ま ず い !
おひさしぶりです。緋絽です。
短いですが、どうぞ!
声の方を見ると、アルベルトが眉をひそめて立っていた。
「グリーン殿……」
「そうだ! グリーン殿も、こいつ気にくわないって仰ってましたよね! さっきは、こいつが得物以外のものを使ってズルしたから負けてしまいましたが、剣の実力ならグリーン殿の方が上ですよ!」
何っ、得物以外を使っちゃいけないなんて聞いてないけど!? そんなルールあったの!?
「そんな規則はない」
アルベルトが再び眉をしかめながら答えた。
「でもっ、それは暗黙の……!」
「そんなものがあるっつーのは初耳だわ、俺」
ノックスが私の背後から言う。
「そんな奴、けちょんけちょんにしてやりましょうよ!」
男達が言った言葉に、私も血気盛んに言い返す。
「上等だ! やれるもんならやってみろ!」
ていうか、待って、けちょんけちょんはつっこみたい! まさか、こんな険悪なムードで出てくる言葉とは知らなかったわ!
「伝令役、ちょっと黙ってて」
ノックスに口を塞がれる。
何すんの! 私はやられる前にやる派なのよ!
「僕は、彼に決闘で負けた。得物しか使ってはいけないという規則もない以上、それは覆せない事実だ。貴様ら、実戦時に敵が得物以外のものを使ったから負けましたなどと、大層間抜けなことを言うつもりじゃないだろうな?」
アルベルトの台詞に男達がグッと詰まる。
あれ、アルベルト、意外にも現実的。てっきり嫌われてるからあっちの味方になるかもって思ってたんだけどなぁ。
「…………ふざけんなっ、こっちはあんたのためを思って言ってやったのによ!」
バタバタと走り去っていく男達の後ろ姿を見送った後、ポツリとアルベルトが呟いた。
「頼んだ覚えはないが、余計な世話だ」
ブッと思わず吹き出した。それがすべて私の口を塞いだままのノックスの手に襲いかかる。
「おまっ、汚ぇ!」
ノックスが全力で私を叩いた。
「ご、ごめ、いやあんまりにも真顔で言うもんだからつい」
私はアルベルトを見る。
いや、初めにボロクソに言われたからあんまりアルベルトには良い印象なかったんだけど。今、急上昇だ。
「助けてくれてありがとな、えーと、グリーン様?」
いや、心の中ではアルベルトと呼んでいるけれども。
どうやら彼は貴族らしいし、やっぱり敬称つけたほうがいいんじゃないかなぁと思ったわけです。
「グリーンで構わない。君と僕では、隊内では君の方が上位だろう」
「いやいや、俺も新人じゃん。ある意味グリーンと同期でしょ。アルベルトって呼んでいい?」
「……あぁ……」
笑いかけると、アルベルトが眉尻を下げて苦悶の表情をした。
え、何!? 嫌なら嫌でいいんだけど!
「すまなかった。朝、僕があんなことを言い出さなければ、あいつらもこんなことはしなかっただろう」
朝? と首を傾げ、決闘のことかと思い至る。
「いやぁ、いいよ。馬の骨はちょっとむかついたけど、だいたい本当のことだし、アルベルトが言わなくても他の人が言ってたって」
馬の骨という単語にアルベルトがばつの悪い顔をする。
「す、すまない。僕は、傍目から見るとあいつらみたいだったんだろうな」
「あーそりゃもう。妬み丸出しだったぜ」
ノックスが欠伸をしながらそう言った。
ちょ、君! そんなこと本人前にして言っちゃ駄目でしょ!
「こらー! 何言ってんの!」
「ほんとのこったろー? まぁでも、あいつらみてぇに、自分の間違いを認められねぇような奴じゃねぇとは、思ってたぜ」
フ、とノックスが笑うと、複雑そうにしていたアルベルトが観念したように笑った。
「君は、本当に、嘘をつかないな」
「俺、遠回しに言うの苦手なんだよ。悪いね」
あれ。なんか二人とも仲良い?
「二人はお友達ですか」
「え?」
「はん?」
二人同時に見つめられる。
ちょ、やめて。片方は明らかな天使顔な上に、もう一人は目を引くようなイケメンじゃないけど、そこそこ整っていらっしゃるのだ。そんな二人に見つめられたら、心臓が持ちません。
「あーいや……友達っつーか、なんつーか」
「あ、あぁ。宿舎で部屋が隣同士で、だからよく顔を合わせるんだ」
顔見知り程度ですか。なんだか気を使わせてすみませんね。
宿舎?
「へぇ、宿舎なんてあるんだ」
「え?」
「はん?」
え、なんだろう、デジャヴ。
「何言ってんだお前」
ノックスの視線が痛い。バカかと言っているのがひしひしと伝わる。
「え、な、何?」
「もしかして、知らないのか?」
アルベルトが首を傾げた。
だから何を!
「騎士団員はほぼ全員、宿舎に入るんだよ。あと、俺とお前、同室」
隊長から教えてもらわなかったのかとノックスが尋ねてきたが、私はそれどころじゃなかった。
はい!?
次回、更新が遅くなると思われます。
作者の課題進行が非常に遅いせいです! 申し訳ありません!