俺を殺すのはもう少し待て
「まあタバコでも吸おうや」
俺は、目の前にいる男3人にたばこの箱を差し出す。
「なんや、いらんのか。それならええわ」
一本、箱から出して、ライターで火をつける。
それから、ふぅーと長く煙をたなびかせる。
「どうせ俺を殺す気やろ。なら、このたばこぐらいは吸わせろや」
俺をにらんでいる男らに、のうのうと言ってのけた。
簡単に言えば、俺はやくざだ。
もう少し詳しく言えば、目の前の男らが属している組の長を殺したことの仇討であろう。
「なんかしゃべれや。黙ってたらつまらんだろ」
男らは、手に手に武器を持っているようだ。
とりあえずは短銃を握って俺を狙っているのが見える。
消音器が付いていないため、捨て身の攻撃なのだろう。
「…そうかい、何もしゃべらないのかい」
つまらないと思いながら、俺はあいかわらずたばこを加え続けている。
もう半分を過ぎた。
「それで、俺がここで死んだとして、そのあとのことは考えているんだろうあん」
俺は煙草の灰を地面に落としながら、ため息ひとつついて、頭を煙草を持っていない手でガシガシとかきむしった。
「ああ、そうかい。なら、好きな時にすればいいさ。俺はここでたばこをくゆらせることにでもするさ」
3人のうちの一人が、俺にやっと銃を見せた。
それから撃鉄を親指で起こし、引き金に人差し指をかける。
「やっとか」
俺はたばこを吸った格好のままで、つぶやいた。
それから数秒後、俺がいた壁際に、脳漿と血液が飛び散って、壁には一つだけ穴が開いた。