女子力なんてとんと縁がないわバーカ!
お久しぶりです。緋絽と申します。
やはりほとんど一月空いてしまいました……すみません。
これからはちゃんと更新できる、はず!
目が覚めると、暗い石の床に寝かされていた。
起き上がろうとして上手くいかず、もしや体が上手く動かないのかと焦りを持つ。
まぁ、すぐに手を縛られていると気付いたけど。
「うっ……頭がんがんする……何飲まされたの私……」
なんとかして体を起こすと、私から少し離れた位置に、小さな体が転がっていた。
ほとんど白に近い髪が薄汚れている。
「ちょっ、ちょっとっ、君大丈夫!?」
膝で擦りよって何度も声をかけていると、その子供はピクリと反応を示した。
「う……」
ころりと、それすら辛い運動のようにして仰向けになったその顔は、少し前にふらついていた女の子だった。
えっ!? な、なんでこの子がここに!?
一瞬パニックになったが、少しして気がついた。
子供がわざわざこんなところに来るはずがない。何故ならばあの港の酒場は子供の足では少し遠いのだ。それこそ、大人が連れてこない限りは、来るのは難しい。
つまり、この子は拐われたか───実の、親に。
胸がぐっと詰まった。
違うと、信じよう。
「お嬢さん、大丈夫? 喋れるかな?」
私の声にふるりとまつげを震わせ、女の子は目を開けた。
見知らぬ私と知らない場所に、一瞬女の子の顔が恐怖に戦慄く。しかし、すぐに諦めたように無表情に戻る。
「…………ここ、どこ?」
「ごめん。私もわからないんだ。どこか痛いところとか、具合がわるいとか、ないかな?」
女の子がゆるゆると首を横に振る。
私は女の子の膝が擦りむけて血が出ていることに気づいた。それを、言わないなんて。
腕が縛られてさえいなければ、私は、手当てをしたのに。
「……君が、何か覚えてることはない?」
「私が……覚えてること……」
ぼうと焦点が合わなくなる。
私は慌てた。辛いきもちを、何も今思い出させる必要はない。
「わ、私の名前は春紀。君は?」
話を無理矢理返ると、女の子はやっと答えられる問題を見付けたかのように返事をした。
「ノラクル……」
「わかった。ノラクルちゃんだね。一緒にここから脱出しようね!」
私の言葉に、ノラクルちゃんは頷かなかった。
ただじっと下に目線をやっていた。
私に怯えているようだ。
どんな扱いをされたら、こんな風に誰もを恐れるようになるの? この歳で、この小ささで、こんな。
私は周りを見渡した。とにかく縛られている手をどうにかしなくちゃ始まらない。
ふと上を見ると、小さな暖炉があった。
よく見たら騎士団でよく使う火起こしの綿のようなものもある。
待てよ。あれで紐燃やしちゃえば、腕自由になるんじゃないの? そりゃあ火傷はするかもだけど、ほら、命の危機と思えば何ほどもないさ。
でも、腕はあんなところまでは上がらない。
じゃあやっぱりあれか。
刃物を奪うのが一番よね。
よいしょと声を出して立ち上がる。
女子力? ふっ、そんなもの忘れた。
今の私は男………じゃない! 女だ!
自分の考え方に衝撃を受ける。うむ、なんとも混乱する。面倒な嘘だよほんと!
「ノラクルちゃん、ちょっと目を瞑ってて?」
「え……」
笑いかけた私に、ノラクルちゃんが少し目を見開く。
あ、と口の端から言葉が漏れた。
うん? なんだろう。もう、目を瞑っててって言ったのにぃ。
次の瞬間、私は思いっきり扉を蹴った。鉄の扉だから非常に痛いし、大きな音がなる。
うわぁぁああああ! 足がびいいいんってなってる! いったい!
ノラクルちゃんがびくりと体をすくませた。
あぁごめん! 怖がらせる気はなかったんだ! ほんと、すぐ終わらせるから!
「うるせ、ぐぁっ!」
狙った通り、見張りが扉を開けた瞬間に回し蹴りを食らわせる。
よーうし、騒がないうちに気絶させたぞ。さぁ漁るべし。
足で蹴って見張りを部屋の中まで転がす。
いやほら。手が空いてたらちゃんと引っ張ったよ。私だって女の子だもん。おしとやかにね? ……………うん、多分、手でやったはず。
後ろを向いて倒れた見張りのズボンのおしり辺りを探る。
「イエスイエス! ビンゴ!」
叫んだ私は、ノラクルちゃんがパチパチと目を瞬かせているのに気づいた。
心底驚いたというのがまるわかりである。
始めてぼうっとしている以外ではっきりと感情を表した顔を見たかもしれない。
私は苦笑いした。
し、しまった。世のお嬢さんたちはこんなことをしないに違いない。そもそも護身術を習うという考え方すらないかもしれない。
「ノラクルちゃん。後ろ向いてこれ握っててくれない?」
「え……う、うん」
私はノラクルちゃんに握ってもらった短刀に手首の紐を擦り付けて切り落とす。
うし。これで晴れて私は自由の身だ。
ご満悦な私に、女の子から無慈悲な声が
かかった。
「…………お姉ちゃんは、男の人なの?」
はい?




