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月の入江  作者: 緋絽
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色なし

どうも、緋絽と申します。今回はわりと早く書けた気がします!



去っていく女の子の方をずっと見ている私に、ノックスが近付いてきた。

「あー色なしか。あの子も可哀想にな」

ノックスの言葉に聞き慣れないものを聞いて私は彼を見上げる。

「色なし?」

「まさか、知らないのか?」

後からきたアルベルトが目を見開いた。

な、何? もしかして、これも常識?

だって、今まで誰も言わなかったじゃない。

「う、うん」

「お前さ、それもう田舎だからで許される範囲じゃねえよ。むしろ田舎の方が差別酷そうじゃねえか」

ノックスがガリガリ頭をかく。

「まぁまぁまぁ。色なしって何だよ?」

うーんとノックスは呻いた。説明しづらそうだ。

「あーまぁ、なんつーの? 髪の色の濃さで魔力量が決まるっつーのは知ってるだろ」

そうなの!?

驚愕を露にするとアルベルトに逆に驚かれた。

「それも知らないのか!?」

「い、色々ありまして!」

めんどくさいからもう“訳あり”な感じを押し出そうと思います。

案の定アルベルトはハッとした顔をした。

「す、すまない。そうだった」

いやーーー! こっちこそごめんねアルベルト! 君は悪くない!

「髪の色が濃いほど魔力量は多くなる。つまり、その逆は少ねぇってことだ。後はまぁ、わかるだろ」

そして口を閉ざしたノックスにコクリと頷いてみせる。

魔力が命を構成してるなら、それが少ないってことは元から体が弱いってことだ。つまり放出するだけの魔力が少ないために、本来なら発動できる魔法が使えないのだろう。魔導式の道具を使うのも精一杯なはずだ。

貴族でも平民でも、それは役立たずとして扱われているに違いない。

「色なしって言うのは、そういう者達の蔑称だ」

サクッと言ってしまうアルベルトに衝撃を受ける。

そうか。この世界では、魔力がすべて。

魔法がなくても生きていけることを知らないんだ。そしてだいたい中世くらいの文明。食料事情とか考えたら、疎まれるのは当然の成り行きだったのかもしれない。

…………でも、実の親まであんな風に言うなんて!

「色が濃いほど魔力量が多いって……」

私はそう言いつつアルベルトを見上げた。

アルベルトは輝く金髪だ。

これは薄いことにならないのかな? 普通なのかな。

次いでノックスを見て、首をかしげる。

そう言えばあの銀髪、ノックスが魔力量が少ないみたいな言い方をしてた気がする。

でもノックスって、大分濃い緑の髪だけど……。

私の視線の意味を理解したのか、少しだけノックスが顔を歪めた。

「………いいんだっつの、俺は!」

ボスボス頭を叩かれる。

ちょ、ちょっと。何故に怒られる!?

文句を言おうとして遮られる。

「魔力量で言うなら、この中ではクラモチが断トツだと思うが? 黒髪なんて、僕はカエンベルク隊長しか見たことがなかったぞ」

「え、そうなの?」

言われてみれば確かに、街中で濃い色の髪の人はあんまり見ない。黒はかなり濃い部類だし、そう考えるとなんだか自分だけ浮いてる気がしてきた。

うう、違うんだ! もとの世界にはいっぱいいるんだよ! 私がすごいわけじゃないんだ!

「え、どうしよう。髪とか隠した方がいい?」

「いや……隠さなくてもいいと思うが。 魔力が多いからといって、英雄視されることは滅多にないからな」

それを聞いてホッとした。

戦争とかまだないみたいだけど、そんなので表舞台に立たされるのは真っ平ごめんだ。

「まぁ、破格だとは思うけどな。俺に魔力分け与えられるのもすげぇけど、分け与えても一晩寝れば戻るってなんだよ。お前、気持ちわりぃわ」

えぇ!?

「ひど! ひどくね!?」

いや、ノックスの魔力の枯渇は私のせいだけども! それでも一応、私はノックスを助けた人のはず! もうちょっと優しい言い方でもよくない?

「アークライト……いくらなんでも気持ち悪いはないだろう」

アルベルトがそう困った顔でたしなめる。

アルベルト、優しい!

うんうん頷くと、ノックスは気にも留めずに盛大に鼻で笑い飛ばした。

「でも、グリーンもそう思ったろ?」

ぐ、とアルベルトが言葉を飲み込んだのを見て、私は叫ぶ。

「アルベルトの裏切り者ぉぉおおお!」

ひどい! 気持ち悪いって何だよ!

「ご、誤解しないでくれ! 気持ち悪いとは断じて思ってない! ただ、異常だと思いはしただけだ!」

「で、気持ち悪かったろ?」

ノックスがにやっとして聞く。そしてアルベルトが詰まった。

「うわぁああああ!」

頭を抱える。

ノックスの意地悪! 胸の中に秘めといてくれればいいじゃんか!

「ま、元気なようでいいじゃねえか。お前寝てる間、包帯ぐるぐるだし、その上…………あーまぁ、顔色悪かったし。回復してよかったな」

ボスボス頭を叩かれた。

う、今ちょっとキュンときた。

「そういえば、包帯巻いてくれたのって……」

「あぁ、…………ガルセク医師だ」

ん? 今の何の間?

言い淀んだアルベルトに首を傾げたが、まぁいいやと思うことにする。

それよりも、ぽんと思い付いたことがあった。

肩の手当てって、服脱がないとできなくね?

ふと思って、手汗が滲んだ。

あれ? だって、騎士団の制服はボタンを外して着られるやつじゃなくて、Tシャツみたいに頭を通さないと着られないやつだ。

血の気が引く音が聞こえた気がした。

優しい微笑みを浮かべる少年───ブランの顔が浮かぶ。



もしかしたら。それも、かなりの確率で。

───ブラン君は、私が女だと気付いているかもしれない。

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