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月の入江 作者:緋絽
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ここどこ!!

どうも、緋絽と申します!
新作、異世界トリップものです!
その日の私は最悪な出で立ちだった。
部屋着のジャージ(前がチャックのちょっと かっこいいやつ。突然の訪問にも対応できる という、素晴らしい高性能っぷりである)で コンビニへ行こうとスニーカーをつっかけて外に出た。
ショートにしている髪が冷たい風に煽られて暴れる。
「寒っ…!」
私―――倉持春紀くらもちはるきは早足でコンビニに向かっていた。
愛しの肉まんとホットコーヒーにありつくためならば、寒さだって耐えてみせよう。
パサッと音がして足元に目を向けると、スニーカーの紐が解けていた。
「あーあ」
屈んで靴ひもを結び直したところで―――顔をあげると、何やら見たことのない風景が広がっていた。
「……え!?」
筋肉ムキムキの男達が腰に剣らしき物を提げ、地面に膝をつけて手を縛られている女の人達を見張っている。
女の人達は皆疲れたように俯いていて、何だか絶望しているように見えた。
え、何、この展開。待ってよ、まったくついていけない!
その女の人達は舞台の上に一人ずつ立たされ、順番に服を脱がされている。着ていたワンピースのようなものの下は真っ裸で、隠すものなどなかった。
「ちょっ……、何で、急に……っ」
女の人の服を脱がせ始めるの!?
裸になった女の人達を、でっぷりと太った嫌らしい顔をしたおっさんが吟味するように眺めている。よく悪役で起用される小者のような風貌である。
私が混乱して動けずにいるうちに、一人の少女が服を脱がされるのを嫌がった。
「い、や……っ! お母さんっ、助けて!」
その少女が一瞬の躊躇もなく殴られた。
その容赦のなさに思わず悲鳴をあげそうになる。
「奴隷のくせに歯向かうんじゃない!」
少女を殴った男の言葉に愕然とする。
奴隷? 今、奴隷って言ったの!?
目の前のあり得ない光景と男の台詞に知らず拳が震えた。沸々とした怒りが沸いてくる。
剣をつきつけられた少女は大人しくなって震えている。
どういうことなの? なんで、コンビニに行く途中で、こんなことになってるわけ?
少女の服が脱がされそうになって―――堪らなくなって、飛び出した。
「ちょっと、やめなよ!」
「なんだ、この坊主は」
坊主だとぅ!? 私、女なんですけど! そりゃ女子にしては身長高いし、髪も短いけどさ!
「あんた見る目ないな! なんでもいいけど、こんなの人権侵害も甚だしいでしょ! 警察呼ばれたくなかったら大人しくしろ、この五重あごつるっぱげデブかつヅラの小者臭が!」
ビシリと指まで突きつけた私に、デブのおっさんが眦を吊り上げた。
な、何よ。怖くないわよ!
「何だと!? おい、見張り! 何をしてた! 誰も中に入れないように言ったろう!」
デブのおっさんがムキムキの男達に怒鳴る。
「へぇ、すいやせん。確かに見張ってたんすが……」
「役立たずめ! もういい、とっととこいつを始末しろ!」
デブのおっさんが私を指差す。
始末しろですって!? 物騒な! 話し合いの意志を持ちなさいよ!
そう言い返そうとして、ムキムキの男達が近付いてきたので飛び退く。
「冗談じゃない、この子達に害がなくなったとわかるまでは、絶対に動かないからね!」
背後の少女が私の服の裾を掴んだ。その頼るような行為に思わず泣きそうになる。
突然飛び出してきた私に縋るしかないなんて。この子達、今までどれだけのことされたの? 何がどうなってんのかわからないけど、日本で人身売買があったってことよね。うわ、なんか、絶望しそう。
「うるさいガキだ。おい、早くしろ」
「はい」
男が剣を振りかぶって突っ込んできた。
嘘でしょ!?
少女を他の女の人達がいる方へ押してからそれを避ける。
じ、じいちゃんに剣の稽古つけられててよかったって、今、初めて思った! あの鬼師匠、もといじいちゃん、容赦なかったからね!
二、三度避けてから懐に入って顎を打った。
これでも、中学校・高校と空手部ですから!
男が脳を揺らして地面に倒れ込む。近くに転がった剣を拾い上げてみた。
うむ。重量感が半端じゃない。って、あれっ、本物ってことじゃん! 
それに気付いて今更ながら、自分が非常にやばい状況だと焦りを感じた。
銃刀法違反に人身売買に……何てことしやがってんのよ、こいつら!
昔から頭より手が先に出ると言われていたように、今回も考えずに飛び出してしまったわけだが、―――流石に、今回はヤバくないか!
「逃げて!」
捕まっている女の人達にそう怒鳴って、入り口にいた見張りらしき男の耳元を殴る。
よろめいた男を突き飛ばしてドアを開けると、女の人達は躊躇いながら出ていった。
「こいつ……! 大事な商品を!」
襲いかかってきた奴らの足を払う。
ドアを背にして立ち塞がる。
助けたからには、最後まで責任は持つ。
「男は通さないから覚悟しなさい! ここは今から女性専用通路よ!」
ドンドン出ていく女の人達を見送りながら、それを捕まえようとする男達を蹴散らす。
次々襲いかかってくる男達を殴り飛ばし、蹴り飛ばし、それでも立ち上がってくる男達の執念。怖すぎるわ!
うぅ、もともと団体戦はやったことない上に、女の力じゃ限界があるってのよ!
ほとんど出ていったのを確認した後、さっきの少女が最後に出ていくのと同時に、ドアの向こうへ飛び出す。
「追え!」
ドアから男達が追ってくる足音が聞こえる。
一緒に走っている少女を見ると、見ていて気の毒になるくらい蒼褪めていた。
「大丈夫だよ」
私の言葉に少女がビクリと肩を震わせてこちらを見上げる。
「なんとかする。必ず、最後まで助けるから!」
私の言葉に頷こうとした少女が、小さな悲鳴をあげて視界から消えた。
「えっ!?」
倒れこんだ彼女の足が―――地面から突き出た、土でできた手に掴まれていた。
え!?
続けざまに彼女の手足が土から生まれた手らしきものに拘束される。
普通ならあり得ない光景を見たことで、一瞬の隙が生まれた。
「逃げて!」
少女の悲鳴に顔をあげると―――巨大な炎の塊が、飛んできていた。
何よこれ。あり得ないでしょ!?
咄嗟に顔を腕で覆い、迫り来る危険を身を固くして覚悟する。
しかし、痛みはいつまで経っても来なかった。


腕の隙間から見えていた炎の塊は、私の目の前で、私を覆ったドーム上の何かに阻まれるように消え去ったのである。



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