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月の入江  作者: 緋絽
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再びの白

お久しぶりです、緋絽と申します。

かなり長いこと放っていて申し訳ありませんでした。

それだというのに、次回はテストにより一月ほど延びてしまう可能性があります……。

なるべく書き上げますが、かなり遅くなってしまったらすみません…。




「赤い旗ってあそこか…」

店より少し遠いところから目的の店を確認する。

外から見る限りじゃ何の変哲も無い普通の飲み屋だ。でも時々開く扉から見える、中にいる見張りみたいなのが異常に柄が悪い。

そこだけ妙にちぐはぐだ。

私は深く息を吸った。

そうだ。注目を集めて追わせるだけ。正直どうしたらいいのかわかんないけど、やってみよう。

歩いて店の方に行くと、その周りを歩いていた人達の視線が次第に集まり始めた。

…………もしかして、ただの通行人だと思ってた人達も、見張りだったりするのかしらん。

え? 逃げられるの? これ。

ドアの取っ手を掴んで開けると、店の中の喧騒が一瞬静まった。

ひいいいい、何もしてないのにどうしてこんな注目浴びてるのよ! 図らずして目立ってるよ!

私はぐっと喉に力をいれた。

いいさ。やってやるとも!

「あ、あの……」

な、何て言おう。しまった何も考えてなかった。

「…………た、楽しいところに、連れていってもらえるって聞いたんですけど」

苦し紛れに出た言葉は、お馬鹿な少女らしいものだった。

ぐっ、グッジョブ私! さすが本番に強い子!

「…………それって、誰に聞いたんだ、嬢ちゃん?」

「えっ? あ、えーと、う、噂です!」

店の奥から赤い紐を腰に巻いた厳つい男が歩み出てくる。

私は怯えたように一歩下がった。

「噂?」

男が不審そうに首をかしげる。

はっ。もしかして情報規制とかしてて、絶対にばれないようにしてあったんだろうか。やばい、深く聞かれたら嘘だとバレる!

「あ、で、でも、違うならいいんです。お邪魔しました!」

男が何か言っていたが、聞こえなかった風を装って店を飛び出す。

これで、店を出るところまではアルベルトの言っていたようにすることができた。

多分、二人は近くにいるはずだ。

首飾りを握って魔力を流す。

「これから横道に入るよ」

『あぁ』

近道をしようとして迷った風を装い、私は横道に入った。

夕暮れ時の明るさが残っていた通りとは異なり、横道は薄暗くなって喧騒が遠ざかる。

あぁ、これは、危ないわ。

ブラブラしていると、肩を叩かれた。

───きたきたきたぁ!

「嬢ちゃん、さっきの子だよなぁ?」

「え?」

首を傾げると、少し苛立ったように男は眉を跳ねさせた。

「だからさぁ、楽しいところに行きたい子って、君だろ?」

「あ、はい!」

くそ野郎、簡単に女の子に苛立つんじゃない。

「じゃあ連れていってやるよ。オレ、知ってるからさぁ」

「ほんとですか!?」

心底嬉しいように笑って見せると、男が一瞬呆けたような顔をした。

おおう。私のような女でも、笑えばそれなりに反応が返ってくるのか。

…………なんかこいつがいいやつに思えてきた。

「お、おうよ。ついてきな」

言われた通りついていくと、さっきの店の裏に通された。

「ここで待ってな」

倉庫のような場所に取り残される。

今のところ、私以外に連れ込まれた子はいないようだ。

「あれ……アルベルト間違えた……?」

いや、でも、あんなところで声を掛けてくるなんて怪しすぎるし、間違ってはいないはずだ。


しばらくすると、ドタドタとした音が聞こえてきた。だんだん私のいる部屋に近付いてくる。

ドアが開いて何かが放り込まれた。

───子供?

そう思った瞬間に、中に男達が雪崩れ込んでくる。

「なっ…!」

何!? 何が起きてるの!?

腕を掴まれ反射的に払うと、今度は口を塞がれた。

くっ、掴まれたら逃げられないのに!

数人掛りで押さえ込まれ、口に何かを放り込まれる。

私はそれを呑み込んでしまった。

グラッと足元が覚束なくなる。

目が虚ろになり、急速に力が抜けた。

これは、ダメだ。変な薬だ。

ノックスの台詞が頭をよぎる。

消えかけの意識のなかで、放り込まれた子供の髪の色が白であったことを確認して。

私は、意識を失った。

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