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オンナノナゾ



***


それから俺は例の女の看病をしていた。

看病なんて、兄弟が熱を出した時くらいしかしたことなかったから戸惑ったけど・・

なんとかできているみたいだ。

目の前に安らかに眠っている彼女を見ながら思う。


アランはあれ以来眼を閉じたままだし・・寝てんのか?


どうやらアランのおかげなのか、

アランの存在がほかの怨霊を遠ざけているみたいだ。

ありがたい。

彼がいなければ俺達は1分と持たずに奴らの餌食になっていただろう。


アランはそのことを知っていたからずっとあの隅にいるのだろうか・・・


気になるのは、

アランが彼女を見たときの反応だ。


知り合いでは・・なさそうだったな。

彼らは初対面なのか?

それにしてはお互い白々しい感じだったな・・・


俺が考え事をしているうちに、

女は何やら夢にうなされているようだった。


「ぅ・・・ぐぁ・・!!・・・・や・・ろ・・は・・」


俺は少し驚いたが、一応声をかけてみることにした。


「お・・おい?大丈夫か?」


彼女は何かをつぶやいているらしい。

中々聞こえないのでおれは耳を近づけてみた・・・


「や・・めろ・・わた・・しは・・」


「やめろ?わ・・たしは・・?ん?何か静かに・・」


俺はあまりの聞きにくさに、思わず口ずさんでいた・・

すると耳にはっきりと聞こえてきた。


「何をしている?」


少し聞きなれた不器用な言葉が聞こえた。

俺は知っている。

彼女が起きて、少し不機嫌だということを。

そしてその原因が俺だということも・・

俺は急いで彼女から離れた。


「お・・おお。起きたのか。どうだ具合は」


顔が近かったという恥ずかしさから、起きていたことに少し動揺してしまった。

相変わらず死んだ瞳の彼女。起き上がり、俺を見つめるその姿はなんともいえなかった。


「私は寝言を・・お前・・・何か聞いたか」


その瞳・・生気が無くとも何かしらの妖しさを放つ彼女の瞳に気をとられていて返事が遅れてしまったことは事実だ。


「あぁ。ごめん。俺は何も聞いてないよ」


そう言うと彼女は俺から眼を離した。


「あ・・あのさ。あの・・ありがとな。

 あんたがいなかったら俺は確実に死んでた。ありがとう。」


少々照れくさかったが、今俺がここに居るのはこいつのおかげなんだ。

礼を言うのは当然だろう。


「あとさ、あんた名前なんていうんだ?

 ずっと”あんた”って呼ぶのもなんかあれだし・・」


すると女は少しうつむいた・・


今彼女は何を思っているのだろう。

月明かりに照らされているせいか、その表情は悲しそうに見えた。

そしてその小さい唇が開いた・・


「私の名は・・・名は・・」


そういうと彼女は黙ってしまった。


名が・・・ないのか?

記憶喪失・・なのだろうか。


「もしかして・・名前がないのか?」


彼女は少しだけこっちを見た。視線はあわせなかったが・・


「・・あぁ。私には名前がない。

 その理由は・・・言えない。」


名前がないのか。

理由が聞けないのは残念だが、そこは聞かないほうがいいのだろう・・

なら・・・


「じゃあ、あんたの名は俺が決めてやるよ」


少し間があいて、


「・・好きにしてくれ。」


好きにしてくれ・・か。

じゃあ・・


「あんたの名前は”ヨウ”だ。

 それでいいか?」


「ヨウ・・・分かった

 体力がまだ回復していない・・わたしはもう少し休む・・」


そういって、ヨウはまた横になった。

大朔は彼女の横顔を見ながらそっと毛布をかけてあげた。

その行動をアランは静かに見ていた。

そしてこの部屋の回りでうごめく奴らを背中にひしひしと感じながら、

その紅く輝く瞳をとじた・・



アランとヨウ・・

何か引っかかることがたくさんある・・

この時の俺にはそれがまだ何なのか・・

この館が存在する意味さえ・・知る由もなかった・・



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