助かった?
まさかこんなに早くお気に入り登録をしていただけるなんて思っていませんでした! ありがとうございます! 嬉しくて泣きそうです!
短いですが、2話、どうぞ!
ザワリと周りが騒々しくなる。
「なんだ今のは……」
「炎の球が消えたぞ……」
男達が気味が悪そうにこちらを見てくるが、私はそれどころではなかった。
今の何!? ま、幻!? そうか、幻か!
無理矢理納得して、とりあえず逃げようと少女の側に屈む。
「立てる!?」
「あっ、あのっ、手も足もっ……!」
土でできた手らしきものがガッチリ少女を押さえ込んでいて、身動きひとつ出来そうにない。
「クソッ」
叩いたり蹴ったりするが、崩れない。
「わっ、私は、置いて行ってください! もういいですから!」
泣きそうな顔で叫ぶ彼女に、知らず唇を噛んだ。
そんなことを言わせてしまった自分が、悔しかった。
「助けるって言ったじゃん。私は、助けるって言ったら助けんの!」
土の手を握る。
これさえ崩れれば、一緒に逃げられるのに。どうして殴っても蹴っても壊れないんだろう。
後ろからバタバタと走ってくる音が聞こえる。
その音に、気持ちだけが焦る。
お願いだから今すぐ崩れて! 彼女を離して!
そう心の中で叫んだ瞬間、自分の掌を通してじんわりと温かいものが土の手に流れた。
その感覚に驚いて手を引っ込めた瞬間―――びくともしなかった土の手が全て、呆気なく崩れた。
「! やった!」
なんでか崩れた!
彼女の手を掴み引っ張りあげて起こし、そのまま走り出そうとして阻まれる。再び彼女の足が土の手に捕まったのである。
そして、背後に剣を振り上げた男が見えた。その切っ先には、私ではなく少女がいた。
足の裏からゾワリとしたものが這い上がってきた。
彼女を突き飛ばさなきゃ、ううん駄目だ、だって足、固定された。さっきみたいに叩いてる暇なんてない―――。
頭で考えるより先に体が動いた。考えたら、それは自分が代わりに死ぬだけだと気付けただろう。アホな私だからこその選択とも言える。
私は、咄嗟に彼女を頭から覆うように抱き締めた。
迫り来る衝撃を覚悟して固く目を瞑る。
その瞬間、ギャアと悲鳴が響いた。
「全員、捕縛しろ。一匹も逃がすな」
腰に響くような重低音の声が頭の上から降ってきた。
その声に目を開けると、振り上げられていたはずの剣は地面に落ちていて、男達も倒れている。
そして目の前には、黒髪の男が冷静に指示を出しながら立っていた。
「え……?」
なんかよくわかんないけど、とりあえず命の危機は去ったの?
少女の足を見ると土の手が崩れていた。
ホッとして少女から体を離してしゃがみこむ。
「助かった……!」
安心したら一気に手汗が滲んできた。
いや、今になって考えると本当にヤバかった。よくぞ生きてた、私。
私の声に、男がチラリとこちらに目をやって、興味無さげに逸らした。
「この少年もだ」
「は!?」
なんで!? ちょっと待ってよ! つーか、また男に間違えられた!
そう反論する間もなく腕を掴まれる。
「ちょっ……!」
「ま、待ってください! その人は関係ありません!」
さっきの少女が、私を捕まえた男に追い縋ってそう言ってくれた。
「わ、私達を助けようとしてくれたんです! その男とは、関係ありません!」
ありがとー! いい子だねー!
「本当か?」
疑わしげに男が見下ろしてくる。
クッ、無駄にでかい体しやがって! これはあれか、私をバカにしてんのか!
初対面から捕まえようとしてきたため、私のこの男への評価は最悪である。
「当たり前でしょ! 誰が好き好んで人身売買なんかに加担するわけ!? あんたバカなの、このコスプレ野郎が!」
私の剣幕に男が眉をひそめる。
「コスプレ?」
だって、本当にそうなのだ。
西洋あたりの中世風騎士的な格好で、RRPGでもやってんのかとつっこみたくなる。
うわ、もしそうだったなら、デブのおっさん役とムキムキ役の人達、なんか申し訳ない。
「なんのことか知らんが、お前の方こそおかしな格好をしてるぞ。それに女のような喋り方をして」
そこまで言って、男がはたと止まった。
驚いたように私の顔をマジマジと見つめる。
「お前、もしや、女か」
んまーなんっつー失礼な奴なんだ!
当たり前だと怒鳴り返そうとして、思いとどまる。
ちょっと待て。もしRRPGでもなんでもなくて、有り得ないけどマジもんなんだとしたら、私も女だとわかった途端に売られそうになるんじゃないの? コスプレ野郎も助けにきたのかいまいちわかんないし……。
「ま、まさか! 俺は男だ! 何言ってんの!?」
高笑いとバカにしたような笑みを提供してみる。
「そうか」
切り抜けた! ジャージ、グッジョブ!
ホッと息を吐いた私に、コスプレ野郎が鋭く目を光らせたことに、私は気が付かなかった。
次は時間が空くかもしれません。