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月の入江  作者: 緋絽
12/84

水を被って

まさかの連日投稿!

きゃっほーう!




「なんでお前みたいなのが伝令役になるんだよ」

後ろから足元にバケツが転がってくる。

頭からボタボタ滴れる水滴が冷たい。

何が起こった?

周りを数人の男に囲まれる。私や少年と同じように、騎士団の制服を着ていた。

なるほど。状況が読めた。

伝令役になりたかったらしきこいつらに、伝令役になった私が水をかけられたわけか。―――レオンの独断のせいでっ!

「なぁ、さぞかし鼻がたけえだろう? 伝令役さんよぉ」

「別に」

目にかかる前髪をかきあげて返事をすると、へぇと驚いた風な顔をされた。

「なるほどなぁ。そのカワイイお顔で伝令役に任命してもらったわけか」

「はぁ? お前ら、何言ってんの?」

カワイイお顔とは何ぞや。おま、この顔見てカワイイとか言えるのか。男と間違われるような顔なんだぞ。

「腕も女みてえに細いしなぁ。ほら、どうやったか俺らにもやってみろよ!」

ゲラゲラ笑う男達に心底呆れた。

バカにしてるつもりらしいが、私、本当に女だもん。そんなからかい、反応のしようがないでしょうよ。

溜め息を吐いてシャツの裾を絞る。ポタポタと水が滴った。

こいつら、私が色仕掛けだかなんだかをして伝令役に就いたと思ってるらしい。

実際は無理矢理なのに! 遺憾だ、非常に遺憾です!

それじゃあ、まるでレオンが私を好きみたいじゃないか。ないない、私に女の魅力は皆無なんだか―――待て!

そこまで考えて愕然とした。

そうだ! 私、今男のふりしてるんだった!

てことは、あれか。レオンは、男色ということになるけど!

「伝令役、伝令役。お前が考えてること、間違ってっから」

緑の髪の少年がそう言いながら、私と男達の間に入ってきた。

「おら、ふけよ」

ベシィッとハンカチらしき白い布を頭に投げ付けられる。

「うあ、あっ、ありがとう」

この緑の髪の少年、いい人だ!

「なんだよノックス。お前、こいつのこと庇うのか」

「せんぱーい、騎士たるものがネチネチしたいじめみてえなことやってんじゃねえっすよ。そんなんだから選ばれねえんだよ」

ガリガリと怠そうに頭をかいてノックスと呼ばれた少年が答える。

「あぁ!? 平民のくせに、偉そうなこと言うな!」

「―――あ?」

ノックスの表情がスッと消えてなくなった。ノックスが掴みかかろうと男に腕を伸ばす。

それと同時にノックスを貶した男に私のアッパーが炸裂した。

拳を頭上の遥か上まで振り上げて、足をクロスさせている私のポーズは、最高にきまっていた。

「…………お、おい」

「ふっざっけんなっ、この野郎!」

顔に縦線を入れて私にチョイチョイ招き手をしているノックスを華麗に無視して、私はノックスを貶した男に掴みかかる。

「彼は、俺にハンカチをくれるような素晴らしいお方だぞ! そんなお方を侮辱するたぁ、万死に値する!」

私のギラリと光る目に、男が若干怯む。

頭を後ろに引いて、思いっきり頭突きした。

「おいーーー!」

ノックスがガシリと私を後ろから羽交い締めにした。

「はーなーせーー! 目にもの見せてやる!」

「目にもの見せる前に気絶してっから! 落ち着け伝令役!」

フシャー! と猫のように威嚇する私を見て、残りの男達が殺気立つ。

「おいお前ら、ただで済むと思ってるのか!」

「お前らって、あれ、巻き込まれたくねえか俺」

ノックスが背後で冷や汗をかいている。

ごめんね、ノックス君! 君には傷ひとつつけずに元の場所へ送り届けるとも!

険悪な雰囲気になりかけた私達の間に、聞き覚えのある声が響いた。

「貴様ら、いい加減にしろ」


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