予想外のことが多すぎて
どうも、緋絽と申します。
次回の更新が遅くなるかもしれません。あげられたらアップします。申し訳ありません!
簡素ながらも女の子な感じを醸し出すフンワリしたワンピース。なんと裾には小さな花があしらってある。
そして私は、ものすごい雑に黒くて長い髪のウィッグを投げられた。
絶対に鬘とは言わない。何か負けた気がするからね!
「10分やる。これを身に付けろ。仕上げは後でやらせる」
そう言ってレオンは私の目の前で扉を閉める。
───ガチな女装だーー!
私は一陣の風が心を吹き抜けていくのを感じた。寒い。
どうも、人身売買で拐われるのは女子供のみらしい。確かに、私が初め見たのは女の人ばっかりだった。
つまり、これは潜入捜査なのだ。
…………だからって、なんで私なの!
ノックス……は、無理そうだけど、アルベルトなら天使並みに美人なんだし、むしろアルベルトにやらせるべきでしょうが!
私はレオンの言いつけを守るためにのそのそ着替え始めた。
スカートなんぞ、制服を着てた高校生の頃くらいまでしか履いてない。
しかも、ワンピースだと? この私に喧嘩でも売ってるのか! こんな可愛いものを私に与えるなんて、もしやレオンは潜入捜査を成功させる気がないのかもしれない。
力を込めて握っていた拳を開く。
服がシワになっちゃうからね。ここだけでも乙女感出さないと、私終わりだからね。
着替え終わって扉を開ける。
くっ、ウィッグの髪が口に入る。これだからロングヘアーは!
八つ当たりぎみに前髪をかきあげる。
「ほう。着替え終わったか」
レオンの声がすぐ隣から聞こえて飛び上がる。
「おわっ! い、いたなら声かけろよ!」
「かけただろう、今。動くな」
上から下まで見比べられる。
私は緊張した。
私は女の子なはずだ。つまり、これが似合ってなかったら、もしくは違和感があったら、私は終わりだ。主に女子力の点で。
「…………まぁ、致命的に似合わないことはない。そこらによくいそうではある。これでいく」
そこは誉めろや!
もっと、こう! 選んだからには、どこからどう見ても女の子だ! くらいは言いきってほしいんですけど! ていうか、そうでなきゃおかしいんですけどね!
唸っていると、ひょっこりランセルが顔を見せた。後ろにロイさんを連れている。
「アッハッハ! ハァルキィ、似合ってるぜ!」
「そんな笑われて信じるわけないでしょうが!」
涙まで浮かべている。
最近思うことだけど、もしかしてランセルは人の不幸を楽しむタイプなのかもしれない。だって、レオンが私に回し蹴りされたのも大笑いしてたし。
「ハルキ、本当に似合ってるよ。驚いたなぁ。はい、こっち向いて」
ロイさんの方へ向き直されて、少し上を向かされる。
口紅のようなものを塗られる。
「うーん、ハルキは十分女の子に見えるし、あんまり化粧で誤魔化す必要ないなぁ。だろ? レオン」
「お前の判断に任せる。好きにやれ」
しょうがないな、とロイさんが苦笑して肩をすくめる。
やっとマトモに誉めてくれる人がいた!
「やっぱ普通こうだろ! お前がおかしいって、レオン!」
私の言葉にレオンが不機嫌そうに顔をしかめる。
「きちんと女に見えると言っただろう」
「そういうことじゃなくて!」
一応私は男として扱われてるんだから、もっと、こう! 自信持つようなこと言えや!
吠える私の顎を掴んでレオンは上を向かせた。
「似合ってる。綺麗だ」
ぎしりと固まった。
い、や。確かに、間違ってはいないんだけど。なんていうか、ロイと同じようなノリで言ってもらえればよかったっていうか。
「これで満足か。……早く行け」
我に返る。
よく考えたら、思いっきりあしらわれてる。
「───っ、失礼します!!」
私は廊下を靴音高く走り去った。
体が沸騰するように熱かった。
「うお、ハルキが女に見える。化けたなー」
ノックスの台詞に私は涙が出そうになった。
普段なら迷わずパンチを叩き込むところだが、さっきのことを思えば、ずいぶん良心的な本音に聞こえる。
「ノックス!」
「おわ、なんだよ、飛び付くんじゃねえよ」
ノックス、大好き! ここぞというときにまともな感じくれてありがとう!!
「アルベルト?」
「え? あ、いや……、すまない、あまりにもそれらしくて、驚いていたところだ」
ポカンとしていたアルベルトが表情を取り繕う。
「女は化けるっていうけど、お前もなかなかのもんだぞ。これなら問題なく拐われる女に見えるって」
ボスボス頭を叩かれる。
つまり、普段は見えないと言うことでしょうか? 殴るぞノックス。いや見えてたら困るけどさ。
「あぁ、よく似合ってる。クラモチ、少し寄れ」
「え? あ、うん」
微笑むアルベルトに近づくと首の後ろに両手が回り、顔の真横にアルベルトの顔がきた。
首筋をアルベルトの指が掠ってゾクッとする。
ぎゃあ、くすぐったいの弱いんだぞ!
「う、ひゃっ!」
首筋を押さえて勢いよく退がると、後ろに段差があったのに気づかずこけそうになった。
あっという間に腕を引かれて、今度は抱き込まれる。私は無我夢中でしがみついた。
この格好でこけたなら、ワンピースというものに慣れていない私は女子力皆無の体勢になってしまう。
「あ、危な……!」
目線をあげて、固まった。
天使のご尊顔を目の前にして、照れない奴なんているのか。しかもイケメンの所作付きだぞ。
つまり、私もご多分にもれず赤面したわけである。
「え……」
目を丸くしたアルベルトが、数拍の後に同じように顔を赤くした。
「な、な、何!?」
「あ、いや、首飾り型の伝達機をつけようと……、その、唐突に悪かった」
目を背けるアルベルトの頭をノックスが叩く。
ノックスも若干顔が赤い。
「なっ、なぜ叩く!」
「お前ら、巷の恋人同士か。見てるこっちが恥ずかしいんだよ。早く離れろ」
ぐあっと顔に熱がいく。
そんな言い方されたら、違ってても照れるわ!
あぁ、もう! 腰に添えられたアルベルトの手が気になってきた!
「ハルキも、女みてぇな声出すなよな。ただでさえちょっと女っぽいんだからさぁ」
ぎゃああああ!
私はアルベルトの手を取り、足を払って体制を崩したところを、腰に腕を回して抱き止める。
「───え!?」
「大丈夫か、アルベルト? あぁ、可哀想に、怖くて声もでないんだな。もう俺がいるから安心しろよ」
立たせたアルベルトに跪いて指先にキスをする。
ふっ、きまった。高校まで遊びでよくやってたイケメンごっこがこんなところで役に立つなんて。完璧男らしい。
「お前、アホだろ。それで男らしさ表されてもな。行くぞ」
「あだっ!」
頭をボスボス叩かれた。文句を言おうとしたらすでに歩き始めていて言いそびれる。
ううぬぅぅ、やるな、ノックス。
「ク、クラモチ、君というやつは、」
口をパクパクさせているアルベルトに笑いかけてみる。
アルベルトが絶句した。次いで顔を赤くする。
「さぁ、行こうか!」




