が出た。
「置いて、いかないで」




