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りもーとこんとろーる

朝。


何時もより早めにベッドから起き上がる。


時刻は午前6時、まだ外は薄暗く時折鳥類の鳴く声が聞こえる。


兄「んじゃ、取り掛かるか」


軽く腕を伸ばし、キッチンへと向かう。


今日の朝食はホットケーキだ。


妹のご機嫌直しといったところだが、作るのが簡単なのが主な理由だ。


階段を下りてリビングの扉を開ける、泣きつかれたのか妹の部屋は不気味に静かだ。


若干陽の差し込む朝のリビングは神秘的なものだ、ちょっとした優越感に似たものがある。


が、リビングのソファに項垂れる先客がそこにいた。


妹「なんだ、もう起きたのか」


妹は目の下を黒くし、ソファから力無く私に語りかけた。


寝てないのだろうか、恐らく真夜中に抜け出してリビングで一晩中何かしていたのだろう。


兄「まぁあれだ、昨日は悪かったな…ホットケーキ作ってやるから待ってろ」


妹「まて兄よ、ここは妹が一人きりのリビングでナニしていたか聞くのがスジだろう」


どうせロクなことじゃない、教室のドアに黒板消しくらいにロクなことじゃない。


きっと昨晩の『世界征服』について一晩中考えてたとか、作戦や予定とかを立てていたとか、きっとそんなんだろう。


人一人が一夜で考えたプランで征服できたら何処かの野心家がとっくにやってる。


妹「でだ、私はここで世界征服について考えていた訳だが。」


だろうな、と蔑んだ目で妹を見る。


妹「今まで誰も成し遂げられなかった世界征服を私がry」


瞳を輝かせて熱弁しだす妹に呆れながら適当に相槌を入れる。


妹「…であるからして、やっぱり今の時代はネットワークをry」


さっぱりわからないが、要約すると想像通り理想論を並べたムリゲーということだ。


妹「…というわけだ、どうだ凄いだろう!」


兄「ああー、訳がわからないがすごいんだな」


よくわからないことがよくわかった。

やっぱりコイツは馬鹿だ、今すぐ病院をココに建てよう。


妹「というわけで、昨日の夜中に早速取り掛かった訳で。」


妹「勢いで作り上げた試作品がコレだ。」


彼女が指差す先には見慣れた薄型TV、見た感じは別に昨日となんら変わりない。


だが『手を加えた』と言われると途端にTVが嫌なオーラを纏った気がする。


兄「まさかとは思うが壊したりはしてないだろうな?」


妹「そこは大丈夫だ、まぁ試しに電源を入れてみてくれ。」


妹がリモコンを指差す。


一体何が起こるというのだろうか、変形してロボにでもなるのか。

はたまたSF的な兵器とかが出てくるのか。


電源を入れた瞬間爆発オチ…は流石に笑えない。


震える手で恐る恐るリモコンの電源ボタンを押す。


一瞬の白面の後にニュース番組が映る、カピバラの話題で盛り上がっているようだ。


兄「…普通じゃん」


妹を見ると腕を前に出してチッチッチと指を振っている、今なら頭を引っ叩いても誤射で許されるんじゃないだろうか。


妹「よし、チャンネルを変えてみろ」


チャンネルを変える、よく判らないがとりあえずボタンを押して8チャンネル辺りに変える。


しかし特に何事も無くチャンネルは変更された、だが表示は6chと表示されていた。

押し間違えたか?ともう一度押すが、変わらず6chのままだ。


今度は6chに変える、すると映し出されたのは先程の1chで流れていたニュース番組だ。


兄「どうなってんだコレ…」


操作がメチャクチャになっているのか?

戸惑う私は妹を見た。


妹はドヤ顔でこちらを見ている、殴りたい。


妹「どうだ、見たいチャンネルに変えられない気分は」


兄「何がしたいんだお前は」


チャンネルを思い通りに変えられないが、それがどうしたんだ。

なんだ私への嫌がらせか、仕返しなのか。


そもそもコレ、元に戻るのだろうか?


妹「兄よ今は試作段階だが、いずれ全世界の人類が恐怖することになるのだ」


妹「特殊な装置で電波信号が書き換えられ思い通りにチャンネルがまわせない…これを全世界規模で同時に発生させる」


妹「そうすれば世界中の人間は見たいチャンネルが見れなくなり恐怖のどん底へと叩き落されるのだ!」


兄「 今 す ぐ 元 に 戻 せ 」


世界はともかく、我が家のTVでやられたら今後見たいモノが見られないというわけだ。


厄介この上ない、そもそも征服そっちのけの世界規模での嫌がらせじゃないか。

どうしてこうなるまで妹を放置していたのだろう、もう病院行っても手遅れかもしれない、いや手遅れだ。


妹「ちなみに元には戻せない、このTV自体が電波の発信源に改造済みだからな」


そう言い終えた妹の延髄へ一直線に手刀を打つ、『ふごぉ』と妹が悲鳴をあげソファに倒れ込むが知ったことか。


棚から朝食としてロールパンを取り出し机に置く。


ホットケーキは後日個人的に作って食べよう、そうしよう。


おのれ兄よ…と後ろから妹が恨めしそうに色々呟いているが気にせずリビングから立ち去る。


兄( 親が帰ってきたときの言い訳、考えないとな )


やたら精神的に疲れた体を引きずり自室へ戻る。


懲りている様子の無い妹を思い出し、溜息をつく。



どうやら彼女の世界征服はまだ続きそうだ。。。

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