衝撃の事実
お、お久しぶりです! 緋絽です!
今後はさらに更新が遅くなる予定です……。いや、書けるなら書きますが。ご容赦ください。
「つーか、隊長も副隊長も、なんでお前の入団許したんだろうな。しかも伝令役だろ?」
翌日、再び馬の訓練中にノックスがそう言った。
「あーそれは、ちょっと色々あってね」
なんか、魔法がどうのこうのって言ってたなぁ。魔法が効かない魔法だっけ?
そう考え込んでいる間、当然私は無言だった。
それを見て、ノックスは都合よく勘違いしてくれたらしい。
「あーいや、言いたくない事情なら聞かねえから。悪かった」
「え? いや別にいいんだけど」
どうやら傷痕のことも相俟って、私は特殊な事情のある奴だと思われているようだ。
うーむ。どうしたものか。
お風呂についてはこれが都合いい。あれっ、もしかして故郷のこととか聞かれたら、このような類のことを言って躱せばいいんじゃない!?
やだ、私冴えてるかもしんない。
「……そういや、ハルキ、お前魔法使えんのか?」
ノックスが唐突にそう言ってきた。
「え、あーどうなんだろ。隊長によると使えるらしいんだけど、俺それよくわかんなくてさ」
「はん? 何それ」
ノックスが見上げてくる。
わけがわからないという顔をしているが、私も意味わかんないんだって。
「ノックスは魔法使えんの?」
「あぁ、まあ。脅かし程度にしか使えねぇけどな。騎士団で使えねえ奴なんかいんのか?」
え、皆さん使えるんですか。
や、やばい。さらに条件から外れていっている気がする。
「えーと、なぁ、おいグリーン殿。あんたも魔法使えるんだろ」
遠くで乗馬しながらの戦闘訓練をしていたアルベルトをノックスが呼ぶ。
それに気付いたアルベルトが馬を寄せてきた。
「グリーンで構わない。そこそこは使える。流石に自在にはいかないが……騎士で使えない者なんているのか?」
あぁ、常識みたいになってるんですね。
「いるいる。こいつとか」
「え?」
ノックスの言葉にアルベルトが目を剥いて私を見た。
ひぃ、ごめんなさい!
「君は、なんというか、よくそれで騎士団に入団できたな」
「だよなぁ」
ウンウン頷くノックスが憎い。
「使う時って、その、魔力? 感じたりする?」
「おー。なんか温いもんがにじみ出る感じがするな。…………ん?」
ノックスがきょとんと私をみる。
「魔力感じるのって、万人共通なんじゃねえの?」
そ う な ん で す か !
あぁぁ私、魔法使えない! レオンの嘘つき!
「お、俺、魔法使えないかも」
「何!?」
アルベルトが再び目を剥く。ひぃ、ごめんなさい!
「かもって、もしや使ったこともねえのか!?」
頷くと、ノックスは呆れたように溜め息をついた。
うううごめんなさい。でもしかたないと思うんだ! 魔法ない世界に住んでたからさ!
「どうやんの?」
「あー? こうやって、集中して掌に魔力を集めて」
魔力集めるってどうするんですか! まず魔力すら感じないんですけど!
ダラダラ汗をかいている私をよそに、あれ? とノックスが首をかしげる。
「集まれ」
そうノックスが口に出した。
え、何? 集合しろって? こんなに近くにいるのに何言ってんのよ。
「…………あ?」
ノックスが立ち止まったので、同じように馬も立ち止まった。
「どうした?」
「なんか、端から消えてなくなるんだけど」
「何が」
「魔力」
え?
魔力が消えて無くなると聞いて、レオンの言葉を思い出した。
魔法が効かない魔法。
―――この距離では、発動すらしないらしい。
もしや。
「……な、なぁノックス」
「あ?」
青ざめて考え込んでいたノックスが私を見上げる。
私はなるだけ不自然でないような笑みを浮かべた。でも恐らく、唇の端が痙攣しているだろう。
「魔力って、意識しなきゃ垂れ流し、そんでもってずっと発動してるとか、ないよな」
「あーあるぜ。子供はそうだろ。だから親に教えてもらうんじゃねぇか」
お前何言ってんのとノックスにバカにされた。
むかついたが、私はさらに衝撃の事実に内心動揺しまくりだった。
ま じ で か!
じゃあ、あれってこと? 私は常に魔力を垂れ流しにしてて、だからレオンもあの時魔法を発動できなかったの?
ということは、アルベルトと決闘した時も、私の魔力が漂っている範囲にアルベルトの炎が入ったから消えたの?
「解除!」とかって叫んだけど、いらなかったの? わぁ恥ずかしい!
え? じゃあ、今も私は発動してるってこと? まったく、何も感じないけど。
「教えてもらえなかった子供の末路は、ちょっときついものがあるな。魔力が枯渇して最悪死亡だ」
え。
私の世界の時間が止まった。