あっつい!
今回はわりと早めに更新できた気が! ビバ、自分!
あの後渡された騎士団の制服に着替えた。
制服は黒のジャケットとベストとズボンに、白いシャツだった。ボタンに騎士団のマークが刻まれていてカッコいい。
やだ、役得かもしんない。意味違うかも。
「そんで? 俺は何すればいいんですか?」
レオンの執務室に移ってからそういうと、返事の代わりに床を指差された。
敬語使ってる? そりゃね、一応上官だからね。
それにしても、何だろう? 這いつくばれと? わあ、むっかつく!
「見ろ、クラモチ。お前の目には何が見える」
その問いに首を傾げたくなる。
何って、床でしょうよ。
「床?」
「その上だ」
上?
「…………紙くずでさぁ隊長ー」
「その通りだ。残念なことに、この未開拓地には処理済みと未処理の書類が入り交じっている」
未開拓地って。……まさか!
「ま、まさかですけど、しばらく触ってないとか、ないですよね」
私の言葉にレオンが唇を歪めて笑う。
「そのまさかだクラモチ。流石に異世界人は察しが早いな」
いや、これ誰でもわかるでしょ! 何を満足げにしてるのよ!
「今日中にこの散らかった未開拓地を人間が住める場所に戻せ。書類とゴミの選別は任せる」
今、なんと仰った!
「は!? まっ、待て、待ってください! そこは、俺の判断で決めて良い領分じゃないでしょ!?」
噛みつかんばかりに言うと、レオンはギシリと音をたてて椅子に座った。
「構わん。そう大した案件は転がってない。重要なのはロイが拾ってるだろう」
レオンが丁度部屋に入ってきたロイを見る。
なんと! ロイ、いやっ、ロイさんはこの野郎の最後の要だったのか!
「…………たいへん、お疲れ様です、副隊長」
「え、なんだ? あ、ありがとうハルキ」
ロイさんが苦笑してきた。
あぁ、困った顔のイケメンって、すごく良いと思う。ロイさんまじでいい人。それに比べ、極悪非道なうちの隊長様はよ!
レオンにガシリと頭を掴まれる。
「失礼なことを考えているだろう」
「い、いや、そんなことは」
なんか、前にもこのやり取りやったな!
「お、重い」
ゴミでいっぱいになった箱をズルズル引きずりながら焼却炉へ向かう。
流石にビニール袋やダンボールというものはないらしく、いちばん軽くて手頃なサイズの木箱に紙やらなんやらを詰めて運んでいる状態です。まぁ、木箱だから既に重いという、何これ意味不明。
「くっ……レオンめ、さては私に恨みでもあるな?」
もう私はジャケットを脱いでベストになり、袖まで捲り上げてやった。汗が滲むよーおかあさーん。
焼却炉について蓋を開けると、もうしばらく使われていない感じに埃がたまっていた。
燃えるのか、ここで。
ていうか、これしばらく使われていないっていうより、もう使われていないレベルじゃないの?
休憩のつもりで焼却炉の前に地面にお尻をつけないように座り込む。
「そういえば……」
レオン、また名字で呼ぶようになってたなぁ。
そこに思い至って、少し残念な気分になる。
折角、ハルキって呼んでくれてたのに。もしや、私を騎士団に入れるためにわざと呼んだわけじゃあるまいな。自分の顔が私のどストライクだと、まさか知ってるのか。
はっと我に返る。
いや、まるでこれじゃあレオンに呼ばれなくなったことを寂しがってるみたいじゃない。
「えーっと、火は……」
周りを探してみたが、マッチらしきものは見つからない。
しまった。もとの世界とこっちとでは火の付け方が違うのかもしれない。レオンに確認しとくべきだった。
「付け方がわかんねえのか?」
男の声がして背後を振り返ると、同じか少し歳上ぐらいの濃い緑の髪の少年が、かったるそうに頭をガリガリと掻いて立っていた。
アルベルトも同い年に見えたけど、こっちの方が骨格がしっかりしている。
「あ、うん」
「どいてみ」
追い払うような仕草をされたので、おとなしく焼却炉の前からどく。
少年は焼却炉と地面との間にある隙間に手を突っ込んで綿のようなものを取りだし、それを握りこんだ。
指の隙間から煙が漂い始める。
「おら。火種だ」
少年が手を開いて中を見せてくれた。綿のようなものが全体的に赤い火を纏っている。
「おわぁ!」
私は慌てて少年の手から綿のようなものを叩き落とした。
「あっ! 何してんだよ!」
少年が眦を吊り上げて怒る。
いやいや! 君! 掌を火傷してないか確認しなさいよ!
「てっ、手は!? 火傷してない!? 大丈夫!?」
「え? あぁ、そういう……」
呆れたように少年が溜め息を吐いて、地面に落ちた綿のようなものを拾い焼却炉へ放り込んだ。
手は? 平気なの?
「あれは自分の魔力を吸収して発火してっから、自分を攻撃しねえんだよ。だから、火傷もしねぇ」
ほら、と掌を見せてくれる。
「これ知らねえって、お前どんな田舎に住んでたんだよ」
異世界です、うふ。
曖昧に笑って誤魔化すと、少年は肩を竦めて立ち上がり、バフバフと私の頭を叩いた。
「まぁ、いいけど。じゃーな。頑張れ、伝令役」
「えっ、手伝ってくんないの!?」
私の言葉に少年が振り返って、ニヤリと笑う。
「俺、まだ訓練あるし? 火の付け方、教えてやっただろ」
訓練?
首を捻った私を置いて、少年が手を振りながら歩き去ろうとして。
バシャリと大量の水が、背後から私にぶつかった。