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月の入江  作者: 緋絽
3/84

隊長

お久しぶりです! 長く空いてしまってすいません!



現在、さっきまでいたところの一つ上の階の部屋に移動して待たされている状況であります。どうやらあそこは地下だったらしい。

部下らしき人に指示を出し終わったらしい男が再び隣に戻ってくる。

来るな! あっち行け!

「名は?」

「名前? あー。………ポン吉だよ、ポン吉」

いやだってね。本名言って変なことに使われても困るしね!

「おいクソがき。俺はお前の名前を聞いたんだ」

なぜ嘘だとわかった!

驚愕した私を見てバカにしたように男が鼻を鳴らす。

クッ、その表情が似合うことさえムカつく。この男、無駄にでかいだけでなく、無駄に野性味溢れる美形なのである。

「実にかまのかけがいがある奴だ。分かりやすくて助かる」

死ね!

「人に聞くときは自分から名乗るもんだろうが。ママにそう教わらなかったのかよ」

ヒー! 男子の使う言葉ってわかんない! 違和感ないよね!? ないって誰か言って!

私の台詞に男が面白いとでも言いたげに片眉を跳ね上げた。

「偽名は簡単に口に出したくせによく言えたものだな」

そう言って男が俺の腕を掴む。

うう、それはあれだ。何も考えてなかったとか言ったら駄目なんだろうな!

「まあ無理矢理言わせても構わんが? 大人しく言った方が身のためだとは思うがな。お前も、拷問は嫌いだろう」

男が妙に最後辺りの台詞に力を入れて言い放つ。―――まるでそう言えば痛みが走るかのように。

特に何の反応も示さない私を見て、男が若干瞠目した。

「? 何だよ」

「………いや」

思考モードに入ったらしい男を見てちょっと可哀想になる。

え、何よ。そんなに名前知りたかったわけ? 教えてくれないから推測して当ててやるみたいな? ごめんって、いじめみたいなことして!

「言う言う、言うから! だから帰っといで!」

「は?」

私の不可解な言動に男が首を傾げた。

「倉持春紀、それが、わ……俺の名前な!」

「クラモチハルキ……聞き慣れない名だな? 姓がクラモチか?」

「そうそう。じゃないと英語読みになっちゃうだろ」

再び男が深く首を傾げる。

「エーゴ? なんだそれは」

「またー!」

いや、皆まで言わずともわかってますとも! そういう設定なんですよねわかります。

いやーしかし、火が出たり土の手がでたり、やけに最先端の技術を駆使したRRPGだなぁ。あんまりにもリアルだから思わず性別偽る発言しちゃったし。

「……何故かお前に対して異様なほどのむかつきを覚えているが、まぁそれはいい。ではクラモチ、聞かせてもらおうか」

絶対零度の目で男が見てくる。

あら? なんで怒ってんのよ。

「何を?」

「お前がこんな所にいるわけに決まってるだろう。お前も商品・・か?」

その言葉に思わず私の中の何かがブチッと切れた。恐らく世間一般で言うところの堪忍袋の緒という奴である。

言い忘れていたが、この部屋には私が逃がそうとした女の人達が一緒にいる。

何なの、この男。私を商品っていうのもアホな話だけど(売れるわけない)、……商品だと!? この女の人達の前でっ、今まさに売られそうになっていた人達の前でっ、なんっつーデリカシーのなさ!

「まぁ、顔はそこそこだから、女か特殊な性癖の貴族になら……」

「ざっけんな!」

私を観察し始めたこのデリカシー無男に向かって、―――私は、回し蹴りをくらわせた。

そしてそれは、見ていて気持ちいいほど見事に相手にぶち当たった。あまりのクリティカルヒットに、思わず周りの人達が拍手を送ったほどだ。

私は握りこぶしを作って親指をたてしたに向ける。言わずと知れた“Go to hell !”である。

「わ……っ、俺が商品だって!? ふざけんじゃねーよ! このっ冷血漢っ、お前なんか一度女にこっぴどくふられちまえ!」

ちなみに空手の県大会で私は優勝している。大の男相手にそこそこ立ち回れたのは、すべてではないが、それが理由の大部分を占めていると言っていい。

そのため、まともにくらった時の衝撃は半端ではないと自負しているのだが―――この男、よろめいただけで倒れなかった。

チッと音高く舌打ちをする。きっと、相当な極悪面だったことだろう。

こめかみ狙えば良かった。

「……ほう?」

男が地獄の鬼も裸足で逃げ出すような目を私に向けた。

思わずビクッと体が跳ねる。

な、何よ。そのマジもんな感じの目は!

周囲がざわめいている。

その中で、「隊長に回し蹴りくらわせやがった……」だの、「あいつ、隊長にやるだなんて勇気あるな」だのという台詞が聞こえた。

隊長?

「いや、この俺に回し蹴りとは恐れ入った。あぁ、申し遅れたが」

物騒な笑みを引っ提げて、男がかえって慇懃無礼なほど優雅に腰を折る。

笑ってるくせにちっとも心休まらない。むしろ身の危険を感じるのは何故だ!

「名をレオン・カエンベルクと言う。こう見えて、王国騎士団二番隊隊長を務めている。以後見知っておく必要があれば、お見知りおきを?」

最後に疑問系になったのは、あれか、その“以後”の時まで生きてたらとか、そういう意味か!


なかなか終わらない……。

次話、やっと話が進む予定です!

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